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◇N-side◇
「ねぇ、ライブの前、何が欲しいって言ったの?」
「んー内緒」
「教えてよー」
ライブが終わって、まだ興奮がおさまらないまま、肌寒い夜道を手を繋いで歩いた。
ゆかちゃんがさっきからずっと同じ質問をしてくるけど、のっちははぐらかす。恥ずかしくて言えないよ。お揃いの物が欲しいだなんて。
それにお揃いの物なんか持ってたら、あ〜ちゃん絶対に怪しがるだろうし絶対言えない。
「教えてくれたって良いじゃん、ケチ」
「のっちはケチだよー」
体がフワフワする。ライブで盛り上がり過ぎたせいかな、まだ心臓がドキドキしてるんだ。
「ねー喉渇いた」
通りかかった公園、ゆかちゃんが自販機を指差してのっちの手を引いた。
そういえばのっちも喉がカラカラだ。
「何が良い?」
「ホットココア」
「のっち買ってくるけぇ、ゆかちゃんベンチ座って待っててよ」
こうやって彼氏面してみる。のっち優しいなー格好良いなーって自分に軽く酔う。
「分かった、待ってる」
離れたゆかちゃんの手のぬくもりを失い、冷たい風が手に触れた。
早く早く。
君の両手にホットココアを。




「お待たせ!」
はい、と差し出す。ゆかちゃんは笑顔でそれを受け取った。
「ありがとう」
「いえいえ」
ゆかちゃんの隣に座る。
小銭があんまり無くて、買ったのは一本だけ。
ゆかちゃんは栓を空けて。ゆっくりと喉に流し込む。なんか動く喉って…エロいよね。
「…あったかい」
ゆかちゃんがはにかむ。良かった、のっちの心もじんわりあったかくなるよ。
「はい、」
「ありがと」
ゆかちゃんが手渡してくれたホットココア、のっちもゆっくり飲んだ。甘くてあったかい、凄く美味しい。
「間接キスだね」
ゆかちゃんが小さく呟く。ドキッとした。ゆかちゃんの声が妙に艶めいてるとゆーか、色っぽいとゆーか。
「…直接キス…した事あるじゃん…」
何言ってんだろのっち。だけどまるで、ゆかちゃんがキスした事すら忘れたみたいに言うからさ。間接キスくらいで今さら…ね?
「そっか、そうだったね」
ゆかちゃん…どうしちゃったのさ。昨日の電話の事…今日は絶対に触れないでおこうって努力した。
だけど、やっぱり気になるよ。
「ゆかちゃん…」
のっちは、ゆかちゃんの唇を奪った。甘いホットココアの香りが広がる。甘いよ。


ねぇ、ゆかちゃんは忘れちゃったの?何度もキスしたじゃんか。気持ち良いキス、何度もさぁ。
「ん…、」
カラン、缶が地面に落ちた。勿体ない、まだちょっと残ってたのに。
「は…ぁ」
ゆっくり唇を離す。
二人を照らすのは月明りと小さな街灯だけ。
静かに響く虫の声が、なんだか安心した。
「…のっち」
「えっ、」
ゆかちゃんが、抱き付いてきた。首にしがみついて、のっちの胸に顔を埋める。
突然の事に驚くのっち。こーゆーの慣れてないから、どうすれば良いか分かんない。
ただそっと抱き締め返して、綺麗な髪に指を沈めた。
ゆかちゃん…本当に、どうしちゃったの…?
てゆーかさぁ、ゆかちゃん良い匂いするから段々とのっちも、その…アレになってくる訳であって。
「のっちの心臓…ドキドキ言ってる」
「うん…」
「どうして…?」
「多分…ライブのせい」
もちろん、そんな簡単な嘘で誤魔化す事なんて無駄だって分かってる。
「そっか、ライブのせいか…」
なんで?いつものゆかちゃんなら嘘つきって言って笑うくせに。
違う、ライブのせいなんかじゃない。
「ゆかちゃんのせいだよ」
気が付くと、ゆかちゃんを襲ってた。


◇40:End◇






最終更新:2008年10月17日 15:51