『このパンプス可愛いねぇ?』
雑誌に落としていた視線をあげ、彼女に問いかける。
『…ん?うん、ゆかちゃんに似合いそうじゃね!』
キラキラした瞳で見つめ返してくる私の王子様。
今日は久しぶりのオフ。
最近は今までみたいに気軽に外出も出来なくなりつつある私たち。
こうしてのっちの家でまったり過ごすのが、一番良いオフの過ごし方かな。
自然とぶつかる視線。
そして必然的に重なる唇。
『ん…、はぁ…。』
『のっち好き…。好きだよ…』
部屋に響くのは舌を絡ませる水音だけ。
ゆかとのっちしかいない、二人だけの特別な時間。
仕事が忙しいせいで、二人で会える時間はほとんどない。
『ゆかちゃん…はぁ…。』
のっちの唇が離れ、きつくきつく抱きしめられる。
ねぇのっち…
ゆかはのっちのことが大好きだよ。
苦しくて苦しくて、一人じゃうまく呼吸も出来ないよ。
のっちと両想いになれて、こうして結ばれて…
そして今二人でいられて、幸せなはずなのに…
ねぇのっち…
のっちも分かってるよね…?
私はのっちの背中にギュッと腕を回した。
side -N-
久しぶりのオフ。
ゲームをしたりマンガを読んだり、普段家にいるのと同じことをしているけれど、今日は違う。
隣には、彼女がいる。
自然に口づけを交わし、高まる熱を混ぜ合う。
『のっち…好き…。好きだよ…』
熱を帯びた彼女の声。
愛しくて愛しくてたまらなくなり、きつく抱きしめる。
でもねゆかちゃん…。
のっち達には、越えなければいけない壁があるんよ。
頭の良いゆかちゃんなら、分かってるよね…?
そう心の中で呟き終わると同時に、ゆかちゃんがギュッと背中に腕を回してきた。
うん…きっとゆかちゃんも同じことを考えているんだ。
『ねぇゆかちゃん…』
抱きしめ合っている腕をほどき、向かい合う。
私からきりだそう。
『のっち達の関係のこと、あ〜ちゃんにはどう話そう?』
『のっち達の関係のこと、あ〜ちゃんにはどう話そう?』
のっちの大きな瞳にじっと見つめられて、息をのむ。
私の言葉を待っているのか、表情を変えずそのまま私を見つめ続けるのっち。
『…ゆかも…ずっと考えてた…。』
私たちはずっと一緒だった。
ゆかとのっち じゃない。
ゆかとのっちとあ〜ちゃん。
あ〜ちゃんがいてくれたから、今の幸せな環境がある。
ゆかとのっちの大好きな人。
『黙ってるなんて…ダメだよね…。』
相変わらず、じっと見つめたままののっちに問いかける。
『そうだよね…でも…、でも…。』
『分かってる。分かってるよのっち…。ゆかも同じこと思っとるんよ…。』
また抱きしめ合う私たち。
現実から逃げるかのように、そのまま体を重ねた。
ほらね、やっぱり…。
鈍感な私でも悩んでたんだもん。
ゆかちゃんが考えてないはずないよね…。
『そうだよね…でも…、でも…。』
『分かってる。分かってるよのっち…。ゆかも同じこと思っとるんよ…。』
再び抱きしめ合った体は、もう離れなかった。
何も考えずに済む方法だから。
『のっち…のっち…んん…。』
現実から逃げている。
そんなことは分かっている。
でも、まだ大人になりきれない私たちにはこうするしかなかった。
私を暗闇の中から救いあげてくれたのは他の誰でもない、あ〜ちゃんだった。
ずっとずっと三人でやってきた。
あ〜ちゃんから放たれる光を頼りに頑張ってきた。
この『秘密』を話した時、きっと今の状態は音を立てて崩れていく。
ねぇあ〜ちゃん…
のっちとゆかちゃんね、あ〜ちゃんに内緒にしてることがあるんよ。
あ〜ちゃん…
だけど、ゆかちゃんへのこの想いをしまい込むことはもう出来んのよ…
私たちは、何かをかき消すかのようにそのまま何度もお互いを求め合った。
最終更新:2008年12月15日 13:49