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  • Side N-


心を縛る鎖を外した私は自分が思っていたより元気に毎日をすごしてる。

あれからあっという間に1ヶ月が経とうとしてる。
穏やかなでも何か物足りないような……、そんな日常。

『お疲れ様でしたぁ』

今日も仕事が終わり家路につくため楽屋を後にする。

先頭を歩く私の後ろに数歩遅れて二人が歩く。
何やら話に華が咲いてるみたいでキャッキャ言ってる。

ツキンッ。

少し胸が痛んだ。

彼女が幸せそうにしている。
そこに私がいなくても…。

あの日封印した想いはうっかり油断してると簡単に自己主張し始める。
何気ない日常の中、愛されたいと口にする事も出来ず。

少し強めに唇を結び下を向いて足取りを速める私。

『あっ、のっちさん。』

ん??

名前を不意に呼ばれ立ち止まる私。
声のする方に視線をやると、今日の共演者がいた。
N『あ、お疲れ様でしたぁ。』
今のタイミングじゃあまり愛想良く出来ない、そこはでもほらお仕事だからね…。

続けざまに後ろの二人も挨拶を交わす。
A『今日はお疲れ様でしたぁ。』
K『お疲れ様です。』
二人も立ち止まっている。
『あのぉ、これ…。』
何かを手渡された。
『急で申し訳ないんですけど良かったら遊びに行きましょう。あ、お二人もご一緒にどうですか?』
A『あっ、行きた〜い。』
紙を開いてみると携帯番号とアドレスが。

なんで私に??

あ〜ちゃんやゆかちゃんの方が圧倒的にそういう事は多いのに。

K『あぁ、遊べたらいいですねぇ。じゃあまた。』
突然の出来事に足が固まって動かない私の横を通り過ぎて行くゆかちゃん。
N『あっ、あの、じゃあまた…。』
ペコッとお辞儀をしてゆかちゃんの後に続く。
あ〜ちゃんは最後までお辞儀をしていた。
そのせいで出来た私達との距離を小走りで埋め私の横にならぶ。
A『ちゃんと連絡せんと行けんよ、友達作るチャンスじゃん!』
N『あぁ…、だよねぇ。でもなぁ〜。』
A『そんなん言いよるけぇ友達おらんのよ。』
N『だってぇ〜。』
K『めんどくさがり直さんにゃあ友達は出来んよ、のっち。』
N『ゆかちゃんまでぇ〜。』
K『ええ機会だし、リハビリだと思ってメールしてみたら?』


  • Side K-


おちゃらけて言ってみたけどホントは苦しい。
だってあの人は確実にのっち狙いだ…。
値踏みするように、確かめるように、あたしとあ〜ちゃんを交互に見てた。
最近はこんな事も珍しくはない。

でもこのタイミングではやっぱり辛いよ……。

のっちを見ると貰った紙切れを凝視していた。

連絡しないでっ。

心では言えても口には出せない。
K『まぁ忙しいし忘れてた事にしても問題ないかもね〜。』
A『ゆかちゃん!?』
N『……大丈夫かなぁ?』
A『ダメよのっち!ゆかちゃんもたきつけんのっ!』
N『ゆかちゃんが神様に見えて来たっ。』
A『……もう何言っても無駄じゃね。好きにしんさいや。』

なんでいちいちあ〜ちゃんの言う通りにしなきゃいけないの?

苛立ちが口をついて出そうになる。

単なる八つ当たりでしかないそれをあたしは必死で飲み込んだ。


前までのあたしなら少し胸が痛くなる程度で済んでた事も、今は苦しくて窒息しそうなくらい。
あの温もりを知ってしまってからは……。


どうしよう。


このまま何度こんな想いをし続ければ済むのか。

いっそひどく拒絶されてしまえば諦めもつくのかな。
出来れば……、願わくばあなたの温もりをもう一度感じたい。


  • Side K-


のっちは今ごろどうしてるのかな?
自宅のソファーに体を預けぼんやり考えている。

頭を離れないさっきの出来事。
きっとめんどくさがって返事はしてないはず。
でも、もしかしたら…。
そんな風に堂々巡りで1時間。
我ながら女々しくて笑いが出て来る。

そんなに誰にも渡したくないならいっそこの手で壊してしまおうか……。


私の中の黒い欲望が大きなうねりを作り出す。
嫌われるのだけは嫌だ…、でもそれ以上に想いを止められない。

今まで誰かをここまで欲した事はなかった。
どうしていいかわからない。

いや、どうするべきかはわかってるよ。


でも…。

止められない。


あたしはのっちにメールを送った。
「ひまなら遊びに来ない?」
指が震えてる。

そもそも返信があるかもわからない。
返信すらなければ絶望がまた我が身を焦がす。

でも、それでもただ見てるだけなんてもうタエラレナイ。

絶望すれば少しは頭も冷えるかな、なんて淡い期待も込められていたのに、そんな時に限ってのっちからの返事があって。
「行く行く〜。ひましてたんだよねぇ。」

ドクンッ!!

心臓が張り裂けそうに大きく一つ鳴る。

もう後戻りは出来ない。
言い訳に出来る逃げ口上もない。

今までのあたしの全てを失う時まであと少し……。

(続く)






最終更新:2008年12月21日 04:25