好きだよって、そうつぶやいて目を閉じた。
目を瞑ると思い浮かぶのは、彼女の顔ではなくさっきまでやっていたゲームの煌々とした画面。
あ〜ちゃんに、もうやめんさい、隈ができるよって諭されて、
二人ともなんとなくむっとしながらベッドへ入り、眠りに就いた。
それでも、好きだよって言った。だって好きだから。
- あ〜ちゃんは、言ってくんないからわかんないけど、のっちは好きだもん。あ〜ちゃんのこと。
だから、本当にびっくりした。
今のっちは目を瞑って、寝ていることになっているんだけど、実は起きていて。
ものすごく近距離から、さっき一緒に寝たはずのあ〜ちゃんのささやく声が聞こえる。
「ごめんね、のっち、ごめんね」
って、そう言ってるんだ。
ぎゅっと体を抱きしめられて、首の辺りにうずめられた顔が猫のするように摺り寄せられる。
何度も、何度も。
何か欲しいみたいに、何かをねだるように。
ごめんねって、ゲームのことかな。そんなんだったら全然いいのに。
本当はそう言ってあげて、彼女が心配してるならその誤解を解いてあげたいのに、
起きている間には絶対出会えないようなあ〜ちゃんの姿に、興味が湧く。
じっと体を強張らせて、あ〜ちゃんの深夜に溶け込む呼吸の音や、布と布の掠れる音に耳を澄ませた。
あ〜ちゃんの手は、のっちのおでこに延びてきて、優しく前髪をわける。
そこにあ〜ちゃんの唇が触れて、思わずどきっとする。
心臓が見えるものじゃなくて、よかった。絶対バレてたもん。
唇が離れて、つぎは頬に。何度もぺたぺたと、まるで指でつつくような可愛いキス。
「のっちー」
名前をささやかれて、体の芯が溶かされるような気分になった。
その声は透き通っているのに、どうしようもないほど甘ったるい。
「あ〜ちゃんも、好き」
言葉と同時に両腕で強く抱きしめられた。鼻先に彼女のふんわりとした髪の感触と、香り。
バレないかびくびくしながら、そっと背中に腕を回した。
「ん、どしたん、のっち」
あ〜ちゃんの面白がるような、子供をあやすような声がする。
のっちは寝たふりを続ける。
「可愛い子じゃねえ、好きだよ、のっち」
調子に乗ってのっちは、可能な限り寝ているような演技で、
「あ〜ちゃん、好き」
って言ってみた。
反応が返ってくるまで数秒。くすくす、と穏やかそうな笑い声が返ってくる。
「寝てるのに、あ〜ちゃんのことそんなに好きなん」
さっきとは明らかに違う、ちょっと大人の女の人みたいな声音。
それから、あ〜ちゃんとの距離が縮まって。唇が合わせられる。
あ〜ちゃんの唇が、のっちの唇を大胆な動きで覆う。
歯を舌で割られ、のっちの舌にあ〜ちゃんの舌が触れる。
あ〜ちゃんから、こんなキスは滅多にない。
唇が離れた瞬間、生まれた想いは興奮や欲情ではなくて。
ただ、穏やかに愛しいと想う気持ち。母親のてのひらのような安心感。
襲ってきた眠気に身を任せ、また眠りの中へ落ちていった。
end
最終更新:2008年12月10日 05:58