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◇A-side◇
「捨てないで」
そう言うと、のっちの顔がみるみる悲しそうになっていった。
こんな事を言うつもりは無かったのに。あ〜ちゃんの体が、捨てられる事を拒んだ。のっちを失う事を恐れた。
「…」
のっちは何も言わない。
困らせてごめんね、のっち。
ゆかちゃんとの関係を知った今でも、失いたくないんだよ。ゆかちゃんも大切な人なんだ。のっちも大切な人なんだ。
二人に捨てられたら、あ〜ちゃんは生きて行けないんだよ。
「…ここ暑いから、中行こっか」
そう呟いて立ち上がり、のっちは近くの建物の中に姿を消した。
涙が止まるまで、あ〜ちゃんはベンチを動かなかった。


空がオレンジ色に輝き始めた。もうじき、日が暮れる。
「…」
「…」
あれから何も喋らないあ〜ちゃんとのっち。お別れの時間は、刻一刻と近付いているんだよね。
のっちが向かった先は、観覧車。
あ〜ちゃんの大事な思い出の場所。こんな形でここにまた来るなんて、想像もつかなかった。


観覧車に乗り込み、向かい合って席に座る。
静かに動き出したあ〜ちゃん達を乗せた箱。緩やかな振動に、懐かしさを感じた。
「あ〜ちゃん…話があるんだ…」
ほら、酷過ぎるでしょ、このタイミング。
オレンジの光が作り出す伸びた影の濃さと言ったら…まるであ〜ちゃんの悲しみみたく深い。
こんなに辛いって事は、それだけのっちを愛してたって事だよね。
いや違う、今でも愛してるんだ。


「ゆかちゃんと付き合ってたんだ…あ〜ちゃんと付き合う事になったあの日から…ずっと、ゆかちゃんとも付き合ってたんだ…」


◇K-side◇


「のっち…」
のっちがくれたブレスレットが夕日を反射してキラキラ輝く。
のっちは今日、あ〜ちゃんに全てを打ち明ける。決して許される事じゃないけど、今頃あ〜ちゃんに泣きながら謝ってるに違いない。
だけどね、のっち。ゆかは心配なんか要らないと思うんだ。
だってあ〜ちゃんも、のっちの事が大好きなんだもん。ゆかと同じで、のっちを愛しているんだよ。
だから、きっと上手く行く。
なんでこんなにも穏やかな気持ちなんだろ。知った時は凄く動揺したのに、今は随分と穏やかだ。
あーあ、悩んでたあの頃がバカみたいにすら思えてきた。早くのっちとあ〜ちゃんに会いたい。
また三人で幸せな時を過ごしたいんだ。


◇2-06:End◇





最終更新:2008年11月13日 19:49