◇K-side◇
最近ののっちは、本当に手加減を知らない。
「や…あっ…!」
「わ、凄い…今めっちゃ潮噴いたよ」
お願いだからかんべんして欲しい。嬉しそうに微笑むのっちに、怒りを感じる。
あーなんでエッチし放題とか言っちゃったんだろ…。ゆか最近どうかしてる、のっちに甘過ぎる。
「…、もうやだぁ」
ゆかはのっちの腕からすり抜け、ベッドの隅で小さくなった。これで潮噴いたのは本日二回目、ベッドシーツが所々濡れていて気持ち悪い…。
「し放題って言ったのゆかちゃんじゃーん」
のっちが甘えた声で抱き付いてくる。もーなんなん一体、自分なんなんよ。
「気持ち良かった?」
「…、」
ゆかは黙ったまま小さく頷いた。そりゃ潮噴くくらいだもん、気持ち良かったよ。
「可愛いーゆかちゃん」
「…うるさいなーもう」
「ゆかちゃんは、のっちのものだよ」
ゆかはものじゃないよ、と言いかけて辞めた。
どれだけ抵抗してみた所で、のっちの言いなりになってしまう自分は、のっちのものなのかもしれない。
「シーツ、洗濯しなきゃね」
「う…バカっ」
のっちの笑う息が、頬をかすめた。
◇A-side◇
「…!!」
ちゃあぽんが見ている物に、身に覚えがあって青褪めた。あ〜ちゃんは慌ててそれをもぎ取る。
「お姉ちゃん、日記なんか付けてたんだ」
「…中、見たじゃろ」
「ちょっとだけね」
「ちょっとってどんくらいよ!」
絶対に見られたくなくて引き出しの奥に隠しておいたのに、この妹…お姉ちゃんの部屋を物色する癖はまだ治りそうにない。
「5月26日、のっちが家に泊まりに来た。家に家族がいるのに、のっちは大胆にも迫ってきて困った。声が出そうになると、のっちが手で口を塞いできて、なんかいつもよりドキドキし…」
「ぎゃーっ!いやーっ!」
完璧に読まれとるやないかーい!あ〜ちゃん今すぐ死ねる気がする。恥ずかし過ぎる。
「忘れて!今すぐ忘れんさい!」
「えーそんな事言われても」
「お願いだからー!」
その日記、その日あった事を赤裸々に書いてるから絶対誰にも見せたくなかったのに。
「5月13日、今日ののっちはいつもより激しかっ…」
「やめてーっ!!」
聞きたくない聞きたくない。お願いだから見なかった事にして下さいちゃあぽん。
その夜、あ〜ちゃんは初めて、妹に土下座した。
◇N-side◇
一晩経って、朝を迎え、時間は経ち、今は昼。
「うおあああっ!手がぁぁあああっ!!」
なんと、恐れていた痙攣が。手がピクピクして言う事を聞かない。
「はぁ、はぁ…っ、良かった…、死ぬかと思った…」
ゆかちゃんがゲッソリしながら呟く。何そのホッとした様な表情は。
「あ、あぁ…これじゃ出来ない…っ」
せっかくし放題の許可が降りたのに…これじゃ…クスン。まぁ限界までやった証拠だよね、これぞ勲章。
「ふー助かった」
ゆかちゃんがベッドから立ち上がろうとした瞬間、カクン、と膝が折れた。
「…ゆかちゃん?」
「…歩けん…」
床にへたれ込んでコッチを振り返るゆかちゃん。
「力が入らん…」
そっか、なんて言うんだっけ腰砕け?いや違うなーなんだっけ。
「…ふふっ」
「笑わんでよっ」
堪え切れなくて噴き出した。ゆかちゃんが真っ赤な顔して落ちてたクッションを投げ付けてきた。
「可愛いよゆかちゃん」
「うるさいっ」
「のっち、ゆかちゃんと付き合えて幸せだよ」
そう言うと、ゆかちゃんは顔を逸した。
「愛してる」
「…」
「愛してるよ、ゆかちゃん」
君は、泣き出した。
細い体を震わせて、泣き出したんだ。
◇
—それから月日は流れた。
すっかり季節は夏、明日から始まる夏休みを前に、体育館で集会が行われた。
校長先生の長い話にもそろそろ飽きてきて、のっちは窓の外を見上げた。
三ヶ月前、桜が綺麗だった季節を思い出す。
今まで生きて来た中で、こんなにたくさんの事を詰め込んだ三ヶ月なんて無かった。
二人と付き合って恋愛して、たくさんの喜びと幸せを知って、たくさんの悲しみと辛さを知った。
「……、」
いつか二人にバレる日が来る。
だけど今は…どうしても、愛していたいんだ。
二人が教えてくれた幸せを感じていたい、願わくば、ずっとずっと。
だけど永遠なんて、この最悪な恋愛に存在する訳も無く、終わりがくるのをただ待つだけ。
そうか、分かった気がする。
二人を失う為の幸せな今なんだ。
青い空はどこまでも青い、白い雲はどこまでも白い。広い空の下、自分のちっぽけさを思い知る。
これだけ悩んで苦しんだ所で、世界は何も変わらないし救われない。
せめて裏切ってしまった二人に何かしてあげたくて。幸せを教えてくれた二人に、何かお返ししたくて。
そう祈れば…ただ、静けさが増した。
◇第一章:End◇
最終更新:2008年10月17日 16:50