アットウィキロゴ
<side n>

「ごめんなさい・・あのぉ、、、今は
 大切に想ってる人がおるから、、うん・・
 ごめんなさい。。。」
「いえ、いいんです。わかってますから」
「…」
「・・・やっぱ、あ〜ちゃん先輩です、、か?」
「えっ?」
「いえっ、すみません。余計な詮索ですよね。
 ありがとうございました。ちゃんと答えてくれて。
 先輩が卒業するまでに、キモチにけじめつけたかったんです」


そう言って、目の前の女の子は、
目を真っ赤にして、ぺこりと頭を下げ
のっちの前から、走り去った。

はぁ・・

大きなため息が一つ。

真っ白な息とともに消えていく。

最近、こんなのばっかだな・・
いったい、こんなのっちのどこがいいんだか?
ほんま、ナゾだわ…


−あ〜ちゃん先輩です、か?−
さっきのコトバを思い出して、苦笑い。

そんなにわかりやすかったんだな、、、
ま、そっかも、ね。


ヒューっと
冷たい風が、通り抜ける。
思わず、身がすくみ、視線が足元に落ちる。
いかん、いかん。
ぐっと、天を仰ぐ。
夕暮れの空は、セツナイほどきれいだった。


あ。

ふと、教室の人影に視線が移る。

ゆかちゃん、だ。

夕日が反射して、はっきりと表情はよみとれない
けど
ヒラヒラと手を振っている、その姿は
きっと、やわらかな笑顔だね。

−お・つ・か・れ・さ・ま

聞き取れはしなかったけど
唇の動きで、そう言ってるような気がした。


今の、見られてたんだろ、、、な。

ヒラヒラと、手を振り返す。


彼女の、長い指が
下向きに指差す。

下りてくから、待ってて、、、てことだろう。


親指と人差し指をくっつけ、OKサインを送った。


<side k>

別に、覗き見なんて
そんな趣味の悪いことするつもりなかったんだけど。

一緒に帰ろうっかなぁ
そう思って、のっちを探してただけ。

すると、ふと、窓の下、中庭。
のっちと見たことない女の子の姿。


上からじゃ、表情までは見えんけど
ぺこりと頭を下げるのっちの眉が
この上もなく、ハの字になってるであろうことは
容易に想像できた。


女の子が立ち去った。

先週は同級生の男の子だったっ、、、け?

卒業間近。
みんな、のっちのあの
大きな瞳にうつろうと必死なんだ。

こんな光景を目にしたのは、
もちろん初めてではない。

きっと、ゆかが知らないとこでも・・・


初めの頃は、、茶化して笑い飛ばせたのに。

最近は、ただただ苦しくなるだけ、だ。

そう、自分の
ホントのキモチに気付いてしまって、からは。


空を仰いだ、のっちと目が合う。

できる限りの笑顔で手を振る。

うまく笑えてるだろう、か?


−おつかれさま・・・
そう呟く。。。ゆかが、言うことでもないんだけど・・
いいや、きっと、のっちには聞こえない。

手を振り返してくれた、のっち。
たまらなく愛しくて、すぐにでも抱きしめたい。

なんて
叶いもしない願い、だね。

−下りてくから、待ってて。
そう合図して、すっと
教室をあとにする。


一歩一歩、階段を駆け下りていく。
少しずつ、切り替えていくキモチ。

吐き出す、白い息。
その一つ一つに、決して
届けることのできない想いをのせていく。

自分の中にとどめておくには
苦しすぎるから・・

白い息と一緒に
この空気に溶けて、消えてしまえばいい。


<side n>

下駄箱で、しばらく待ってると
ゆかちゃんがやってきた。

「おまたせ」
「うぅん、てか、そんな急がんでもいいのに」
少し息の上がった姿をみて、自然と笑みがこぼれるのがわかった。
落ちていたキモチが、すっと軽くなる。

寒さのせいか、紅くなってる頬。そして、鼻のあたま。

自然とのびる指先。
ぷにっと、その頬に触れる。

「な、なにしよん!?」
「えぇ、ゆかちゃんのほっぺた超やおいw」
「やおいって・・・答えになってないし!」


ずっとずっと昔からあった姿のはずなのに
いつからこんなに愛しくなったんだろ?


