<side k>
あの日、
のっちと初めて結ばれたあの夜
目が覚めると、のっちの腕の中にいた。
きれいに整った、その寝顔を見ながら
なんともいえない幸福感を感じていた。
絶対に手が届かないと思っていた幸せが
今、まさにここにある。
幸せすぎて、怖いくらいだった。
怖い。
そう、怖くなった。
幸福感と同時にゆかを襲ってきたのは
不安とも恐怖とも
なんともいえない感覚だった。
のっちを誰にも渡したくない。
ゆかだけの、トクベツであって欲しい。
ゆかだけを、トクベツに想っていて欲しい。
驚いた。
自分にこんな、独占欲があったなんて。
きっと、のっちのことになると
あ〜ちゃんにすら、嫉妬してしまう。
それが、誰であってもヤなんだと。
この感情に気付いて、そんな自分が怖くなった。
この感情は、
のっちを
あ〜ちゃんを
ゆかを
…
三人をダメにする。
直感的に、そう思った。
大好きなあ〜ちゃんですら、悪者にしてしまいそうな自分。
のっちを縛り付けてしまうような、未熟な独占欲。
でも、もうこの腕の
あたたかさとやさしさを
知ってしまったゆかは
後戻りもできなくて・・
あの人と別れず
のっちの傍にもいたい
という
自分勝手な選択をのっちに押し付けてしまったんだ。
自分に負い目をつくり
のっちを独占する権利など自分にはないんだと
あふれ出しそうな、黒い感情に蓋をして
自分に言い聞かせた。
のっちにこれ以上落ちていかないよう
あの人を、ブレーキがわりに。
めちゃくちゃな理論。
自己中心な発想。
不誠実な選択。
そんなこと
せんぶ、ぜんぶ
わかってたよ。
けどあの時のゆかには
そうする方法しか
思いつかなくて・・・
再び目が覚めると、今度は泣いていた。
−あの時も泣いちゃったんだよな・・
でも−
ようやく、長い夢から目が覚めたような気がした。
どんなに足掻いても
ゆかにはのっちしかおらん。
そんなこと、あの時から
わかってたことなのに。
あの時、どうして
のっちのまっすぐな愛情を信じ切れなかったんだろう。
それからも、ずっとずっと
のっちはいつも
傷つきながらも、傍におってくれたのに。
なんで、ずっと目を逸らしてたのだろう。
ううん
ごめん、ほんとはわかってた。
どっかでいつもひっかかってたこと。
−ゆかは、あ〜ちゃんの代わりなんかじゃないよね?
打ち消そうとしては、ひょこっと頭を出してくる不安。
そんな感情があることを、認めたくなかった自分。
けど、もうちゃんとしなきゃ。
−・・失いたくないなら、ちゃんと向き合わんといけんよ。
うん、失いたくない。
のっちは、絶対に。
こんなわかりきった答えにたどり着くまで
ずいぶんと遠回りしてしまったけれど・・・
だからこそ、見えてきたこともある。
あ〜ちゃんに嫉妬して
あ〜ちゃんに背中を押してもらって
ほんと、なんだかなぁ・・
でも、どうなっても
きっと、三人は大丈夫。
涙が乾く頃
夜が明け、朝日が部屋に差し込んできた。
また、新しい一日が始まる。
まだ何一つ、状況は変わってないくせに
頭の中のもやが、少しずつ晴れていくような
そんな朝だった。
最終更新:2008年11月24日 05:23