SIDE-A
着々と何かが自分の中で突き進んでいる。
オトナになるための準備と、コドモのままでいる準備。
その二つは相反するものだけど切り離すことは出来ない。
期待と不安と、自分でもよくわからない感情が渦巻いて、不思議と胸が高まっていた。
女王にならずに、逃げるということは国に対する裏切り行為だって痛いぐらいわかってる。
でもあ〜ちゃんは。
あ〜ちゃんは記憶を失いたくない。
覚悟できとるなんてゆかちゃんに言ったけど、あれは覚悟なんかじゃない。
必死で自分を殺してただけだった。
今日もまた歌の練習が始まる。ヤスタカは黙って機材をセットしていた。
—今日は、たぶん。—
ガンガンに流れる音楽。
—うまく唄える。—
たぶん本番で唄うことのないであろうこの歌を、今は心を込めて唄う。
自然とあ〜ちゃんの歌声と音楽が絡み合う。
もう迷いは、ない。
一通り唄い終わり、ヤスタカの方を見る。
黙っているのは、良かったからだろう。この数週間の練習で学んだことだ。
その後も何回か練習して、いつもより早くヤスタカは機材を片付けはじめた。
黙ってその様子を見ていると、こちらの方は一切見ずに話しかけてきた。
「何かあったのか?」
「え…?」
「ここ数日で格段にうまくなっている。」
「褒めてくれて…ありがと。」
「良からぬことを考えているなら止めておいた方がいい。」
一瞬心臓が止まったかと思った。
ヤスタカは表情を変えず続ける。
「それは国のためにも、国民のためにも。」
「…そうじゃね。そんなことは、せんよ。」
「わかってるなら構わないが。」
そう言ってヤスタカは帰って行った。
うまくごまかせたかな。
ヤスタカの敏感さにはかなり驚いた。このまま逃げる時までごまかせるだろうか。
一人取り残された部屋でとてつもない不安にかられていた。
SIDE-Y
恐らく彼女は何かを企んでいる。それは間違いない。
だが彼女は唄わなければならない。
本当は何よりも彼女自身のために。
そして…僕のために。
TO BE CONTINUED...
最終更新:2008年11月13日 19:57