アットウィキロゴ
「よいしょ…っと」
なるべく見ないように薄目のまま、ゆっくり優しく体を倒す。サラサラ流れる髪が枕元のライトに照らされてすごく綺麗…だ…。
「……なにしとるん」
しまった…!起こした!!
「いや、あの…ね、寝苦しそうだったから…着替えを…」
しどろもどろで答えるあたしを尻目に、ゆかちゃんが自分の体に目を向けた。そこにはスク水を身に着けた体と、あたしがこっそり胸元に縫い付けたワッペンに書かれた『かしの』の文字が踊っている。
ギロリと完全に据わった目で睨まれた。まるで蛇に睨まれた蛙の気分。
「ひっ…!」
「…スク水のどこが寝苦しくないん?」
「い、いいいや…あの…それはっ…」
身の危険を感じてとっさに部屋の角に逃げた。寝室にはあたしの身を守るものは何もない。
「…っ、ごめんなさいごめんなさいぃ!!」
ぎゅっと目を閉じて衝撃に備えた。

………?
…あれ?どこも痛くならない。てっきりいつもの鉄槌がくると思って身構えてたのに。


不思議に思って目を開けると、ベッドに潜るゆかちゃんの姿が薄く光るライトに照らされて見えた。
「あの…ゆかちゃん…?」
「…なに?ゆか眠いんよ…」
「スク水、着たまんまですけど…」
恐る恐る問い掛けると、ゆかちゃんは目を眠そうに擦りながらスク水に手をかけた。

…まさか!み、自ら生着替えを!!?
「ちょ…っ!?」
バタバタと近寄ってスク水を脱ごうとする手を止めた。
「もー…なんなん、いったい…」
「のっちの理性が持たなくなるけぇ生着替えは止めて…」
「…だったら向こう向くなりなんなりしんさいや」
「…そうですね」
そういやそうだ。あたしが寝室を出てればいいんだ。
ちょっと名残惜しく思ったけど真夜中に流血は避けたい。寝室を出て頭を冷やす為に近所の自販機まで出掛けた。


数分後。
「…ゆかちゃーん…寝ちゃった?」
こっそり寝室に入る。
ゆかちゃんはすうすう寝息を立てて、すっかり寝入ってるようだ。


ベッドの下にはさっきまで着ていたスク水が。
…このスク水は洗わないぞ、絶対。
スク水をそっとタンスにしまって、そろそろとベッドに潜り込もうと布団をめくった瞬間。
「!!」
な…何?夢でも見てるの!?のっちは!
「…マジ?」
もう一度布団をめくってみた。…夢じゃない。
「……」
どう考えてもゆかちゃんの着てるこれはあたしのワイシャツだ。しかも夢の裸ワイ。ボタンは留めていない。

「な…、なんという生殺し…っ!!」
いくらあたしが変態でも、すやすや眠るゆかちゃんの邪魔をしてまで手は出さないし出せない。
悩みに悩んだ結果、すごすごとリビングに退散。ソファに横になる事にした。


翌朝。
「…のっち、その充血しきった目はなんとかならんの?気持ちわりゅい」
「なんともならんけぇのっちも困っとるんよ…。このままじゃ仕事に差し支える…」
「自業自得じゃわ」
「そうですね…」
ギンギンに目を充血させたまま朝食を摂るのっちなのでした。


#05END





最終更新:2008年10月17日 15:26