「あ~ちゃん、ねえ。」
今日もこうして、しつこく近づいてくる。
3人でおると皆でワイワイ話しとる。
それでも、あ~ちゃんが一人になるとのっちはくる。
あ~ちゃんは忙しいけぇ、追い払ってはまた来るの繰り返し。
そのたびに垂れた耳と丸まったしっぽが見える。
「あ~ちゃん忙しいんよ。」
のっちに用があっても、あ~ちゃんはananを読むという用があるの。
「ねえ、ねえって。」
しつこい、しつこいんよのっち。
「なんよもう!」
少しは離れとって。
「あ~ちゃん」
あ~ちゃんはのっちに甘えとるんじゃね。
王子様は何回でも来てくれるって、うぬぼれてたんよ。
あ~ちゃんがテーブルに叩きつけた雑誌の音はとても大きかった。
なのに、ぽつり呟かれたのっちの声だけが脳に木霊しとる。
その声が暖かくなかったから。
「やっぱいいわ。」
嫌でもあわせてきた視線。
今は頑張っても交わらない。
「のっち?」
「邪魔してごめん。」
ああ、離れていっちゃう。
やっぱり離れないで、のっち。
行かないで。
あ~ちゃん今反応してあげたじゃろ。
ねえ、のっち、のっち。
戻ってきて。
「…あ~ちゃんのばか」
控室の扉の閉まる音。
のっちが出て行くのを確認してから、あ~ちゃんはあ~ちゃん自身に言う。
だってばかなんじゃもん。
でも、どうせのっちはまた来るんじゃ。
のっちはあ~ちゃんが大好きって、かっしーも言うとった。
あ~ちゃんは待ってればいい。
手のひらにあふれた 希望 理想
切り捨てられず タイムリミット OK?
「―あ、起きた?」
「…かっしー。」
頭が重い、テーブルに突っ伏して寝てたみたい。
「のっちはおらんよ。」
とろんとした脳は、かっしーの言葉で叩き起こされた。
かっしーはきっと全て察しとる。
でも、どうして?
それならどこにおるんよ。
「…廊下におる、漫画読んどった。」
が言うより早くこうして助言する。
ばっとかっしーを見ると、笑顔で頷いた。
かっしーはいつもあ~ちゃんをわかっとる。
王子様以上にな。
キスを待つ かわいい 眠り姫
待つな! 王子探せ タイムリミット OK?
「…OK。」
あ~ちゃんが行かなきゃいけないんじゃね。
いくら王子様でも、さすがにいなくなっちゃうな。
ガタンとイスが鳴る。
「かっしーありがと!」
ドアを開ける前、かっしーを振り向いた。
かっしーはひらひらと手をふってガッツポーズ。
あ~ちゃん頑張るけんね。
控室から出て曲がったところの隅に、あぐらをかいたのっち。
しかも、周りに漫画を散らかして、人様の所で行儀悪いわ。
じゃなくて…
「のっち。」
あ~ちゃんの声に、のっちは目を丸くしてこっちを見た。
同時に慌てて散らばる漫画をかき集め、立ち上がった。
「ね、のっち…」
シークレットメッセージ
タイムリミット OK?
10秒以内に どうぞ
「…のっちあのな」
「いや…急いどるけぇ。」
いや、急いどらんじゃろ。
だから待って、逃げないで。
もぉ恥ずかしいとか言ってられん。
はよつかまえんとほら、行ってしまうよ。
「少しも離れんで!そばにおって!」
あ~ちゃんのシークレットメッセージ。
のっちは抱えた漫画を全部放った。
「ほんと?おるおる!」
のっちは笑顔で駆け寄って、あ~ちゃんの手を握った。
立った耳とパタパタと動くしっぽが見える。
単純じゃな、今回はあ~ちゃんも単純だったけどな。
今回だけじゃもん。
好きってゆーのは、とっておくことにするかね。
次に王子様を繋ぐ首輪は、好き、に決定じゃね。
最終更新:2008年10月10日 05:07