◇A-side◇
「綾香ちゃんドコ行くん?」
「ちょっとトイレ!」
やっぱり夜が一番楽しい。皆でずっとおしゃべりして、盛り上がって。
急にトイレがしたくて部屋をそっと抜け出した。先生に見つかったら…なんて考えるとドキドキする。
静かな廊下。なんだかちょっと怖い。
肝試しの時ののっちがふと頭に浮かんだ。なんかカッコ良い様で情けなかった。まぁそこが可愛いと思ってしまったんだけど。
「……」
「……」
トイレの横の休憩スペース、誰か人の気配がした。
誰か…居る。
乱れた呼吸と、熱い何かを感じる。
目を細めた先に、見覚えのある長いストレートの黒髪が見えた。ゆかちゃん…?
「は…、のっち…」
え…のっちもいるの?
二人は何してるの
この胸騒ぎは何
「ゆか…ちゃん…」
のっちの声、のっちの吐息。
あ〜ちゃんが間違える訳が無い、大好きな人の気配を。
「好き…だよ…」
「はぁ、のっち…」
「ゆかちゃんが…好き」
ドクン、
どうしよう。
聞かなきゃ良かった。
戸惑うばかりで体が動かない。
今すぐ逃げ出したいのに、視覚と聴覚が異様に働いて、聞きたくない物まで鮮明に聞こえた。
怖い。
何コレ、怖いよのっち。
助けてよ。
あ〜ちゃんを守ってよ。
約束したじゃん、のっち。
広がる闇に、吸い込まれそうだった。
◇N-side◇
自分は最低だと思う。
ずっと前から思ってた。
バレたらどうしよう…それは何度も何度も今まで考えてきた事なのに。
結局答えは出ないまま、ゆかちゃんについにバレてしまった。
「ゆかは…二番手でも平気だよ」
君は二番手なんかじゃない。
「だから…別れたくない」
ごめんなさい
ごめんなさい…
涙を流しながら、何度も君はキスしてくれた。
のっちに涙を流す資格なんて無いのに、止まらなくて。
君と同じ様に、ずっと泣いていた。
ひたすらしょっぱいキスを繰り返し、ひたすら名前を呼び合って。
失いたくない。絶対に。
君もあ〜ちゃんも、失いたくないんです。
◇
「…これからも恋人でいよ」
窓から差し込む朝日が眩しい。
「うん…」
「ゆかは二番手でも平気だからね…」
「二番手じゃないよ」
だから君は、一番なんだってば。
「二人共…一番なんだ」
誰にも分かって貰えないかもしれない。ゆかちゃんには理解出来ないかもしれない。
だけど…
「ゆかちゃんも…あ〜ちゃんも…愛してるんだ…」
ゆかちゃんの腕の中で、また泣いた。
「ごめんなさい…っ
ごめんなさい
…ごめんなさい、」
本当に、ごめんなさい。
こんな最低な人間を許してとは言わないけど。
ただ、分かって欲しかったんだ。
大好きなんだと…分かって欲しかったんだ。
◇2-04:End◇
最終更新:2008年10月17日 18:27