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のっちはベットに寝そべって、漫画を読んでいる。
最近のお気に入り「パラキス」のページをめくる手はとまらない。
(いやぁ、どっきどきじゃね!)
明日のライブまで、束の間の休息をすごす、
そのホテルの一室。
(そろそろ、寝ようかな・・)

ふぃに、扉に気配を感じた

こんこん。
控えめなノック。
大きなヘッドホンを首にかけて、扉を開けると、

天使がいる・・!!
じゃなかった、
大きな枕を抱えたあ~ちゃんがたたずんでいる

「?あ~ちゃん、どうしたん?」
「・・のっち、入っても、いい?」
「ええよ、どぉぞ!」

あ~ちゃんを部屋に招き入れて、扉を閉める。

奥のベットはくしゃくしゃだし、机はゲームと漫画をちらかし放題だし、
また何か言われそう?と肩をすくめても
あ~ちゃんは無言のままだ。
「・・あ~ちゃん?」
「っのっちぃ・・!」
突然、あ~ちゃんの大きな瞳から涙がぼろぼろこぼれだす。
小さな肩が、ふるふるしてる!
「っ!ど、どうしたん?!嫌な夢でもみたん?」
あ~ちゃんは、ぎゅぅって目を閉じて、こっくりとうなづく。
枕を落として、のっちの首に抱きついてくる。
「あ~ちゃん、、怖い、夢みたけぇ、
      • ひ、一人で、
いたくない、んよ。。」
のっちは棒立ちになる。
おろおろと、おずおずと、あ~ちゃんを抱き返す。
(こ、こんな展開はじめてじゃぁ・・。
いやいや、そうじゃなくて!!
悪夢のやつめ、許しがたしっ!!)
「大丈夫よ、あ~ちゃん!怖い夢なんて、のっちが追っ払うけぇ。
どーんとまかせんさい!」



    • あ、あれ?
いつもならここで
「のっちなんか、頼りにならん!」
ってくるんですけど?
あ~ちゃんは、まだ、ぷるぷる震えが止まらない。
「・・あ~ちゃん?まだ、怖いん?」
「、こっ、怖いし、ね、眠いんよ・・」
あ~ちゃんは、ぐずる子供みたいに、あたしの胸に顔を埋める。
「・・と、じゃあ、、、のっちが一緒に寝てあげようか?」
(っ!!
自分で言って、自分にびっくりだ!!)
あ~ちゃんは、こくん、とうなづいて、
ベットまであたしの手をひっぱる。
「ぇっ!!」
(予想外すぎて、何が何だかわからなくなってきた!)
振り向いたあ~ちゃんの、濡れた瞳に、射すくめられる。
瞳の奥に、暗い光が、揺れている。
(・・そっか、あ~ちゃんは今、一人で眠るのが怖いんじゃね。)
あたしたちは狭いベットに二人で丸くなった。
ぎゅっと、あ~ちゃんの手を握る。
「もう、怖くないじゃろ?」
「・・ん」
あ~ちゃんの冷えた指先を吐息であたためる。
「のっち、、」
「んっ?」
「・・あ~ちゃんに、おまじない、して」
「?」
「よく眠れるように、こないだのおまじない、して?」
「おまじないって、なん・・」
(あっ、・・ま、まさか、あ、あれを?!
いっ、今、このシチュエーションでっ!?)
「・・嫌なん?」
「嫌、なわけないけども・・、い、今?」
「今、、、すぐ、、」
すぅぅっと、深呼吸する。
(やばい、今は上手く出来る自信、ないよ!)
まごまごしていると、あ~ちゃんがまた瞳を潤ませる。



「早ぅ・・!」
覚悟を決めて、自分に言い聞かせる。
(これは、おまじない、おまじない、なんじゃからね)
あ~ちゃんの肩に手を触れると、ゆっくり、唇をあわせた。
あ~ちゃんの震えを押さえるように、ほんの少しだけ、強く、長めに。
あ~ちゃんの長い睫毛が濡れている。
息が、苦しくなる!
「・・っ、はい。よく、眠れるおまじない、かけたけぇね。。。」
あ~ちゃんは、何にも言わない。
目も、開けない。
「あ~ちゃん・・?」
涙のたまった目元に、触れる指先が、切れちゃいそうだよ。
思わず、涙のあとを唇でなぞる。
「・・ぅん、ふぅぅ・。」くらくら、目眩がする。
あ~ちゃんの、悩ましい、ため息。

