私が初めて好きになった人は、妹でした。
「おはよー…」
「おはよ。…あんた寝癖ひど過ぎ」
「そう言うお姉ちゃんも寝癖ついとるよ」
「えっ嘘!さっき直したのに」
「うん、嘘」
「…あんたねぇ〜」
朝っぱらからキャイキャイ言い合ってお母さんに怒られる。弟はそれを呆れた顔して見て、お父さんは賑やかだなぁと微笑んでいる。
この光景が、ずっとここにあるんだと思ってた。ずっと変わらずいられるんだと、そう思ってたんだ。
この時までは。
「お姉ちゃん」
コンコンとドアをノックする音とちゃあぽんの声。
「はーい。なに?」
「…入ってもいい?」
「どーぞ」
なんだか声がいつもと違う気がする。多分他の人には気付かれないような、そんな些細な事だけど私にはそう思えた。
「どうしたん?」
「ちょっと…話があるんよ」
「話?」
ちゃあぽんは頷いて、私のベッドに腰かけた。
真っ直ぐな瞳をして、まるで何かを決意したような表情で。
「あたし…お姉ちゃんが好きなんだ」
「え…」
一瞬、何を言われたのか分からなかった。
ちゃあぽんの手が、あたしの腕を掴むのだってまるでスローモーションで見ているかのように夢みたいで。現実味が無くって。
でも、妹の手は熱を帯びたように熱くて。それが私を現実へと返していく。
「好きだよ…」
「ちゃあぽ、」
「好き、好き。大好き」
腕が引っ張られて、ぎゅっと腕の中に閉じ込められる。痛いくらいに。
「…お姉ちゃんが好き」
「ちゃあぽん…」
ずっと変わらずいられると思ってた。
私がこの気持ちを伝えるのを我慢すれば、ずっと姉妹のままでいれるんだって思ってた。
でも、ちゃあぽんの言葉が。手が。腕が。それを壊していく。
決して受け入れてはならないんだと頭では思っていても、私の体が妹を拒否する事を躊躇っている。
何も出来ない私は、降り出した雨の音をどこか遠くに聞いていた。
最終更新:2008年10月17日 16:57