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SIDE-A

—『コドモ時代の記憶を捨てる』…それが対価だ。—

ヤスタカが帰った後も何度もその言葉が頭の中をぐるぐるとまわる。

コドモ時代の記憶。
あ〜ちゃんはこの国の王家の元に生まれて、将来の女王として育てられた。
お城の中でたった一人あ〜ちゃんと同い年だったのがゆかちゃん。神官様の娘として紹介されたのが出会いだった。
初めて見た時、肌が白くて髪が長くて身体が細くて…こんなにも女のコらしい子がいるんだと思った。
おとなしい子だと思っていたら結構やんちゃで、二人で全身泥まみれになってお城に帰って凄く怒られたこともあったっけ。


ある日、この国一番の武器屋さんが物品を献上しに来た時に見慣れない女のコが一人付いてきていた。
それがのっちで。
大きな目をキョロキョロさせて、あ〜ちゃんが声をかけるとパッと物陰に隠れた。それでも手を取ってあ〜ちゃんが自己紹介すると、のっちもハニカミながら自己紹介してくれた。
のっちとの出会いはその時だった。

それからゆかちゃんとのっちを引き合わせたのはあ〜ちゃん。三人で毎日毎日遊びに出かけた。何をしても全然飽きることはなくて、笑顔が絶えなかった。

でも成長するにつれて毎日会う訳にもいかなくなった。あ〜ちゃんは姫として、ゆかちゃんは神官として色々しなくてはならないことが増えて。のっちも武器屋を継がずに兵士になって、ますます会える日が少なくなった。
それでもゆかちゃんと二人でのっちを呼び出して三人で会っていた。正直なところ職権乱用。
小さい頃よりも会う回数は減ったけど、取り巻く環境がまったく変わってしまった三人にとっては逆にこれぐらいの感じでたぶんちょうどいいって思っていた。


そう。あ〜ちゃんのコドモ時代の記憶にはいつでもゆかちゃんとのっちがいた。
じゃあコドモ時代の記憶が無くなったら…?
ゆかちゃんとのっちとの思い出は…?
考えるだけで胸が苦しい。
そういえばヤスタカが言ってたなぁ。
知らないほうが幸せって。
本当にそうだよ。知らないほうが幸せだった。
涙が溢れてくるのも、あ〜ちゃんがまだコドモだから?


ドアをノックする音が聞こえて、あ〜ちゃんは急いで顔を拭う。
女王様になるんだもん。こんなことで泣いてる場合じゃない。
国を治める者として、オトナになるの。


「姫、時間です。」


まるで何事もなかったように澄ました顔で出れば、誰も気付かないでしょ?
あ〜ちゃんは対価を払うよ。


TO BE CONTINUED...






最終更新:2008年10月27日 16:13