何か、が、はずれた。
(・・うわぁ、どどどうしよう、食べちゃいたい・・!)
あ~ちゃんの、髪に、耳に、瞼に、睫毛に、鼻先に、頬に、
子犬がくんくん鼻を近付けるみたいに、小さなキスをする。
あ~ちゃんは、抵抗しない。
甘くて、やわらかい吐息が、漏れているだけじゃ。
(っ!!もぉ、本気になっちゃうよ???)
白い、細い首筋に、そっとキスを。
のっちをぞくぞくさせるような、女のコの香りが立ち上る。
(はぁはぁ、心臓が、ズキバキしてきた。。。)
パジャマの隙間から、きれいな鎖骨がのぞいてる。
千載一遇の、チャンス到来。
のっちの心に、ハザードランプがぺかべか点滅。
必死にブレーキ踏む自分と、
アクセル全開な自分と。



(・・っと、あ~ちゃんのこと、もっと知りたい、だけじゃけぇね・・)
それは、言い訳にならない。
駆け引きも、できない。
    • ねぇ、これは、もう、運命なんじゃね?
そういうことで、いいんじゃね?
「ぅん、・・のっちぃ・・」
のっちの耳をくすぐる
瞬くような、ささやくような、天使の寝言。
そっとボタンに手を掛けようとするのっちに、追い打ちをかける
「・・ずぅっと、そばに、ぉってょ。。むにゃぁ・・」
安心しきった寝顔が、ふにゃぁとほころんで、
のっちの腕に顔をすり付ける。
気付かないふり・・


    • できない。

    • あぁ~っ!
できない、できないできませんよ!
何といわれようと、アンフェアなゲームなんて、
のっちにはできんのじゃぁ!!
「っっ、ふーっ、ふーっ、危なかっ、た。
迷いの森くらい、危なかった!」
のっちは、詰めていた呼吸を、あ~ちゃんには見えない角度で吐き出した。
(・・ほわぁぁ、弱ってるあ~ちゃんを襲うなんて、
まったく、どうかしとるんじゃわ・・)
その日一番の八の字のままで、
あ~ちゃんをやさしく包み直す。
「大丈夫よ。のっち、ここにおるけぇね。
なぁんも、心配せんでよかよ。。。」
すやすやとやわらかい寝息、
あ~ちゃん、いい夢でも見てるんかな?
かわいいほっぺが、薔薇色じゃ。
ふわふわした髪を、指先でやさしく梳いて、
ぽんぽんと頭を撫でる。


こんなことじゃから、ゆかちゃんに
ヘタレって言われるんじゃろ。
それも、わかっとる。
のっちには、狼さんにジョブチェンジなんてできんもん。
もう、このままいっそ、ヘタレ大王まで、レベル上げしちゃるわ。
そしたら、
あ~ちゃん、もっと安心できるじゃろ。
うち、ヘタレじゃけど、一生懸命守っちゃげるけんね。
その夜、ちょっぴりレベルアップ(?)したのっちは、
いつまでもお姫さまの寝顔を見つめてましたとさ。


その頃、あ~ちゃんの部屋には・・
食べかけのキウイが散乱していた。
キウイはマタタビ科のビタミン豊富なフルーツで、
喉の炎症を押さえる効果がある。
ツアーが始まっても喉の調子が思わしくないあ~ちゃんは、
寝る前にキウイをたらふく食べていたのだ。
ネコ科のあ~ちゃん(?)に、マタタビが聞いたのかどうかはわかりませんが
ともかく、今は、ぐっすり夢の中。
ちなみに、この山盛りのキウイを差し入れたのは?
そう、こんなことができるのは、
世界でたった、一人だけ。
のっちがいくらレベルをあげても絶対かなわない、
女神様なのでした。

おしまい





最終更新:2008年10月10日 03:28