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  • Side N-


ゆかちゃんからのメール…。
さっきの共演者さんから貰った紙と携帯を交互にずっと見ていた。
だからすぐに気付けた。

今日は眠れそうになかったからちょうど良かったんだけど…。

仕方ない…、軽い仕事モードに切り替えて理性を保ってけば大丈夫。

少し重い腰をあげるためにお気に入りの洋服に手をのばす私。
普段、メンバーを素直に褒めてくれないゆかちゃんが絶賛してくれたそれ。
通販の宣伝用ムービーで着たあのネクタイの服。
ゆかちゃんにベタ褒めされたのもあってかなりお気に入りな一着で、お買い上げしちゃったんだよね…。
褒められて有頂天になっていた自分を思い出し思わず苦笑いしながら颯爽と変身する、戦闘服に身を包む戦隊モノのヒーローみたいに。
仕事で着た事もあって少し気持ちも引き締まる。

これなら演じきれそうだ……。

ネクタイを自分でするのは慣れてなくてちょっと変だけど気にしないっ気にしないっ。
どうせそんなとこまで見てないんだろうし……。

自分で自分のネガティブさが嫌になりながら自宅を後にした。


  • Side K-


ピンポーン。

チャイムが鳴る音にあたしは軽く力が入る。

もう引き返せない…。

ドアを開け中へとのっちを通し二三、言葉を交わした。
頭では別の事を考えながらそれを悟られまいと必死で、何を話したかなんて覚えてない。

肉食獣が草むらに身を潜めそっとじっとその時を待つように、あたしも呼吸を整え隙を伺う。

K『そう言えば、メール送った?』
今の繋がりは自然だっただろうか?
頭を過ぎるのはそんな事ばかりで。
N『メール?…あぁ。いや…忘れてた……。』
苦笑いをする彼女に愛しさが爆発しそうになる。
まだダメ。

必死に欲望を押し止める。
K『本気で忘れてるなんてね…。可哀相に。』
肩をすくめ、呆れたフリをして見せる。
ホントは嬉しくて仕方ない。のっちにとってその程度の相手なんだとわかって。
N『だっ、だってさぁ〜。』
のっちがネクタイを手に取った。彼女特有の手遊び。

少し冷静さを取り戻せたあたしの目に下手くそな結び目が飛び込んで来た。
さっきまで頭を支配する欲望を抑える事に必死で気付かなかった。

これものっちらしくて思わず視線を胸元にやりながら笑ってしまっていた。
K『……ふふふっ。』
N『ん?…あ、あぁこっこれはっ。』
慌てて結び目に手をやるのっち。
K『貸して、ゆかが結び直してあげるよ。』
N『あ、ありがとう。』
下手くそな結び目に照れ臭そうにつぶやくのっちをよそにあたしは迷わずネクタイをほどいた。

K『一人で出来んのなら着て来んさんなや。』
N『だよねぇ……。』
しゅんと軽くうなだれたように見えるのっち。
ネクタイを直すため気付けばのっちの顔が近くにある。

あぁ……。
この距離で見るのはいつぶり…?

N『どうかした?』
じっと見つめるあたしに不思議がるのっち。
K『ん…?どうもせんよ。』
慌てる事なくただ目を伏せるあたし。

シュルルッ。

ネクタイが滑って首スジから外れるきぬ擦れの音。
あたしの中の欲望が吹き出る合図の音。
それがやけに心地良くてうっとりと酔ってしまう。


始まる。


K『のっち……。』
熱っぽく呟くあたし。

ごめんね、のっち……。


ネクタイを片手に持ったまま、彼女の顔を両手で包み込む。
N『え?ゆ、ゆかちゃっ!?』
あたしの名を呼ぶ愛しい人。
聞きたくなくてキスで唇を塞ぐ。
お願いだからあたしの名前は口にしないで。
じゃないとひどい事出来なくなっちゃうから……。

N『んんっ!』
何か言ってる。
あたしの両手にかかるのっちの手の強さに戸惑う。
そんなに拒絶しなくても…。
そんなにイヤ?
だったらもっと……、悔しいからもっとイヤがる事してあげる。

キスに気を取られ油断してるその隙に持っていたネクタイで素早くのっちの両手を縛り上げる。
N『なにするん…っ!』
K『……さぁ?なにするんだろうねぇ。のっちは何を想像してるの??』
見下ろし冷たい笑いを一つ。

両手を縛られ顔の前で構えてるのっち。
それは祈りを捧げ許しを請うてるようで、あたしの心を強く傷付ける。

もう戻れないなら何もかも壊してしまえばいい。
のっちを壊してあたしの心も壊れてしまえばいい。

K『大丈夫よ、ちょっと気持ち良くなるだけよ。』
怯えるのっちに最後の優しい口づけを落とした。

(続く)







最終更新:2008年12月23日 01:19