アットウィキロゴ
<side k>

「いい式だったねぇ」

一生に一度だからと、それはもう盛大に行われた。
派手なことが好きなあ〜ちゃんだからってのもあるけど
誰からも好かれてるあ〜ちゃんだから
たくさんの人が集まって
それは、楽しくあったかな式だった。

「うん、、、ほんと、よかったねぇ・・」

隣に並んで歩くのっちは、言葉少なめ、だ。

「それにしてもさぁ、、」
「「あ〜ちゃん、泣きすぎ!」」

同時にはもる。
瞬間、満面の笑みになったかと思うと
すぐにまた、曖昧な表情。


絡めた指先にぎゅっと力を込める。

見上げた夜空は
東京の小さな空には珍しく
星が瞬いていた。


すぐに、不安になっちゃうゆかにとっては
この瞬間ですら、奇跡のように思える。

仕事を続けていられること
のっちの傍にいれること、も。


すぐに熱が冷めてしまう
ゆかにとって、変わらず
想い続けられていること。


なにもかも、全てが奇跡なんじゃないかって。

今、頭上で輝いてる星たちだって
実際はもうすでに、存在してないのかもしれない、らしい。


だからこそ、こんなにキレイで
せつない気分にさせられるのかもしれないね。


昨日、お出かけから帰ってきたのっちからは
やわらかな“あの”お花のような香りが、微かにした。

−明日、話す

そう、のっちは言った。

ねぇ、のっち、なにを話そうとしてるの?


<side n>

今日の式は、ほんとよかった。
あ〜ちゃん、ほんと、幸せそうだったなぁ・・
うん、あのあ〜ちゃんが幸せになれないなんてあり得ん。


それにしても
もっとなんか、いろいろと思うんかなぁ
なんて思っていたんだけど
意外とたんたんと、自分の中で今日一日が過ぎていった。

こんなもんなんだな、なんて。

でもそれは、きっと昨日
ちゃんと区切りをつけられたからってのもあるんだろうけど・・


「のっち?」
「んー?」
「・・やっぱ、、、なんていうか、、複雑?」
「えっ?」
「あ〜ちゃんの、、結婚・・」
「なんで?」
「なんで、、て、、、式の途中から、なんか
 様子変、てか、おとなしかったし・・」
「あぁ・・」


あちゃ、また、ゆかちゃんを不安にさせちゃったかな。

思わず苦笑い。

「いやいや、そういうのは全然ないよ。
 大好きな親友の結婚式だもん。
ほんといい式だったって思ってる」
「…そう?」
「うん。たぶん、そんなふうに思わせちゃったのは、
もっと、こう、、どーんとなんかくるかな、て思っとったんだけど
意外と普通というか、、、て、普通?じゃだめか、、、
いやほんと、さ、素直に幸せになって欲しいなって思ったんよね」
「…そっか・・」
「・・もしかして、、、まだ、あ〜ちゃんのこと好き、とか思ってる?」
「いや、、そういうわけじゃ、、、ないんじゃけど…」
「コトバだけじゃ足りないかもしんなけど、、、引きずってるとか、
 そんなのは全然ないよ?それは、ゆかちゃんと付き合い始めてから、、
 …ううん、ゆかちゃんのこと好きになってからは、
 それは、ちゃんと整理できてること、だから」
「…うん、、、ごめんね、めんどくさい子で」
「えっ?なんで謝んのw
 てか、全然めんどうとか思ったことないしw」


肌寒い風が頬を撫でる。
けど
繋がれた指先だけは、あたたかい。


「ねぇ?」
「ん?」
「昨日、、、なんか、言おうとしてたじゃん?」
「あぁ・・・」
「なんなん?」



「あのさぁ、、、そろそろ、一緒に暮らさない?」
「え、、、」


<side k>


−…一緒に暮らさない?

ちょっとネガティブ思考になっていた自分にとって
思いがけないコトバ。

「・・いいの?」

ほんとは、ずっと思ってたんだ。
のっちと一緒に暮らせたら、、、って。
でももちろん、自分からそんなこと言えるはずもなく・・

「うん、、てか、もうそろそろさすがに、、ね。
 今だって、ゆかちゃん、半分くらいのっちとこで生活してるじゃん?」
「ま、、、そ、なんじゃけど・・」
「・・ダメ?」

全然ダメじゃない。けど・・


「でも、、急になんで?」

てか、なんでこのタイミング?


