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あぁ、今日も疲れたなぁ。

それでも
大好きな人が待つ部屋に向かう足取りは軽い。
右手には、アイスが入った袋をぶら下げて。
こんなに寒い冬だって、関係ない。
ゆかちゃんの大好物。

それに今日は・・・・
いかんいかん、にやけてきたw


「ただいまー」
ん?なんか変だ。
いつも出迎えてくれる
「おかえり」が聞こえない。
どうしたんだろ?
不思議に思いながら部屋に入ると
ソファに腰をかけたゆかちゃんがいた。

が、なんだか様子が変だ。

「ただいま。…ゆかちゃん、どうかした?」
そう言って、俯いた顔を覗き込むと・・

…背筋が凍りついた。

ゆかちゃん、、、、怒ってる・・・


「のっち?」
「は、はい・・・」
思わず、ゆかちゃんの前に正座。
「先週の休みの日、どこ行ったって言ってたっけ?」
えっ・・・
「・・・買い物、、、とか、、、ですかね」
「そだよねぇ、、、ぶらぶらしてたぁって言ってたよねぇ。
 “一人”で、ぶらぶらしてたって」
      • やばい
「・・・言って、、た、たですか、ね、、ぇ」
「なんで、目泳いどるん!?ちゃんとこっち見んさい!」
「は、はい!ごめんさいっ!」
こ、怖い…これは最高級に怒っとるときの目、だ。
「・・その“ごめんさい”は、
 何に対しての“ごめんなさい”なの?」
「えっ、え、えっと、、その、、、」

これはきっと
バレてるってことだよね?
バレてるけど、
勘違いしてるみたいだ・・
だから、その
えぇーー!
なにをどっから、どう話せばいいの!?


完全にパニック状態に陥って
金魚みたく口をパクパクしてるのっちに

「“一人”じゃなかったんよね?」
ゆかちゃんの低い声が響く。
「・・うん」
「誰と一緒、、だったん?」
「えっとー・・・

ちらっと、ゆかちゃんを窺うと
−えっ!?泣いてる!

さっきまで怒りに満ちていた瞳に
涙が溢れかえっていた。

「ゆかちゃん!?」
「・・ほんま、だったんじゃ…
 のっちとキレイな人が一緒にいるとこ見たって聞いて…
 人違いだって、なんかの間違いだって…
 思ってたのに…ほんまだったんじゃ・・・」
そう言うとゆかちゃんは
堰を切ったように泣き出してしまった。
「えっ、ご、ごめん!
 でも、ゆかちゃんが思っとるような
 そんな、やましいことはないけぇ!」
「じゃぁ、なんで嘘なんかつくんよ!
 なんもないんじゃったら、嘘なんかつかんでいいじゃろ!」
「そ、それっ、は、そう、、なんじゃけど・・」

全く反論のしようがないです、はい。
が、もちろん、理由もなく
あたしは、ゆかちゃんに“嘘”なんかつかない。

「…のっちぃ、、ゆかのこと嫌いになったん?」
「はっ!?ないない!
んなこと、あるわけないじゃろ!」
「…うぅ、、じゃぁ、、、どういうことなんよぉ・・」
泣きじゃくるゆかちゃん。

あぁ、もう・・・

「ちょっと待って」

仕方ないっか。


<side k>

あぁ、もうなんなんよ…
わけわからん。
だって、もうわかっとるんよ?
楽しそうに、誰か、と
指輪を選んでたって。


目の前で、がさがさと
カバンをあさるのっちを見ながら、
自分がどんどん、悲しみに落ちていくのがわかった。


すると、のっちは
「えっと・・・ほんとは、
誕生日に渡したかったんじゃけど」
そう言って、小さな箱をゆかに差し出した。

あっ・・・

「あのね、あの日はさ、これ買いに行ってて・・」
「…これって」
「あ、うん」
照れくさそうな、のっち。
「開けて、いい?」
「もちろん!」

その箱を受け取り、そっと開ける。

うわっ

中には、キラキラと光る指輪。
「超かわいい!」
「でしょ?よかったぁ、喜んでくれて」
「でもこれ、、、、かなり高価、だよね?」
「うん、まぁ、、、お手軽なお値段ではなかった、、かな」

「でもね」
とのっちは、続ける。
「どうしても、ちゃんとしたのをあげたくって」
「えっ?」
「いやぁ、もう一緒に暮らし始めて、ずいぶんと経つじゃん?
 だから、、なんと言うか、けじめをつけたいというか…
 何が変わるの?って言われるかもしれんけど」
ぎゅっと手を握り締められる。
真剣でやさしい眼差しが、ゆかをとらえる。

「のっちたち、“家族”になろう」
“家族”?
「ほんとだったら、結婚してくださいってとこなんだろうけど・・
 それはさ、、やっぱ、無理じゃん?
 けど、のっちはゆかちゃんと一生連れそいたいし。
 この指輪は、その証みたなもん、かな」