二人並んで歩く帰り道。
ほんとに、あと少し、あと少しなんだ。
手を伸ばせば、触れられる距離。

今より、ちょっと
まだコドモだったころは、
何も考えずに、じゃれあえたのにね。

いつからなんかな。
この微妙な距離にもどかしさを感じ
どうしたらいいのか、わからなくなって・・
それでも
どうにかして、もっともっと
近づきたいと思うようになったのは・・

二人の間を吹き抜ける、冷たい風。
この距離を埋められたら、
少しはあったかくなれるのかな?


「相変わらず、もてもてじゃね」
ゆかちゃんのコトバで我に返る。

「もてもて、、、ていうんかね」
「もてもてじゃなかったら、
この告白ダッシュはなんなんですかね?」

相変わらず、意地悪なキミ。

「う〜ん、、、たとえモテてたとしても関係ないよ。
 自分が、想ってる人に、想われんと」

そう、ゆかちゃん、、キミに。

「のっちもさ、、、ちゃんとコトバにすればいいんよ。
 きっと、伝わるはず、だよ・・・」

吹き荒ぶ、風が
心臓にまで沁みて、ぎゅっと締め付けられる。

イタイ、、、イタイよ・・・

だって、それって
のっちは、ゆかちゃんにとって
そういう存在でないってことでしょ?


「・・・そっかなぁ…
 だと、、いいね・・」

そうコトバを紡ぐので精一杯だった。

見上げた夕日は
全てを燃やし尽くしちゃうんじゃないかってくらい
真っ赤だった。

この想い。
全て燃えてなくなっちゃえば
楽になれるのかな?


<side k>

外にでると、想像以上に寒かった。
けど
さっき、のっちに触れられた頬だけ、、、熱い。

ひっついてるわけでもないのに
さっきから、心臓はありえないくらい
ドキドキしてる。

すれ違う恋人同士のように
触れ合うことができたら
どんなふうになってしまうんだろか?

最近のゆかは、ほんとにおかしい。
今だって、ほら
「相変わらず、もてもてじゃね」
こんな会話したいわけじゃないのに・・
ココロと裏腹なコトバばっか、溢れてくる。

「ちゃんとコトバにすればいいんよ。
 きっと、伝わるはず、だよ・・・」

誰に?

ほんとは、伝えて欲しくなんかない。

ゆかのものにならなくたっていい。
だから、せめて
誰のものにもならないで。。。


なんて、、ズルイんだろ。

あの子たちのように
想いを伝える勇気すらもってないくせに・・

ちゃんとコトバにできないのは、ゆかだ。


隣を歩くのっちに視線を向ける。
真っ赤な夕日を見上げたのっちの横顔は
とてもキレイで・・
でも、すぐにでも消えてなくなってしまいそうな
儚い表情にも見えて・・


思わず泣きそうになるのを
ぐっと堪えた。


いかないで。
どこにもつれていかないで。
ずっと、一緒にいたいの・・


引き止めるかのように
無意識に手が、のっちの腕に伸びる。

びっくりしたようにのっちが振り向く。

ごめん。
そう言って、手を引っ込めようと思った瞬間。


ぎゅっと、手を握られた。
戸惑うキモチと嬉しさで
わけがわかんなくなった。

けど、ぎゅっと握り返した。



二人とも何も言わずに
木枯らしの中、寮までの道を歩いた。

繋がれたこの体温だけが
リアルに感じられた。

夢のようにも思われた。


ねぇ、のっち。

ゆかたちは、どこに向かってるんだろね?







最終更新:2009年01月13日 10:22