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数年前のこと。

あたしは、あ〜ちゃんのことが大好きだった。
今から思えば、恋に恋してたのかもしれない、
なんて思うけれど、
あの時は、あ〜ちゃんが全てで、その想いは
決して変わることなんてないと思ってた。

何年もの片思いを積み重ねて
その重みに耐え切れなくなったあたしは、
ある日、全てをあ〜ちゃんにぶつけた。



「のっちは、あ〜ちゃんのことが好きじゃ。大好きじゃ」
「えっ、それって・・」
「もちろん、友達としてとかじゃなくって、恋人になりたいって意味で」
「…」
「いきなりゴメン。でも、ずっと、ずっと想っとたけぇ。
 このキモチは本物じゃ」
「…うん、、、なんとなくそんな気はしとったよ・・・」
「えっ?まじで?」
「…」
「・・のっちは、あ〜ちゃんのキモチが知りたい」
「正直、ようわからん・・・」
「わからん?」
「…好きなような気がせんでもないんよ・・でも
—っ!?て、ちょっ、のっち!?」

「好き」て言葉に反応したのか、
あたしは、衝動的にあ〜ちゃんを抱きしめてた。

「今、どんなキモチ?のっちは、もっともっとあ〜ちゃんが欲しい」
「−!どんなって言われても、−んっ!」
強引に唇を奪う。そして、そのまま押し倒し、
あ〜ちゃんに覆いかぶさるような体勢に。
何度もキスを繰り返す。
ただただ、自分の想いを押し付けるかのような強引な行為だった。

「−っ、のっち!やだっ!」
ぐっと肩を押された。見下ろすと、涙目のあ〜ちゃんがいた。
ようやく我にかえる。
慌てて、あ〜ちゃんから離れる。
あ〜ちゃんも身体を起こした。
「ごめん!まじ、ごめん!いきなりすぎるよね!
 てか、最低じゃ、のっち・・・普通は考える時間とかあげるもんだよね。
 うわぁ、もう、なにやってんじゃろ」
「…」
「ごめん、なんかこんなことになっちゃったけど、
 ゆっくりでいいけぇ、のっちのこと考えてくれんかな?」
「…」
「・・・あ〜ちゃん?」
「…うっ、うっ、うぅ・・のっちぃ・・ごめん・・・」
あ〜ちゃんが泣き崩れた。泣きじゃくりながら、続ける。
「ごめん、やっぱあ〜ちゃん、…のっちとは付き合えん…」
「…のっちが、強引なことしたから?」
ふるふるとあ〜ちゃんは首を横に振った。
「違う、そうじゃないけぇ・・」
「じゃぁ、、なんで?」
「のっちの想いが大きすぎて・・あ〜ちゃんには、応えられん・・・」
「そんなこと・・・」
あ〜ちゃんの涙は止まりそうにない。
「それに、あ〜ちゃんは・・・・・・・子どもが好きじゃけぇ。
 家族をもつことが、夢なんじゃわ。・・・それはたぶん、この先も変わらん・・」
「…」
「うぅ・・っ・・・ごめん、のっち・・・ごめんなさい・・・」


あぁ、そうじゃね。
あ〜ちゃんのことずっと見てたのに。ちょっと考えればわかることだ。
そんな簡単なことに頭が回らなかった自分に笑ってしまう。
あ〜ちゃんには、あ〜ちゃんの幸せの形があるんだ。


そっと、あ〜ちゃんに近づく。
一瞬、ビクッとなるあ〜ちゃん。さっきのことが頭をよぎったんだろ。
「もう、なんもせんけぇ」
そう言って、あ〜ちゃんの手をとった。片手で、涙を拭う。
「嫌な想いさせてごめん。それと、、、ちゃんと答えだしてくれてありがとう」
「のっちぃ・・」
「…あ〜ちゃん?今まで通り、のっちはあ〜ちゃんの傍におっていい?」
「もちろんじゃ!」
まだ目に涙を浮かべながらも、それだけははっきり言ってくれた。
それだけで十分だ・・
「よかった・・のっちはねぇ、結局は
 好きな人のそばにおれたら、それだけでえぇんよ」
そう言うと、あ〜ちゃんはまた泣き出してしまった。
「もう泣かんでよ・・もう困らせることはせんけぇ・・」

それから、あ〜ちゃんが泣き止むまで
ずっと手を繋いで、頭を撫でていた。
あ〜ちゃんは何度も「ごめん」と繰り返した。

窓から差し込む夕日が
やけに赤かった。不気味なくらいに・・
うだるような暑い日だった。
けど、この時は、全然そんなの感じなくて
非現実的な空間に放り込まれたような錯覚に陥るほど・・


でも、胸の痛みが
これは、現実なんだと
きちんと教えてくれてたんだ。







最終更新:2008年10月27日 16:08