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「はぁー……寒っ…」
すっかり冷え込む人気も疎らな夜。冷たくなった両手に息を吐きかけて擦りあわせた。
こうなってくるともう冬なんだなぁって毎年実感するなぁ。

「ご、ごめんゆかちゃーん!」
「もぉー、のっち遅いんよ!」
遠くからゆかを見つけたのっちが、バタバタと駆け寄ってきた。
ここまで走ってきたのかほっぺたが紅くなって息も荒い。
「ご、ごめんね…」
「…ケーキ奢ってね」
「ぅえ!?」
眉を八の字にして、目を真ん丸くしてるのっちを尻目に歩き出した。
すっかり冷えてしまったから早く家に帰りたい。
そのままトコトコ歩いてたら、いきなりのっちがゆかの前に立ち止まった。
「いきなりなん…ふにっ、」
のっちの細長い指がストールに埋もれるゆかの鼻をちょいと摘んで。
「ゆかちゃん、トナカイさんになっとる」
にひ、って子供みたいに笑った。
「…誰のせいだと思っとるん」
「うぐ、…ごめん」
触れられた所に熱が広がった気がして、思わずのっちの手を退けた。

お願いだから、そんな簡単に触れないで欲しい。
だってゆかの心臓がおかしくなっちゃうから。


「うわ、手冷たっ」
なのに。
「ごめんね、ゆかちゃん…」
はぁー、ってのっちがゆかの両手に息を吐きかけて、きゅっと握ってくるから眩暈がしそうになる。
「だ、大丈夫じゃけぇ離して」
「全然大丈夫じゃないじゃん。ほら、手繋いでたらあったかいじゃろ?」
確かにあったかいけど、繋がった掌から伝わる温もりがゆかの身体に広がって、ほっぺも耳もあっつくなっていくよ。
「で…でも、ゆかは平気だもん」
「ゆかちゃんは平気かもしんないけど、のっちのせいでこんなに冷えちゃったから、のっちが平気じゃないんよ」
こんな時、じっと真面目な目をして言うなんて狡い。
狡いじゃろ…。

「…じゃあ、駅までね…」
「駄目。ゆかちゃん家まで」
「………じゃあ、ゆかん家までだからね」
「うん」
ああ、やっぱ駄目だ。そうやって笑わないで。
ただでさえ心臓が煩いくらい鳴ってるのに、どくどく早打ちし過ぎて止まってしまいそうになる。
…だけど、確かに掌に感じるのっちの体温をいつまでも感じていたくて。
「真っ赤なおっはっなの〜トナカイさんは〜♪」
「もぉー、うるしゃいっ!」
家に着くまで少しも離れないように、ぎゅっとのっちの手を握っていた。
ついでに、叶わない想いも乗せて…。


END





最終更新:2008年11月29日 01:42