(N)
「…さむっ」
ずいぶんと冷たくなってきた風が体を通りすぎていく
結局、よう眠れんかった
少し寝不足の体に吹き付ける風がしみるよ
心まで冷やされる感覚
あー、しっかりせんと!
テレビ局へ向かう道
一人で歩いていると
「おはよー」
後ろから声をかけてきたのは、あ〜ちゃんだ
「あっおはよ」
「今日生放送緊張するねー間違わんようにせんとねっ」
「うん、そだね」
「のっち昨日やばかったもんねー。」
「…反省してます」
昨日は色々あったけえ
「なんか、心ここにあらずって感じじゃったよね。
…なんかあったん?」
あ〜ちゃんの言葉に一瞬戸惑う
あ〜ちゃんに、相談した方がいいんかな?
でも…そんなん、なんかなー
人の気持ちを勝手にばらすんて…なんかなー
それに、まだ本当にゆかちゃんが
のっちの事好きだって言う核心的なもんもないし
ただの仲間としてとかやったら、
のっちかなりアレだし
「…お〜いのっち、聞いとるん?」
思わず立ち止まってしまっていた
考えこんで返事すんの忘れてたのっちのほっぺを
つねりながら顔を覗き込むあ〜ちゃん
つねられてんのに全然痛くないや
あ〜ちゃんは優しいな
いつも周りの事に気使って
のっちのこと、ホンマに心配してくれてんだろうな
「ごっごめんごめん。大丈夫じゃけえ、」
「ホンマに〜?」
「ホンマに」
あ〜ちゃんはしかめっ面のまま
両手でそっと、のっちの頬を挟んだ
真っ直ぐ目が合う
あ〜ちゃんの目の中の自分が、はっきり見えた
「のっち、よう聞きんさい」
「あ〜ちゃんは、何があってもPerfumeが大好きじゃけえ」
そう言い放ったあ〜ちゃんは得意のどや顔で
「なんよそれー」
冷たくなってきた風を受けた頬に
被さったあ〜ちゃんの手は温かくて
心まであったかくなった
的を得てんのか得てないのかわからないその言葉に
少し救われた気がした
今のあ〜ちゃんは、あの時ののっちと一緒なんだ
不安を、取り除いてあげたいって思ってくれてるんだ
あ〜ちゃんの手に、のっちの手を重ねてギュっと握る
あ〜ちゃん、ありがとう
「のっちも大好きじゃけ、ぅぶっ!」
ほっぺをそのまま両側から押し潰して
「はは、変な顔〜」
そう笑うあ〜ちゃんに
のっちもつられて笑ってしまうよ
「ふふ、もうっ!ほらっはよ行こ」
「うわっなんねその言い草!立ち止まったんのっちじゃろーて」
「そうだっけ?」
ギュッと握った手はそのままにして
のっち達はまた歩き出した
(K)
「おはようございまーす」
楽屋につくと、すでにあ〜ちゃんとのっちがいた
今日はゆかが最後か
「ゆかちゃんおはよー外寒かったじゃろっ。ほいこれ」
そう言いながらあ〜ちゃんが何か差し出してきた
ホットココアだ
「わぁ!ありがとー。どうしたんこれ?」
「さっき来る途中にのっちと買ってきたんよ。」
…のっちと…?
そっか、一緒に来たんじゃ…
そう思うと心臓がぎゅって締め付けられた気がした
おかしいな、
こんなん今までならなんともなかったのに
「…ゆかちゃん?」
はっとして前を見ると、
あ〜ちゃんが不思議そうにゆかを見てた
ダメだ。こんな事で嫉妬して…バカみたい
「んーん、ありがと。のっちもありがとねっ。」
そうのっちに声をかけると
こっちを見てニヘラっと笑った
あ〜ちゃんとのっちに嫉妬するなんて
ゆかは本当にどうかしとるよ
いつもの事じゃん
こんな事でいちいち嫉妬しとったら、
心臓いくつあっても足りんくなる
今日は生放送じゃけえ
余計な事は感じんようにせんと
(N)
ココアを飲んでおいしいって笑ったゆかちゃんを見て
なんだかホッとした
なんか案外普通にできるかも
なんて考えてたら、ゆかちゃんに話し掛けられた
「ココアってなんでこんなにおいしいんだろねーっ」
「ねー。粉のまんまでも全然いけるよね」
うん、できる。できるよ!
「粉のまんまっ!…まーいけるっちゃいけるけど、
ゆかは液体にしてからの方が好きだな」
そう言ってまた一口
「えーのっちは粉大好きだよ。
カップの底に溶けずに固まったままのやつとか最高じゃない?」
「嫌じゃないけど最高ではないよね」
また一口
…さっき飲んだのにまた欲しくなっちゃった
じっと見つめると目があって
あったと思うとふっ…と反らされた
「そんな見んで…」
「え?」
よく聞こえなかった
「んーん…のっちも飲む?」
そっぽ向きながら缶を差し出すゆかちゃんに
なぜか心臓が跳ねた
飲み回しなんて珍しい事じゃない
それこそ、何百回としてきたことなのに
なんだろ今更だけど
恥ずかしいよ
「…いい」
「…ならいいけど」
なっなんだコレ
ヤバイ…のっちなんかおかしい?
今まで飲み回しなんてなんとも思わんかったのに
なんか変に意識しちゃうよ…
「あ〜ちゃんにちょっとちょうだーい」
「はい」
横からあ〜ちゃをがひょいっと缶を持ってく
「やっぱいくら飲んでもおいしー、」
本当においしそうに飲むあ〜ちゃんを見たら
我慢できんよね
「やっぱのっちにもちょうだいっ」
(K)
「やっぱのっちにもちょうだいっ」
そう言ってあ〜ちゃんから缶を受け取ったのっち
…あ〜ちゃんが飲んだら飲むんじゃん
ゆかからやったら飲まんかったのに
また、心臓がぎゅって
苦しくなった
…違う、のっちはただ飲みたくなっただけだよ
別にゆかよりあ〜ちゃんがいいとか考えとらんよ
こんなんでまた嫉妬とか…バカみたいじゃ
色々思いをめぐらせていると、
スタッフさんが呼びにきた
まだ心臓にまとわりつく黒いモヤをなんとか振り払おうと
「さて!今日も頑張ろう!」
そう2人に告げて1番に楽屋から出た
最終更新:2008年12月06日 01:59