きっかけは、些細なゲーム。
最近モテモテののっちに、嫉妬したあ~ちゃんが、
ちょっとした悪戯を仕掛けたのだ。
「のっち、最近ちょっと調子に乗ってるけぇ、
ここいらでがつんと見せてやらにゃぁ、いかん!
なっ、ゆかちゃん!」
「う、ん?」
(あ~ちゃんの言っとること、今日はいつにまして理不尽じゃねえ・・。)
でも、おもしろそうなので、うなずいてみる。
「まずは、ゆかちゃん!」「ん?」
「あの、ヘタレを甘やかしすぎじゃ!」
「ん~、そうかなぁ??
(あ~ちゃんのほうが、結局甘やかしてる気もするけど・・)」
「それ、今から禁止じゃから!」
「う、う~ん?」
「とにかく、しばらく、禁止!
あ~ちゃん、もう決めたけんよっ!
ヘタレを甘やかさんって、決めたの!」
(それって、完全な焼きもちじゃけどねぇ・・)
「ゆかちゃん、返事は?」「・・はぁ。」
「はぁ、じゃなくて、はい、じゃろ?」
「は、はい。」
「これから、あのヘタレをビシバシ鍛えるけぇ、
ゆかちゃん、見とってよ!」
- こうして、あ~ちゃんのとばっちりをうけたのっちは、
理不尽に冷たくされることになったわけだけども。
今日、ついに切れてしまった。
「もぅ、この間から、二人して一体何ねっ?!
のっちだってね、のっちだってね、・・・怒るけんね~だっ!」
「・・ね~だぁ?」
思わず、吹き出した!
「っ!お、お、怒ッとるんじゃからねっ!」
もう無理っ!
あ~ちゃんと二人爆笑しつつ、
手をつないで、控え室を飛び出した。
そのまま二人で、廊下を駆け抜ける!
「あっ、待ってよぉ、じゃなくて、まっ、待てー!」
廊下のつきあたり、あ~ちゃんとかしゆかは、顔を見合わせて、せぇので左右に分かれる。
あ~ちゃんは、そのままスタジオに、
かしゆかは・・、屋上へ!
「ああぁっ!」
のっちの間抜けな声が廊下に響く。
(本当にこれで、大丈夫なのかな・・??)
かしゆかは、急いで階段を登りながら、心の中でつぶやく。
(のっち、遅れたらいけんよ!
名誉挽回の機会?は、今しかないけぇね、
あ~ちゃんに、ここ数日のヘタレ修業の成果?を、みせちゃれや!)
階段を抜けると、屋上の扉が開いた!
扉を壁にロックして、
ライトアップされた屋上に上がる。
涼しい風が、かしゆかの火照った体を、ひんやりと包む。
「ふぅぅ、しばし休憩じゃね・・」
かしゆかは大きくのびをすると、そのまま首を後ろにそらした。
(はぁ、今日はお星さま、見えんねぇ。泣きそうな曇り空じゃ。。。)
見るともなく、ぼんやり夜景を見つめる。
(・・一体、なにやっとんじゃろ、自分は。)
怒ったのっちを思い出して、ちくり、良心が痛む。
(・・うん。まぁ、適当なところで戻ろ。
のっちも、そろそろ、あ~ちゃんを捕まえたころじゃろうし・・)
屋上の夜風は、少し、冷たすぎる。
(・・やっぱり、謝らねば、ねぇ。
寒さに耐えかねて、帰ろうとしたその時、
扉の奥に、見慣れたシルエット。
どくんって、鼓動が波打つ。
こっちに、むかってくるのは。
のっち?
のっちの、肩が大きくゆれてる。
「・・なんでっ?のっち」
「はぁはぁ、っ、えーっと、あ~ちゃんは、いつものこと、じゃけどもっ、
ゆ、ゆかちゃんは、ち、違うじゃろ・・」
「・・違う?・・違くは、ないよ。」
「違うのっ!」
駆け寄ったのっちに、ぎゅっと、抱きすくめられる
「ゆかちゃんに、避けられると、のっち、ほんま、に・・」
まだ息が切れている、吐息混じりの、声。
「ほんまに、困るんよ・・」
のっち、ふるえてる、の?