「いや、、、、急にってわけじゃないんだけど…」

自分でもヤになっちゃうな・・
素直に、「一緒に暮らしたい」って答えたら、いいのに・・

「…ほんとは、もっと早く言いたかったんだけど・・
 なんか、、、自分たちだけ、幸せになるのに気が引けて…」
「自分たち、だけ?」
「うん・・・あ〜ちゃん…
 いや、あんまりあ〜ちゃんて言っちゃうと
嫌な思いさせちゃうかもしれんけど…」

そう言うと、のっちは立ち止まり
ゆかに真剣に眼差しをおくる。

「・・のっちはさぁ、、、ゆかちゃんに
 愛してもらえて、、ずっと幸せで、、
 自負かもしれんけど、、、ゆかちゃんも、、そう、、、じゃん?」
「うん…」
「けど、、、あ〜ちゃんは、、ここまでくるのに
 いろいろ、、、あったじゃん?
 なんかさ、自分たちばっか幸せなのも、申し訳ない気がしてたのかな・・」
「…」
「けど、、ようやく、あ〜ちゃんもあ〜ちゃんの幸せを見つけたんだ
 って、思ってら、次に進んでもいいんだって思って・・」


<side n>

正直な想いを話したものの、あ〜ちゃんきっかけみたくなっていて
ゆかちゃんにヤな思いさせちゃってるかなって思った。

けど・・・・
そうじゃないんだよ?

「それに、、昨日。のっちが帰ったとき
 おかえりって言ってくれたじゃん?
 ま、当たり前なんだけど、なんか
 いいなぁって。ゆかちゃんがいるとこが
 のっちの“家”なんだなって。
 こういう生活が続けば幸せだなって
 素直に思ったんよね」

ゆかちゃんは、、、、しばらく黙っていた。


「・・・ほんとに、いいの?」
さっきと同じことを、聞いてくるゆかちゃん。

「もちろん。てか、ゆかちゃんが、、いいなら・・」

また、しばしの沈黙。。。

「なんか、、、気になることあるん?」
そう聞いてみると

「ゆか、、は、ずっと一緒に、、暮らしたいと
 思っとったけど、、、のっちは、そういうの
 あんまり好きくないのか、、なって・・」
「…どして?」

そんなこと言ったことあったっけ?

「・・だって、一緒に暮らしちゃうと
 “ひとり”でおれる時間が減っちゃうよ?」


<side k>

のっちにとって、ひとりでいれる時間てのは
きっと、とても大切なものだ。
のっちがのっちらしくいるために。。。

だから、生活の半分くらいが
のっちとこになっている今だって、
極力、“ひとりの時間”を邪魔しないようにしてきた
つもり、だ。

でも、一緒に暮らすとなるとそういうわけにも
いかなくなってきちゃう。

それでもいいの?


すると、のっちは
「あぁ、、そんなこと気にしてたんだw
 全然そんなのかまわないよ〜」
あまりに、さらっと答えるものだから
拍子抜けした。
「そんなふうに言うけど、、実際しんどいんじゃない?」
「う〜ん、、どうなんだろね?なんとでもなるんじゃない?
 それよか、のっちはこのままの状態じゃ、ヤだな。
 ゆかちゃんと、ずっと一緒にいたいもん」

あまりにストレートなコトバに
心臓がきゅんと締め付けられて。。。

やっぱ、自分ひとりで
考えすぎてちゃダメだね・・

−のっちは、大切に想っとる人の想いは
どんな想いでも、ちゃんと受け止めてくれるよ。

いつだかの、あ〜ちゃんのコトバが蘇る。

うん、ほんとにそうだね。

これからは、自分の中で抱えるだけじゃなく
コトバにしていかなきゃなぁ・・


なんてあれこれ、思いをめぐらせてると

「・・ゆかちゃん?なんか答えてくれんと、
 のっちさっきから、心臓ばくばくで
 死にそうになってんじゃけど・・」

あ、のっちの眉がハになってる。

そりゃ、このタイミングで黙っちゃうと
心配にもなるよね。


「ごめんごめんw
 うん、ゆかもずっとのっちと一緒にいたい。
 一緒に暮らそう!」


<side n>

「一緒に暮らそう!」
そう言って、ゆかちゃんは
ようやく、最高の笑顔を見せてくれた。

よかったよぉ。。
一瞬、断られるのかって思ったじゃんか・・

「じゃ、次の休みにでも新しい部屋
 探しに行こうっか〜」
「うん、行こう行こう」

ぎゅっと、手を繋ぎなおして
再び、家をめざして歩き始める。


「あ、ねぇねぇ。ひとつ聞いていい?」
「なに?」
「ゆかたちが一緒に暮らすのは
 同居になるの?それとも同棲?」
「もちろん同棲です!」
「女の子同士、でも?w」
のっちを試すように
いじわるな笑顔で聞いてくるゆかちゃん。
「うん。だって、ちゃんと愛があるんだから。じゃろ?」
「うん、だねw」

繋いだ指先から
ゆかちゃんの喜びが伝わってくる気がした。


あぁ、なんて幸せなんだろう。

ふと見上げると
めずらしく満天の星空だった。

これからもずっと
のっちの隣には
ゆかちゃんの笑顔がありますように。。。


その中でも一番大きなお星様に
そっと、願いをかけた。







最終更新:2008年12月23日 01:17