「着いたー!」
「いえーい!温泉!温泉!」
秋です。今日は夫婦で温泉旅行に来ました。
雰囲気の良い宿に美容に良いと評判の温泉。いやぁ素晴らしい!来て良かった。
荷物をまとめながらゆかちゃんがウキウキした様子で言った。
「ゆか温泉浸かってくる」
「じゃあのっちも…」
「…」
いそいそとお風呂の準備に掛かろうとするあたしに冷ややかな目が刺さる。
「な、なに?なんでそんな冷たい眼差し…」
「…ゆかは部屋風呂に一人で入るけぇ、のっちは大浴場に行きんさいや」
「な…なんですとー!?せっかく夫婦で来たのに!」
「ゆっくりお風呂に入りたいんよね、ゆか」
「だ、だから二人でゆっくり入ればいいじゃん!ね!」
なんとかゆかちゃんを説得しようとするも相変わらず冷めた目をしていらっしゃる。うーむ、ここは引いておこう…。
「分かった。のっち一人で行ってくる…」
「いってらっしゃーい」
「…いってきます」
…あたし嫌われてんのかな、マジで。
「…ふっふっふ」
なんて、そうは問屋が卸さないよゆかちゃん。
せっかく夫婦で来てるのに、一人寂しく大浴場になんか入ってられるか!…いや、ちょっとそれはそれであたし的にはムフフなんだけどね〜…って違う!
そろそろと足音を立てないように浴室に近付く。
パチャパチャとお湯の撥ねる音が聞こえてきて、思わずごくりと喉が鳴った。ノゾキはいけない事だけど相手はあたしの奥さんだからいいよね。
そーっとドアに近付いて、少しだけ開けたその時目に飛び込んできたのは。
「あっちー!!」
大量のお湯でした。
「覗くかもしれんと思っとったけどやっぱり来たか、この変態」
「……」
「…?なに固まっとるんよ」
「…いい!バスタオル姿もいいよ!ゆかちゃ、いって!」
うぐぉ…スネに石鹸がぁぁあぁ…。
うずくまるあたしの目の前にしゃがみ込むゆかちゃん。…ああ、惜しい。見えそうで見えない…。
「のっち」
「は、はいっ!」
「出てけノゾキ魔」
バタン!
「……ま、負けるもんかぁあぁ!!」
部屋に放り出されましたとさ。
#06END
最終更新:2008年10月17日 15:34