SIDEーY
王女となった者へ
君がこの手紙を読んでいるということは一段落がついたということだろうか。
まず先に謝っておこう。
ほんとうにすまなかった。
僕は君を利用したんだ。
もう気付いているとは思うが、君のコドモ時代の記憶は消えていない。
何故だと思う?
僕は君の記憶を消す力を利用して皆の記憶から僕の存在を消す力に変えたんだ。
ほんの少しその力が足りなくて、君ひとりだけ僕の存在が記憶から消せないと計算上出ていたから、この手紙を読んでいる君は恐らく僕を覚えているだろう。
僕は最近嫌になっていた。
有名になっていく自分に。
有名になればなるほど楽しいこともあるが、辛いことも増えた。
何より人というものを信用出来なくなった。元からそんなに信じてはいなかったが…。
今の生活に嫌気がさしている時に、ちょうど君の儀式のための歌作りの仕事がやってきた。もちろん君の記憶を消すという話も聞いた。
そこで思いついたんだ。この力を利用できないかと。
僕は必死になって儀式の歌に関する本を読みあさり、連日連夜計算と作曲を繰り返し、あの歌を完成させた。
しかし君が自分のコドモ時代の記憶が消えると知ってしまったのは計算違いだった。
君が唄うのをやめてしまったらこの計画は潰れてしまう。
君にこの計画を教えようかと思った。
でも君だったら、僕のことでさえも忘れたくないと言い出すに違いないと思った。
そこで逆にそういう君の優しさを使ってプレッシャーをかけた。
国のため、国民のためなんだと。
これで君は必ず唄うと思った。
ある日の君の歌を聞くまで。
今まで君の歌声には迷いや不安が感じられた。
しかしあの日は違った。強い意志を感じた。
まさかと思って君にかまをかけたら、正直な君のことだ。顔に動揺が隠せていなかった。
ならばこちらから手を打とうと思った。
君のいつも側にいる二人が関わっていることは間違いない。
一人は神官、樫野由香は君と同様、あまり身動きはとれない。
もう一人は兵士、大本彩乃だ。
兵士を君の護衛兵にしておけば、君との接触が容易になり僕としても動きが掴みやすかった。
兵士たちの城の見張りをやめさせたのも僕だ。
僕は君たちの計画が順調に進むよう色々仕組んだ。
そして君たちは僕の思った通りに動いてくれた。
ここまですれば君は唄ってくれると思ったが、僕が思っている以上に君の意志は強かった。
最終手段として僕は銃を撃って脅そうとした。
大本彩乃を撃つつもりはなかったんだ。
どうやら君からもらったブローチのお陰で助かったみたいだが。
しかし当たりどころが悪ければ僕は殺してしまっていたところだった。
本当に申し訳なかった。
ここまで読んでくれてありがとう。
君は怒っているだろう。
君にあんなにオトナになれと言ったのに、本当はどうやってでも自分の願いを叶えたかった僕が一番コドモなのだから。
僕はオトナが偉いなんて思ってはいない。
コドモの方が発想が自由だし、考えも柔軟だ。
君は一国の女王としてコドモであるべきなのかもしれない。
もう君ともお別れだ。
君なりのやり方でこの国を治めるんだ。
僕は君の知らないところでまた有名にでもなっているだろう。
中田ヤスタカ
SIDE-A
「こんなん……」
全然信じられん。
でもあ〜ちゃんの記憶が残ってるのも確かだし、ゆかちゃんものっちもヤスタカのことをすっかり忘れてたのも確かだ。
「あ〜ちゃん!!こんなとこにおったん」
「ゆかちゃん…のっち…」
「ちょっと…あ〜ちゃんどーした?」
騙されていたのに、利用されてたのに、やっぱり別れはつらいよ…。
何も知らない二人の胸であ〜ちゃんはコドモみたいに大きな声を上げて泣いた。
TO BE CONTINUED...
最終更新:2008年12月10日 05:53