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  • Side N-


A『いや〜、さっぱりしたぁ…ってあ〜ちゃんのおらん間に何しとるん??』
私とゆかちゃんの不毛なやり取りの間にあ〜ちゃんがお風呂から上がって来てしまった。
もちろん、私の上に跨がって座るゆかちゃんは慌てて私から離れるも時既に遅しで……。
N『残念ながら何も出来ませんでした…。』
K『のっちっ、いらん事言わんのっ!』
A『頼むけぇ、裸の二人を見せんでよ。あ〜ちゃん見ても喜ばんけぇ。』
K『あ〜ちゃんっ?!』

たまにはオロオロするゆかちゃんも悪くない。

いつも私達2人の悪ふざけを端から見ては微笑んでるゆかちゃん。
間に挟まれて被害に合うなんて滅多にない事。

たまにはこんな空気もいいよね。


  • Side A-


お風呂から上がると二人がすごい体勢でいた。
いやいや、人がおらん隙狙ってどうなん?それ。
盛りすぎじゃろまったく…。

N『んじゃのっちお風呂入って来る。』
A『ゆかちゃんの面倒は任せときんさい。』
K『何の面倒よ。』
N『手出したらあ〜ちゃんでも許さんよ!?』
K『のっち!!』
A『はいはい。いいからはよぉ行きんさいや。』
手をヒラヒラさせシッシッと追いやる。
N『ちょっとぉ、ここのっちん家なんですけど。もうまったく…。』
ぶつぶつ言いながらのっちは暗闇に消えて行った。
ま、冗談はさておきのっちのいない隙に私もやる事やっとかんとね。

A『んでどうなん?』
K『何がよ?』
いつものゆかちゃんらしい驚き方を形にした切り返し。
A『何って何がよ。』
K『ごめん、意味わからんよ。』
まぁ、分かるように喋ってないしね。
A『まぁ、だからのっちと何かあった?って事よ。』
K『……何もないよ。』
一瞬彼女の瞳が曇って見えた。
A『ふーん、そっか。』
それ以上追求出来ずに会話は終わる。

何この空気。

前からこんなだっけ?
いつからか歪み始めた3人の関係。

いつから?
あたしがのっちに優しくするようになってから?
そもそもあたしは今も昔も変わらず接してるつもり。
それはもちろんゆかちゃんに対してもね。

じゃあ、変わったのは誰?


K『あ〜ちゃんさぁ。』
A『ん?』
K『最近のっちに甘くない?』
A『そうかなぁ…。意識的に甘くしとるつもりはないんじゃけど。』
K『なんか柔らかくなった気がするよ。』

なんとなくゆかちゃんから感じる違和感の正体が分かった気がする。

もしかしたらそういう感じなのかな?

A『あ〜ちゃんも大人になったって事じゃね。』
そんな彼女の気持ちに気付かないふりをしてわざと冗談ではぐらかす。

K『ふふっ。うちらちゃんと大人になれとんかねぇ。』
A『もうすぐ20代じゃもんねぇ。のっちなんかあのままじゃいけんじゃろ。』
K『う〜ん、ちょっとねぇ……。』
ふふふっと悪戯っ子のように笑い合う私達。
2人で微笑みあうその空気感は以前と同じで少し安心する。


まだ大人には成りたくない。
それぞれの人生も大切だけれど、まだ3人合わせて1人前でいい。
もう少しだけこの心地良い場所に居させて下さい。
このまま3人で少しでも長く……。

K『今頃、くしゃみでもしとりゃせんかね?』
くしゃりと可愛く笑うゆかちゃんの顔を少しでも多くみたくてあたしはまた冗談を言う。
A『んじゃもっと噂しとく?』

神様、3人で居られるこの時をどうかまだ終わらせないで下さい。



  • Side N-


へっっっくしょん!!!

湯舟に浸かった私はくしゃみをした。
おかしいなぁ〜、風邪ひいちゃったかなぁ…。

それよりさっきのあ〜ちゃんの発言が気になる、気になる…。

よし早く上がって2人と遊ぶぞっ!

