SIDEーN
ゆかちゃんと話した次の日は一日中二人と会う機会がなかった。朝礼と夜の集会で見かけただけ。
集会が終わるとさっさと荷物を片付けて家へと向かう。
今日も一日疲れたなぁ。
最近色々なことを任されることが多くなったけど、その分訓練きつくなったし。
まぁのっちは真面目だからちゃんと全部こなすんだけどねぇ…なんて言ったらあ〜ちゃんにどつかれそう。
そういえば今日のあ〜ちゃん、ちょっと元気が戻ってたように思ったんだけど、気のせいかな。
お風呂から上がって、ストレッチをしながら完全リラックスモードに入っていると突然家のドアをノックする音が。
こんな時間に誰…?
兵士といえどものっち女のコだし…ちょっと怖い。
でもでも、こ、ここはのち男の出番じゃけぇ…怯えとる場合じゃない。よし。
壁に立て掛けている護身用の槍を取って、ドアの側に控える。
呼吸を整えて…1、2の…
「やぁーー!」
「ちょっとのっち近所迷惑じゃけぇ、静かにしんさい」
「そうよのっち、しーじゃ」
「え…あ〜ちゃん!?ゆかちゃんも!?…こんな時間に二人とも何やってんの!?」
「後で話すからとりあえず入れて」
「あ、ちょっとぉ…」
のっちの制止も虚しく、二人はずかずかとのっちの家に上がり込んで来た。
ちょっと嬉しく思っている自分が悔しい…。
「のっち、そこに突っ立っとらんとこっち来んさい。」
しかも犬みたいにあしらわれてるし。それで行く自分も自分だけど。
「あの…二人は何でここに来た訳?」
「のっちに話があるんよ」
「話?」
「…三人で逃げようと思って……だめ?」
へ?三人で逃げるって…どゆこと?ゆかちゃん何を言ってるの?のっちの頭働いてない?若干パニック状態なんですけど。
「ゆかちゃん唐突過ぎじゃ。のっち混乱しとる。あ〜ちゃんが話す。」
それからあ〜ちゃんが話してくれた内容は余計にのっちの頭を混乱させた。『対価』、『コドモ時代の記憶』…確かにうちらだけじゃどうしようもないことで。『三人で逃げる』ことはほとんど最終手段で、選択の余地がない。あ〜ちゃんはこのことを悩んでたんじゃね。
「それで…のっちの返事なんじゃけど…」
あ〜ちゃんが心配そうな顔でのっちを見つめる。
心配せんでええよ。
のっちはあ〜ちゃんを守るって決めたんじゃもん。
「ついて行くに決まっとるじゃろ。」
「ほんまに!?」
うんうんと首を縦に振るとあ〜ちゃんがのっちに抱きついてきた。
「あ、あ〜ちゃん!?」
「のっち…ありがとう!」
「いや、あの…どういたしましてというか何というか…」
「あのーお二人共、いいですかー?今からが重要なんですよー」
「そうじゃ。忘れとった」
あ〜ちゃんがのっちからすっと離れると、ゆかちゃんは少し咳ばらいして空気が改まる。
「いい?国からお姫様がいなくなるってことは一大事なんよ。騒動が起きるのは目に見えとる。」
「そこで出来る限り騒動を小さくするためにも、ゆかは前日の夜に逃げるべきだと思う。」
「前日の夜!?…ってことは女王就任儀式ドタキャンしまーすみたいな感じにするってこと?それって逆に騒動大きくならん…?」
「あ〜ちゃんもそう思う…」
「ゆかも最初はそう思ったんよ…でも例えば今日逃げるとすると、まだ儀式まで時間があるから皆そんなに忙しくないけぇ、一斉にゆか達を探しに来れるじゃろ?でも儀式直前じゃったら皆忙しいからすぐには探しに来れんと思うんよ。それで儀式直前かつ人の目につかん時間を考えると…」
「「前日の夜!」」
「そう。それに騒動が長期化すればするほど少人数のゆか達には不利じゃ。」
「さっすが我が国が誇る神官様じゃね!あ〜ちゃん、ちょっと鳥肌…」
あ〜ちゃんはのっちの隣で腕を摩っている。
その後も色々と逃げるための計画を話合い、深夜になって二人はお城に帰って行った。
逃げる場所なんて決まっていなかったけど、その時ののっち達はただ『逃げる』ということに必死になっていた。
それがただ自分が向き合いたくない現実から『逃げる』ってことで、一番のコドモの我が儘だってことはその時は分からなかったんだ。
TO BE CONTINUED...
最終更新:2008年11月05日 19:49