「ゆかちゃん、のっちのこと、嫌わんといて・・」
最後は、ほとんど消え入りそうに、つぶやいた。。
「・・ごめん、ね。」
ゆか、知らんかったよ。
のっちが、そんなに傷ついたこと。
それから、・・・のっちのカラダは、日向の匂いがすること。
こんなにあったかくて、こんなにやさしかったんじゃね。
ゆか、本当に、ひどいことしたんじゃね。
「ホントに、ごめんね・・」
のっちを、ぎゅって、抱き締めて、頭を撫でる。
「ぅぅん。もぉ、ええんよ。許しちゃげるけぇ。
のっちが手を差し出す。
(のっち・・。ゆか、は、ホントはね・・)
(・・一緒に戻りたいんよ。)
でも、唇は、心と反対の言葉を紡ぎだす。
「・・のっち、なんでこんなトコきたん?
早ぅ、行きんさい?」
「ゆか、ちゃん・・?」
「姫を怒らせると、後でゆかが大変なの。知っとるじゃろ?」
「で、でも・・」
「のっちの気持ちはわかったけぇ、もう、せんから!
だから、、、」
「・・・。」
「・・追い掛けて、きてくれて、嬉しかった。。。
もういいけぇ。。さ、急がんと?」
のっちの眼差しが、ゆれる。
差し出した指先が、戸惑っとる。。。
この、甘い時間を解く、最後の言葉、
「あ~ちゃんが、待っとるよ?」
これで、おしまい。
あたしは、のっちの、困った八の字を見たくなくて、
鼻歌混じりで背を向けた。「・・Perfect Star・・♪」
「・・うん。じゃぁ、いってくるけぇ。。?」
さっきの言葉、震えずに、・・、
ちゃんと、言えてた・・・?
もう、届かない、
つなげなかった手に、一粒だけ、
冷たいしずく。
あたしは、さりげなく天気を伺うみたいに、上を向いた
遠くの空を見るように、前髪に、指先をあてる
のっちが、まだ、心配そうに
何度も振り返って、ゆかを見てるから、
扉の向こうに消えてしまうまで、あと、少しだけ・・。
ぱたぱたと、のっちが階段を降りる、
足音が、遠ざかっていく・・・。
「、ふっ・・っ!」
乾いた空から頬に、
降り掛かる、大粒の、雨
ゆかだけに降る、しょっぱい雨
助けてって、泣いとるから。
ゆかは、曇り空なんて、大嫌いじゃ。
ホントの気持ちが、隠せないから。
唇が凍えているのは、寒さのせいじゃ。
ねえ、明日は、晴れてよね。
あったかい、お日さまとお星さまだけが、
ゆかの、味方じゃけぇ。。。
どうか、どうか
お願い、
じゃけぇね。。。。
とんとんと、
暗闇の階段から駆け上がってくる、二つの足音。
「・・って、ゆかちゃんは、ここにおるんじゃね?
のっち、早ぅっ!」
あ~ちゃんの、心地いいソプラノボイス。
二人は、息を切らせて走ってくる。
「ねー!信じられーん。
たいがい、一緒に来るじゃろ!
ゆかちゃんを置いてくるアホたれが、どこの世界におるんよ!」
あ~ちゃんが、のっちの頭をぐりぐりしながら、文句を言う。
「そお?ちょっと、うれしそうじゃけど・・?」
「・・なっ、何をゆっとるん、ゆかちゃんまで!ほーんと、信じられーん!」
あたしは、のっちと目を合わせて、笑いあった。
それから、のっちは恐る恐る、あ~ちゃんを見つめる・・。
で、また怒られとる。
「反省が、たりんのじゃ!」
「ご、ごめん、ほんまに、あのっ・・!」
ゆかは、もう大丈夫。
だって、当然じゃろ?
ゆかにはいつだって、
二人のとびきりかわいい天使が
ついとるのじゃもんね。
さぁ、帰ろう。
あたしたちの、スタジオに!
「・・あっ、扉が閉まっとる!?」
「ふん?閉めとったら、いけんの?」
「この屋上、防犯用に、外からは扉開けられんのよ?!」
「・・!!!」
「嘘じゃろっ!」
「の、のっち、なんで、扉閉めて来とんの!」
「だ、だって、そんなん知らんかったよぉ?」
「わかるでしょ、普通!
ゆか、さっきから、ずうっと扉開けとったでしょ?!」
「あ、携帯は?」
「控え室じゃけど・・?」
「のっちの、ばかっ!」
あ~あ、また、あ~ちゃんの雷が落ちる!
(・・こりゃぁだめじゃ。
こんなアホの子、到底ゆかの手にはおえんわ・・)
その夜、スタッフに救出された三人は、
もっさんに散々怒られましたとさ。
そう、女神もたまには、ミスをする。
こんな、星の見えない夜には、ね。
おわり
最終更新:2008年10月10日 04:10