「怒らないとでも思っとるん?」
そう言う口角は上がっているようにも見える。そのくせ、私を冷たく映す目はさっきから動かない。
やってしまった。完全に。「なぁ?ゆかちゃん?」
痛い位に両手を拘束されているけど、その瞳に捕らえられてる私はそんなのが無くてもきっと逃げられない。
「楽しそうに笑ってたね。私、どんな気持ちだったかわかる?」
胸がこんなにも痛いせいで涙を堪えることを忘れそうになる。
限界地点。私が知らず知らずの内にのっちの限界を踏み越えてしまったように、のっちもじりじりと私のそれに迫ってくる。
「そんなに他の人がいいなら変わってもらおうか?」
言葉と後悔が錯乱する。
混乱が感情を超える瞬間、ついに涙が溢れてくる。
その時目の色が揺れたのが分かった。
綺麗な、少年みたいな。どこまでも純粋な目で私を見つめている。
私は声を忘れてた事に気が付く。今しかない。
「ね・・・のっ、ち」
まだ上手く呼吸ができない。
「・・・ん」
「ごめん、ね」
「・・・」
「ねぇ・・・」
「・・・許さない」
そう悪戯っ子の様に、吹き出したように笑って私よりも大きな身体を小さくして私の胸に埋めてきた。
私は与えられた大きすぎる安堵感に酔う様に、胸の中の愛しい匂いを確かめる。
「こんなこと言わせんでよ・・・」上げた顔からはもうさっきの面影はなくて、残っているのは拗ねの感情を帯びた少年の目。
「泣かせたん、のっちが悪いんじゃないからね」
また擦り寄ってくるように抱き着いてくる。
「ゆかちゃんはのっちのなんだよ」
別人じゃん・・・と突っ込みたくなるような舌ったらずの甘え声で訴えてくる。
甘えたなこどもか、なんでも与えてしまうおとなか、どっちが悪いんだろうか。
そんな事はどうだっていい。私は可愛いこどもに頭が上がらないんだから。
きっとこれを1番に望んでいる、そう確信して私は言う。
「すきだよ、のっち」
満面の笑みを浮かべた満足気な顔が近づいてきた。
=END=
最終更新:2008年10月10日 02:53