カラスの行水ってまさにこの事だよね。
猛スピードで体を洗い、ガシガシと音が鳴ってんじゃないかって勢いで頭を洗い…。

よし!もう出るっ。
ドタバタリビングに戻ると楽しげに笑う2人の姿が目に入った。
そんな2人が凄くキレイで、まるで何かのワンシーンみたいに見えて。
ただ、微笑み合ってるだけの2人。
でも絶対的な空気がそこにあって、他の誰も入れないみたいな…。
一瞬自分の存在の薄さを感じてしまう。
いや、実際には3人でいる事に意味があって3人はいつも一緒なんだけど、たまに疎外感を感じてしまう。
それは私が勝手に感じてるだけのもの。もちろん実際に疎外されてる訳なんてない。
だけどこうして一歩外から2人をみると私がいなくても成り立つ世界があるのも事実で。それを見せつけられるとやっぱり寂しい。

K『あ、のっち。おかえり〜。』
A『はやっ!?あんたちゃんと体洗ったん?』

寂しかったのは一瞬。
2人で成り立ってた輪は私を含めより大きくて特別なものへと形を変える。
N『洗ったもんっ。』
あの特別な場所に加われる嬉しさにテンションがあがり、何故か得意げになる私。
A『あぁ〜、髪から雫が落ちとるじゃん。』
そう言いながら手招きしてるあ〜ちゃん。
K『どんだけ急いだんよ?』
もう仕方のない子じゃねぇ、と微笑むゆかちゃん。
あ〜ちゃんに手招きされるままその場所に座るとタオルで頭をガシガシされた。
N『ちょっと、もっと優しくしてよ〜。』
A『贅沢いいんさんな。犬にはこれくらいでちょうどええんよ。』
N『犬ってっ!?』


大好きな人達に愛されてる幸せ。
私が私で本当によかった。


  • Side K-


最近のあたしは少しおかしい。

今目の前で大好きな人達がじゃれあってる。
以前ならそれを見てるのが大好きだった。
悪ガキ2人を見守るのが楽しかった。

でも今は少し胸がよじれてしまう。苦しくて目を反らした。

疎外感はずっと感じてた。
頭では3人で1つだからって分かってたけど、でも心は「あたしなんかいなくても……」って悲鳴をあげてた。
でもその度に2人が優しくあたしを迎え入れてくれる、あたしの居場所は<此処>だよ、と。
N『ちょっとゆかちゃんも何か言ってよぉ〜。』
のっちの呼ぶ声に我にかえる。
K『えっ?!あぁ……。大人しく犬扱いされときんさいよ。』
上手く笑えてるかな?あたし……。
N『えぇ〜。犬じゃないよのっちはっ。』
A『………。』
あ〜ちゃんは何も言わず依然タオルでのっちの頭をガシガシやってる。
ふと、あ〜ちゃんがこっちを見た。
目があっても私は笑顔を崩さないよう神経を尖らせた。

あ〜ちゃんの側にずっと昔から居たのはあたし。そこはあたしの居場所でもあった。それがのっちの出現で居場所を奪われた。
そんなのっちを愛してしまい、今はあ〜ちゃんにすら嫉妬してしまう。

2人とも別々の意味で大切で掛け替えのない人達。
なのに、そのどちらにも嫉妬と疎外を感じてしまう醜いあたし。

3人のバランスを壊したのはあたしなのかも知れない…。


A『はいっ!後はゆかちゃんにやってもらいんさい。あ〜ちゃん疲れた。』
そう言ってのっちをトンと押す。
のっちは頭からタオルを被ったままこちらに転がって来る。
K『えっ!?』
N『うわっ!』

ドンッ!

A『あ、ごめんごめん。』
あたしを押し倒す形でのっちが覆いかぶさる。
K『イタタタッ…。』
N『ご、ごめん、ゆかちゃん大丈夫っ?!』
K『もうっ!ちょっと、のっち!!』
N『なんでのっちが怒られるんよぉ。』
K『うるさいっ、早くどきんさいや。』
突然の出来事についついのっちに八つ当たりしてしまう。
N『うぅ…、のっちも被害者なのにぃ。』
情けない声を出しながら体を起こすのっち。
ごめんね、確かにのっちは悪くない…。
もちろんあ〜ちゃんも。

あたし1人で被害者ぶってホント何やってんだろ。
情けなくて泣けてくるよ…。






最終更新:2008年10月17日 17:24