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SIDEーK

あれからのっちと別れて自分の部屋に戻った。
明日も早いから急いで寝る準備をしてベットに潜るが、なかなか寝付けなくて何度も寝返りをうつ。

やっぱりゆか、あ〜ちゃんが心配じゃ。

ベットから飛び起きて、あ〜ちゃんの部屋に向かう。
一応ノックする。

「誰?」
声が少し震えているのにゆかが気付かない訳なかった。
「ゆかだけど。入るよ」
ドアノブに手をかけると、
「待って」
と止められた。
「なんでなん?」
「…なんでもじゃ」
あぁもう。苛々する。ゆかはいつもならあ〜ちゃんの言うこと聞くけど、今日だけは聞かん。そう思っておもいきりドアを開けた。

やっぱり。
あ〜ちゃんは泣いていた。
ゆかは黙ってあ〜ちゃんの側に行き、抱きしめた。

「なんで…開けんのよ」
「今日はあ〜ちゃんの言うことは聞かんって決めたから」
「え?」


ゆかは抱きしめていたあ〜ちゃんを離して、目を合わせて言う。
「あ〜ちゃんが悩んでるのはわかっとる。何なのか隠さんで言って。」
「あ〜ちゃんは悩んどらん。」
目を逸らされた。何てわかりやすい嘘をつく人なんだろう。
「じゃあ何で泣いてるん?」
「か、花粉症じゃ」

あ〜ちゃんの苦し紛れの言い訳に思わず笑ってしまった。
あ〜ちゃんも泣き止んでるし。
でも今日はこのままあ〜ちゃんのペースに飲まれる訳にはいかない。

「あ〜ちゃん。冗談はええんよ。ほんまのこと言って」
「だから悩んどらん」
「そんなにゆか信用ならんの?」
「そんな訳ないじゃろ」
「じゃあ何で言ってくれんの…?ゆかは…あ〜ちゃんが心配なんよ。のっちも心配しとる。」
ゆかの目をあ〜ちゃんがじっと見る。そして神妙な顔つきにふっと変わった。

「…対価」
「対価?」
「女王様になるには対価が必要なんよ。」
「…その…対価って?」
「『コドモ時代の記憶』。」
「へ?何それ。ゆか意味わかんないんだけど。」
「女王様になって国を治めるにはオトナにならなきゃならんの。だからコドモ時代の記憶を捨てるんよ。」


驚き過ぎて言葉が出てこなくなった。あ〜ちゃんは淡々と続ける。

「もう覚悟はできてるけぇ、ゆかちゃんの心配することじゃないんよ。あ〜ちゃん一人の問題じゃ。」
「…あ〜ちゃん一人の問題じゃないよ。」
「ゆかちゃん?」
「そんなのあ〜ちゃん一人の問題じゃない!」

思わず叫んでしまった。
あ〜ちゃんはゆかの剣幕にびっくりしている。

「な、何でよ…あ〜ちゃん一人の記憶が無くなるだけなんよ。ゆかちゃんには迷惑かけん」
「だって…ゆか、あ〜ちゃんに忘れられちゃうんでしょ…」
「まぁそうじゃけど」
「そんなの絶対嫌じゃ!あ〜ちゃんの中にゆかがいないなんて…嫌じゃ。あ〜ちゃんはほんまに対価払っていいって思っとるん!?」
「お…思っとる」
「ほんとにほんとなん…?」
「…ほんと」

あ〜ちゃんの言葉に全身の力が抜ける。それと同時に涙が溢れだした。

「…わかった。ゆかはこれ以上何も言わんよ。どうせ忘れられちゃうもんね。ゆかものっちも忘れても良いような存在だったなんて…ゆかはショックじゃ。」

ゆかはあ〜ちゃんの側から離れる。
あ〜ちゃんの顔が見れない。涙も止まらない。
ああもうここにいるのが辛い。

「じゃあ。良い女王様になってね…姫。」
「待って!」

部屋を出ていこうとした途端腕を掴まれた。

「忘れても良い存在な訳ないじゃろ!」

あ〜ちゃんもまた泣いていた。さっきよりも激しく。
「ほんとは…ほんとはそんな対価払いたくないに決まっとるじゃろ!でも…あ〜ちゃんは女王様にならなきゃならん、オトナにならなきゃならん…仕方ないんよ」
「…あ〜ちゃん」
「折角覚悟出来たって思っとったのに…ゆっ…ゆかちゃんのあほ…」


しばらく二人とも抱きしめ合って泣いていた。
あ〜ちゃんが一人で悩んでいたことはあまりにも大きすぎる。ゆかたちでどうにか出来る問題じゃない。逃げるしか…

「そうじゃ…一緒に逃げよう!それしかないよ。のっちも連れて三人で逃げるんよ!」


あ〜ちゃんのゆかを見る目に、迷いはなかった。



TO BE CONTINUED...







最終更新:2008年10月31日 21:20