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新アルバムの課題を前に、のっちは途方に暮れていた。
大人っぽく、といわれましても。
こないだ、ゆかちゃんとあ~ちゃんがひそひそ話してるところに近寄ったら、
「あ~、お子さまのっちには関係ない話じゃけぇ、あっちいっとき。」
と、あ~ちゃんから犬みたいに追い払われた。
ゆかちゃんは、困った笑いを浮かべて肩をすくめた。
「・・どうせ、のっちはお子さまですよ~だ。」
だが、すねてる場合じゃない。
レコーディングは明日から。
もう、時間がない!
「・・やっぱし、こういうときは、ゆかちゃんに聞くしかないじゃろ」


「ははぁ。そいで、珍しくうちに来たんじゃね?」
完全な困り顔ののっち、
キライじゃないけど、今回ばかりはほっとけない。
「ねぇ、ゆかちゃん。大人っぽくって、どんなんしたらいいんじゃろ?
    • のっちに、教えて。」
べそかき、のっち。
「うーん・・。のっち、あ~ちゃんには相談した?」
「あ~ちゃんはだめじゃ!」
そこだけ即答か。
「な、なんでよ?」
「アホの子と思われる。」(もう思われとると、思うけど・・)
そんなに強い眼差しで、
あ~ちゃんには、ええかっこしぃとこみせたいんじゃね。



(仕方ないのぉ・・)
のっちの瞳が不安げにゆれる。
「だめ、ゆかちゃん?」
「わかったよ。時間がないけん。
のっち、いい?逃げたらいけんよ?」
「うん!・・わっ、わぁっ、なにっ、しよん?!」

のっちの腕をぐぃってひっぱると、すぐに唇を奪う。
驚いたのっちの目がまんまるになる。
でも、逃がさない。
目と目をあわせたままの、キスで。
さぁ、閉じたらいけんよ。
唇をこじ開けると、
甘い香りがなだれこむ。
磁石みたいに、舌を引き寄せる。
のっちの、羽根みたいに軽いカラダが、震えてる。
どっかに飛んでいきそうだ、
くらくら、息ができないよ。
苦しいけど、やさしくなんてしてあげない。
どこにも迷わないように、
ぎゅっ~て、つかまえちゃるけんね
のっち、のっち、のっち
瞳が、とろんとしとるよ
漏れる吐息に、惑わされそう。
もっと、もっと、もっと
深くなるよ
ねぇ、意識が、溶けてしまうまで・・

「っはぁ!・・はぁはぁ。
き、今日はここ、までっ・・」
さすがに息が切れたわ。
心臓もバクバクじゃ。
でも、のっちは泣かなかった。
「・・。?。のっち?よく頑張りました。」
「・・、ほへぇ・・、っっ」
のっちが、かおをくしゃくしゃにする。
なんじゃ、腰ぬかしよったん?
そりゃ、逃げられないわけじゃね。



のっちはまだ上気している頬を押さえ、
上目遣いでゆっくりしゃべりだす。
「あ、あのね、ゆかちゃん、このこと・・」
「なんね?あ~ちゃんには黙っとってあげるさけぇ、心配しんさんな。」
ほっとするのっち。
(こらぁ、正直すぎるぞ!)
ま、そこが可愛いところじゃけぇ、許しちゃるケド。

「そうじゃ、のっち。
あ~ちゃんに大人のキス、教えてあげんさいよ?」
「えぇっ!」
ありゃ~、のっちがまた真っ赤っ赤じゃ。
「そっ、そんなことできんよ!」
「なんじゃぁもう、のっちはヘタレじゃねぇ。
あ~ちゃん、きっと喜ぶよ?のっちを見なおすかもよ?」
のっちはちょっと戸惑いつつも、
ほらね?伏せていた大きな目が、キラキラしはじめる。
「・・そ、そうかな、あ~ちゃん喜んでくれる、、、かな?」
きっと、のっちの脳裏には、
あの、花のような笑顔が、浮かんどるんじゃね。
のっちをとらえて離さない、ふわり、甘い、誘い。
「・・じゃぁ、ゃ、ゃってみようかな。。」
へっぽこのっちが上手にできるように、おまじない、かけてあげる。
あたしはのっちのまぁるい頭をやさしく撫でた。
「よしよし、のっち。がんばりんさいや?」
「お、おう!」
気合いは勇ましいけど、また八の字になっとるよ。
ほんまにちゃんとできるんかの?

まだ、なんだかふわふわした足取りで帰っていくのっちを、眩しげにみつめる。

のっちは決して知ることはないだろう。
まさか、あ~ちゃんからも同じこと頼まれた、なんて。
でもね、実は二人には、
まったく違うこと、教えたんよ。
あの二人、どんな顔するじゃろか?
一粒で二度おいしいとは、まさにこのことじゃね。
かしゆかは微笑んで、夜空を仰いだ。
満天の星空が、潤んだ瞳に降り注ぐ。。

ねぇ神様、ゆかのお願い、きいてください。
ゆかを、このままずっと、かわいい天使たちのそばに、いさせてください。
あの二人を、何があってもゆかが守るけぇ、どうか、お願いします。
かしゆかの苦しくなるほどの想い、
それは、あ~ちゃんものっちも知らない、
お星さまだけの秘密。

おしまい






最終更新:2008年10月10日 03:24