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寝れん…


隣ではのっちがぐぅすか気持ちよさそうに眠ってる
くそぉ…人の気も知らんで!
月の光がカーテンの隙間からさし、のっちを照らしキラキラ揺らす


綺麗だな
本当に、純粋に、そう思う
愛しくて仕方がない

綺麗な髪も、長い手足も、大きな瞳も全部、ゆかのものになればいいのに


のっちがゆかにしたようにほっぺに手を延ばしてみる
全部、全部、ゆかのものに



…けど、触れない
のっちみたいには触れんよ

あぁこれが、違いだ
好きだから…触れない


のっちは、いとも簡単にふれてきた
まるで携帯に手をのばすかのように
のっちは…ゆかに触れるんだ
それが、ゆかのことなんてなんとも思っとらん証拠だ


ああ
こんなに苦しい夜は初めてだよ

痛いほど分かりきってた事なのにこんなに苦しいのは
のっちの熱を知ってしまったから?

さっきまでの胸の高まりが嘘の様に消えて
音が無くなったみたい
激しい焦燥感に襲われる

のっちはすぐ横にいるのに、とても遠い存在なんだね

目の前が滲む
頬を伝うものをぬぐうでもなく
ただじっと…上を向いて、目を閉じた


気がつくと朝になっていて、時計に目をやると10時…
今日は2限からで…2限って何時からやっけ…


あー!!やばい完全に遅刻じゃん!!

隣にいるはずののっちを見ると…やっぱり寝てるよ…
ゆかより先に寝たくせになんで起きれんの!!


「のっち!のっち!やばい寝坊したよ!!はよ起きな!」
「ふぇ〜…んー今何時…」
「もう10時!授業40分からじゃろ!?はよせな!」
「10時…もう無理だよあきらめよ?」

「何を言ってんの!遅刻でもええから行かな!」
「え〜…もういいよー今日はやめにしよ?一緒に自主休講しよっ」
「ダーメじゃ!ほら、はよ起きんさい。3限にも間に合わんようなるよ!」

やだやだーって布団にしがみつくのっちを叩き起こす

…けど、起きないよ!もう!

「ほら、ゆかちゃんももう一眠りっ」
「え…きゃっ」

しばらくの攻防戦のふいをつかれ
腕を掴まれて引き寄せられた
そのままのっちの上に…重なる


「つーかまーえたー♪」
そう言ってギュっと抱きしめられて
目の前にはのっちの白い首筋があって


ドクンッ…と心臓が跳ねた


「ちょっ…はっ離しんさい!」
「やだよ。今日はもうこのまま寝る」

いっそう強く抱きしめられて
のっちの…匂いが、熱が、感触が
ゆかに全部伝わってくる
流れこむ
息を、詰まらせる

体が…熱くなるのがわかって
心臓のリズムが乱れる

のっちが…ゆかの頭ん中をかき乱す
胸を締め付ける
お腹を…熱くする

苦しい、苦しいよのっち


「のっち」
「んー?」
「…離して」

ガバっと勢いよく起き上がるとそのままのっちと目があった

途端にのっちはあのハの字眉になる

のっちの手が、ゆかに伸びてくる


「ゆかちゃん…」
親指でそっと、目の下をなぞられて

また…この感覚…昨日のやつだ

動けん

「目…腫れとるよ…?泣いとったん?」

「っ、泣いとらんよ…」
「嘘だーだって目腫れとるも…」
「泣いてない」

のっちはこれでいて案外するどいところがあるから困る

「怖い夢でも見たん?」


違うよ


「ふふっ…子供じゃあるまいし」
そう言って笑ってごまかしてみたけど
のっちの目は、真っ直ぐにゆかを見て揺らがない

「悩みあるんじゃったら言って、のっちなんでも聞くから」

のっちは優しい
そんなのっちが大好きなんだ
でも時々、その優しさが憎くなっちゃうよ

残酷なほどに…甘い

叶うはずもないのに…ゆかを掴んで離してくれない


ゆかが泣いたのは、のっちのせいなんだよ?
そう言ったらなんて言うかな
目を丸くして驚くかな
そんなのっちも見てみたい

けど、言っちゃダメ
絶対に、ダメ

「…なんもないよ。のっち考えすぎ」
「でも…」
「もーはよ起きよ?」

ゆかをなぞる手にそっと、ふれてみた
あったかい…


ゆかはただ、この温もりが欲しいんよ
のっちの、この…
他はなんにもいらんのに

のっちさへ手に入ればなんもいらんけぇ
のっちを…ゆかにください

何に、誰に願ってるのかも自分でもよう分からん
けど、そう願わずにはいられなかった


ポタっとのっちの頬に何かが落ちた

ゆかの…涙だった

「っ!ゆかちゃ…」
「ゆかは学校行くからっ。支度してくる!」

勢いだけでばっ、とベッドから出て洗面所へ向かう

ああ、なんて顔してんだろ

鏡に映る自分を見てまた、涙が溢れてきた







最終更新:2008年10月27日 16:24