「かしゆかちゃん、細いねぇ」
こしこ、こと
こしじまとしこさんの細い指が
あたしの身体のラインをなぞる。
「いえ、こしじまさんの方が細いですよ!」
「あ、こしこでいーよ」
「じゃあ…こしこ、さんで。」
さっきまで二の腕辺りを触っていた手は
いつの間にかわき腹まで降りてきていて
自然に、ごく自然に腰に手を回されていた。
「…あ、の。」
「ん?」
「く、くすぐったいんですけど…」
あぁ、今あたし顔、真っ赤だろうなぁ
「ふふ…かしゆかちゃんかーわいい」
「えと、ありがとうございます」
近い近い近い。
こんな綺麗な人が目の前にいると
すっごい緊張する。
ヘタレのっちだったら絶対固まってる
あ~ちゃんは…どうじゃろ?
「…え、」
半開きだったドアから聞こえた
ちょっと低めの聞き慣れた声。
「…のっ…ち」
のっちはコンビニの袋を片手に一時停止状態。
中はきっとゆかの好きないちごアイス。
「な、に…してるん、ですか」
いつもの八の字眉毛じゃなくて
ちょっとつり上がった目と眉毛。
のっちが珍しく怒っとる。
こしこさんは気にする様子もなく
笑いながら
「かしゆかちゃんのボディーチェック、みたいな感じかな」
のっちは無言で佇んでるまま。
…ヘタレのっちの馬鹿…
あたしをこしこさんから奪い返そうとか
そういうの無いわけ?
だからヘタレって言われるんよ、ヘタレ!
って言ってやりたかったけど
それは出来なかった
こしこさんが付けてる香水の香りと共に
唇に柔らかい感触。
少し遠くでビニール袋が落ちる音。
頭がぼんやりする
のっち、助けて
息が出来ないよ
ぐい、と後ろに引っ張られる身体
後ろには自分よりちょっと背の高い
「…のっち」
のっちの顔は険しくて、普段見たことない表情だったから
怖くて、別人みたいで、そっと服の裾を掴んだ。
「…かっしー、困ってるじゃないですか」
「んん、ほんのちょっとした遊びだよ
ごめんね、驚いた?」
こしこさんは微笑んで、あたしに手を伸ばした
…かと思いきや、のっちの手を引っ張って
耳に口を近付けた。
「…またね、次はちゃんと一緒に居ないと危ないかもよ?」
ひらひらと手を降って、ヒールを鳴らしながら
こしこさんは帰っていった。
「ごめんね、来るの遅くなって」
のっちは申し訳なさそうに、謝ってきた。
さっきのキリッとした眉毛はもう八の字に戻ってる。
「…ヘタレ王子。
王子はいつも姫の側に居るもんじゃろ。」
ほっとしたら、涙が出てきて
でもヘタレ王子には見せたくないから
思いっきり抱き付いてちゅーをしてやった。
あ~ちゃん
今だけは空気読んで入って来ないでね。
もうちょっとだけこの時間を過ごさせて。
最終更新:2008年10月10日 02:58