(K)
のっちは何度もごめんねって、泣かないでって、
こぼれ落ちるゆかの涙をぬぐってくれた
のっちにふれられた部分が熱くて、またドキドキして、
それが辛くて悔しくて、…涙が止まらんかった
伝えちゃダメなのに、
それは分かってるのに
もれだした想いに
センをしきれなくなってきた自分に腹が立つ
幸せ者だねって笑ってくれたのに
また…悲しい顔をさせてしまった
一体何をしてるんだろう
ゆかのこんな想いが…
のっちを傷つけるだけの、この気持ちは
どうあがいても、やっぱり
のっちを傷つけちゃうんだ
(N)
ゆかちゃんの目から次々に溢れ出す涙をそっとぬぐうたびに
ゆかちゃんは、ごめんねと返す
悪いのはのっちなのに
のっちが泣かせてしまったのに
だからのっちもごめんねって言いながら、
止まらない涙をぬぐってあげるしかできなかった
けどいくらぬぐっても、頭をなでても
涙を止める事は、できない
自分の無力さに、頭が締め付けられる
のっちは結局…なんもできんのじゃ
そうこうしてると、あ〜ちゃんが帰ってきた
「ただいま…、って何ゆかちゃんを泣かせとるん!!!!!」
そう言うとあ〜ちゃんはすっ飛んできて、
ゆかちゃんからのっちを引きはがす
「ゆかちゃんどうしたん?のっちに何かされたん?」
優しく、強くゆかちゃんを抱きしめ、
頭をなでるあ〜ちゃん
「違うんよあ〜ちゃん、のっちはなんもしとらんよ…、ゆかが勝手に、」
「のっちは氷!目ぇ冷やすけぇ氷持ってきて!」
「はっはい!!」
全力で走った
氷を手に入れて、ゆかちゃんに渡す
今のっちにはそれしかできないと思ったから
「…こっ氷っ、持っ、てきたよ」
息を切らして戻ると
ゆかちゃんの涙は止まっていて
あ〜ちゃんに頭をなでられながら笑って話す姿があって
ホッとしたと同時に
…激しい劣等感に襲われる
のっちにはできんかった事を、
あ〜ちゃんは簡単にしてのけた
それがなんだか、悲しかったんだ
(K)
あの日から何日かたった
のっちはあれから
もう、何も聞いてこんくなった
いつも通りの、前と変わらん3人で、
前と変わらん毎日だけど
のっちとゆかの間には、
…見えない溝ができてしまっていた
それはふとした瞬間に現れて、ゆかたちを惑わせる
けど、これくらいの距離が1番いいんかも知れん
これで…よかったんかも、知れん
今日も番組の収録で相変わらずの日々の中にいる
長い空き時間があったから、
ゆかとあ〜ちゃんは暇潰しに街へ出て行った
…のっちは、寝るって言うて楽屋に残った
そろそろ時間だから
テレビ局の前まで戻ってきたのはいいけど、
あ〜ちゃんが突然
「やばい!今日aikoさんの新曲の発売日じゃった!
ちょっと買ってくるけぇ先に戻ってて!」
なんて言って、光の速さで行ってしまった
aikoさんのことになると我を忘れてしまうんよね、あ〜ちゃんは
仕方ないから1人で楽屋に戻る途中…少し考える
…のっちと2人になっちゃうな
ふとした瞬間のみぞが、見え隠れしてきた
楽屋のドアのぶを掴んで、深呼吸
大丈夫じゃけえ、普通にしとったら大丈夫じゃ
そう自分に言い聞かせてドアを開けたら
テーブルにうつぶせて
ゆかとは反対側を向いて、眠るのっちの姿があった
肩の力が一気に抜けて、ホッとする
…寝るってホンマじゃったんじゃ…
「………のっち…?寝とる?」
久しぶりにのっちを、よく見た気がする
大好きな丸い頭のシルエット
最近は見てなかったな…
あの時以来の衝動が、ゆかをかき立てる
寝とるん、よね…?
「…のっち」
のっちの引力に引き寄せられるように
ゆっくりと…そばに寄った
(N)
ゆかちゃんとあ〜ちゃんが遊びに行ってる間
のっちはずっとPSPとにらめっこしとった
主人公の少年が悪と戦って世界を救う
ありきたりなRPG
ありきたりだけど、今ののっちには
その少年が眩しくてたまらなかった
こんな小さい子供でも世界を救えるんだよね
のっちは大事な親友1人ですら救えんのに
…ゲームはいいよなぁ…
簡単にリセットができて
いくら間違えても、やり直しがきいて
…どこで間違えたんかな
どこからやり直せば、今のこの状況から抜け出せんのかな
あの日から、ずっと
のっちとゆかちゃんには違和感があって
一見今まで通りなんだけど、やっぱなんか違ってて
のっちは正直、どうしていいんかわからんのよね
何か言うと、また泣かせちゃうかも知れん
って思うとなんも言えん
なんも言えんから、なんも聞けん
なんも聞けんから…なんもできん
悪循環だなーはー…
…あ〜ちゃんならきっと
ゆかちゃんを泣き止ませたみたく簡単にこなすんだろうな
ゆかちゃんの負担を軽くしてあげられるんだろうな
それかホンマはもう
ゆかちゃんはあ〜ちゃんに相談して
そうなっとるかもしれんね
それならそれでいいと思うけど
けどなー
のっちだって…力になりたいんよ
………あー!!
もー!!!
いーや
PSPの電源をプチっと切って、テーブルに顔をうずめた
ガチャ
少しして人が入ってきた気配がしたと思ったら
名前を呼ばれた
ゆかちゃんの声だ
「…のっちー、寝とる?」
「…」
なんとなく起きにくくて
寝たふりをする
「のっちー」
「…」
ゆかちゃん、だけ?
あ〜ちゃんはどうしたんじゃろ?
「…のっち」
だんだん声が近づいてきて、すぐ隣にゆかちゃんを感じた
どうしよ、今更…なんか起きずらいな
どーしよかな、もーちょっと寝たフリしとこかな
「のっち…」
サラっと髪をすかれた
ゆかちゃんの細い指がのっちの髪をとく
ん、気持ちいや
心地よさが体中に響く
これやばい…ホンマに眠く…なっ、てきた………
「のっち」
「…………好き…」
————えっ
間髪入れずにドアが開く
「ただいまーaikoさん買ってきた!!
ついでにおかしも買ったけぇ食べよーっ」
「うわっ!」
「…何ゆかちゃんどしたん?そんな驚いて」
「う…んーん、なんもないよ。お菓子食べる食べる」
「のっち寝とるん?のっちー!起きなお菓子なくなるよ!のっちー」
何を言われても起きれなかった
ゆかちゃんは好きって言った
好きって
のっちのことを…?
最終更新:2008年11月13日 19:59