<side n>
「少しは落ち着いてきた?」
「うん、もう大丈夫」
あ〜ちゃんの目はまだ真っ赤だけど
表情はどこかすっきりしてた。
「あぁ、明日朝から仕事なのに、目の腫れがひかんかったら
どうしてくれるん?のっちのせいじゃからね」
「えぇ、のっちのせいなのぉ」
「そうじゃ。あ〜ちゃんを泣かしたのっちが悪い!」
「は〜い、おっしゃるとおりです〜」
−よかった・・・いつものあ〜ちゃんだ。
思わずじっと見つめてしまってたようで、
あ〜ちゃんは戸惑ったように「えっ、なんなん?」て目をした。
いやぁ・・
「ほんと、もう、あ〜ちゃんを泣かすようなことはせんけぇ」
「…のっち・・・」
そう言って、あ〜ちゃんは一瞬言葉を飲み込んだけど、続ける。
「あのね、のっちがあ〜ちゃんの涙を見たくないって思ってくれるように
あ〜ちゃんだって、のっちの涙なんて見たくないんよ?」
思いがけない言葉に、素直に反応できず、
「のっちは、あんまり泣くことないけどねぇ〜」
と、茶化すように答えると、あ〜ちゃんは
「知っとる!のっちの涙なんてほとんど見たことないけぇ。けど・・」
すっと、のっちの胸元を指差した。
そして
「ココロん中じゃ、いっぱい泣いてきたんじゃろ?
そんな姿も見たくないってことじゃ。」
あぁ、もう。
やっぱ、あ〜ちゃんには敵わないなぁ。
なんか、いろいろ思うのに、上手く言葉にできなくて
「うん。わかった」
としか答えられなかった。けど
「よし!」
そう言って、あ〜ちゃんははにかんでくれた。
<side a>
なんだか、結局あ〜ちゃんが一方的に
泣き倒しに来たみたいになっちゃった気がしないでもないけど・・
それでも、ずっと抱えていたものをさらけ出せたココロは
ずい分と、軽くなっていた。
ここから先は、のっちが、、うぅん、二人が何とかしなきゃいけないことだ。
てのは、虫が良すぎるかな?
でもやっぱ、あ〜ちゃんは、見守ることしかできん。
「じゃ、気をつけてね」
「うん、お邪魔しました」
−そだ、最後に一言。
「…のっち?」
「ん?」
「あ〜ちゃんが言うのもどうかなとは思うんだけど…」
「うん」
「ゆかちゃんは、ゆかちゃんで、あ〜ちゃんじゃないけぇ」
「…」
「臆病になるキモチもわかるけど、ちゃんとゆかちゃんと
向き合わなきゃいけんとも思うんじゃわ」
「…うん、そだね」
−あぁ、また八の字眉になっとるよ。
「まぁた、そんな顔しよって」
ぎゅっとのっちのほっぺをつまんで
「だ〜い丈夫!大丈夫じゃけぇ!」
と言うと、のっちは
「なんで、ほっぺた捻られてんの?ちょっと痛いし」
と相変わらず八の字眉。けど
「ヘタレののっちに、喝を入れてんの」
と言うと、
「ありがとう」
て、笑った。
「じゃ、また明日」
「うん、また明日」
のっちの部屋の玄関を開けると
湿った生暖かい空気に包まれた。
けど不快感は覚えなかった。
エレベーターを降りて、マンションを後にする。
ふと視線を前にやると
見慣れた人影が見えた。
あ
ゆかちゃんだ。
最終更新:2008年10月31日 21:14