やばい・・
「…それって、、“プロポーズ”だと思っていいん?」
「うん、そう」
嬉しすぎて、どうにかなっちゃいそうだ。
「ゆかが、お嫁さん?」
「うん。あ、のっちが嫁でもいいけど」
「えぇー、ゆかがいい」
「じゃ、のっちがダンナさん?」
「うん」

わぁー、幸せすぎて、ゆか絶対にやけとる。

「・・ゆかちゃん?今のが“答え”だと思っていんだよね?」
「もちろん!」
「よかったー」
のっちも満面の笑み。
「ねぇ、これつけていい?」
「うん。あ、てか、のっちが−
そう言って、のっちは、ゆかの左手薬指に
指輪をはめてくれた。

「どう?気に入ってくれた?」
「うん、もちろん!一生大切にする!」
「ほんとよかったー。超まじ真剣に選らんだんだから」
「ありがとう」


もう最高!


あれ?
でもなんで・・・・


「…のっちぃ、、これ買いに行ってたってのはわかったんじゃけど・・
 なんで、嘘ついてたの?てか、それこそ誰と一緒だったん?」
「あぁ、それは・・」
のっちは、まいったなぁというように
「やっぱ、内緒ていうか、サプライズにしたかったし」
うん、それは、わかるよ。
問題は、誰かと一緒だったってこと。
「一生に一度のもんだから、ゆかちゃんに最高に似合うのあげたいじゃん。
 もちろん、サイズはわかっとるよ。でもさ、こう、、手とか指の感じ?
 見た感じよくても、つけてみたら何か違うとかあるじゃん?
 そんなこと考えてたら、あのぉ、、、、スタイリストの−さん、いるじゃん?
 その人の手が、ゆかちゃんのと雰囲気が似てたんよ。
 だから、、、ちょっと、協力してもらおうか、、、な?って」
「はっ?」
のっちのあまりの発想に、驚いた。
「わかってるって!バカな考えだって。
    • だからそんな目で見んでや」
呆れてなんも言えないでいると、のっちは続けた。
「それに、ここの店、めっちゃかわいくて
ゆかちゃんに似合うと思ったんだけど
 一人では行きにくいなぁって思って。
 第一、女一人で、必死に指輪物色してるって
 なんか、恥ずかしいし・・・とか、まぁ、
 いろいろ考えたあげく、彼女に、付き添いをお願いした、と」

めちゃくちゃだなぁ、と思ったけど
でもなんか、のっちらしいような気もした。

「あ、でも、彼女にはちゃんと“大切な人”へのプレゼントだ
 とは、言ってあったし。手だって、あくまでも参考程度で。
 そこに、のっちの最大限の想像力をフル稼働して
 ゆかちゃんに似合うって思ったのを−
「もういいよ。もう怒ってないけぇ」
「・・・ほんと?」
「うん」

ぎゅっとのっちを抱きしめる。

「のっち、ありがと」
「こっちこそ、ありがと」
「え?」
「“プロポーズ”、受けてくれて」
「あぁ、、うんw」


そっか、、、これからは、家族になるんじゃねぇ。


「はぁ、、、でもよかったぁ」
「なにが?」
「いやぁ、指輪。ちょうど今日、受け取りに
行ってきたとこだったの」
「あ、そうなんだ」
「でも・・・」
「でも?」
「こっちはもうダメかも」


のっちが指差した先には
ゆかの大好きなアイス屋さんの袋。


残念ながら、アイスはもう
食べられる状態じゃなかった。


「あららぁ、、残念じゃねぇ」
「ごめん、せっかく買ってきてくれたのに…」
「ん?また買ってくるけぇ、がっかりせんでw」

あぁ、のっちはやっぱ
どこまでもやさしい。

この人の愛情を独り占めできている
ゆかはきっと、世界一の幸せモノ、だ。


「のっち?」
「ん?」
「アイスのお詫びに、次の休みに一緒に買い物いこ」
「それってお詫びって言うの?w
ま、いいけど。で、どこいくの?」
「う〜ん、、、おしえないっ!」
「えー、なにそれ〜」


    • どこって
お揃いの指輪を買いに、に決まっとるじゃろ?

だって、ゆかたち“家族”になるんじゃから。


これからも
何度だって、おかえりなさいって言うんだ。
ゆかも、のっちがいるから
このうちに帰ってくる。

のっちにとっても
そんなうちであるように。。。

“おかえり”と“ただいま”を。

“ありがとう”と“ごめんなさい”を。


そして、いつまでも変わらない
大好き、を。


ずっとずっと
二人で紡いでいこう。


その先にあるのがきっと
二人の、愛のカタチ、だね。








最終更新:2008年12月23日 01:40