「ヤダ。」
格闘し続けること数分。
針はもうすぐ24時を指す。
依然ゆかの服は強い力で掴まれている。
「や…戻らんと。」
ゆかには甘えん坊なお姫様、ゆかがいないと寂しさで溶けちゃうんだって。
「嫌、いて。」
同じやり取りが繰り返される中、あやちゃんの声は甘くなっていく。
「寮夫さんに怒られるけぇ…」
頭にガンガン響く甘い痛み。
ゆかも離れたくない。
けど、怒られるんはキツイんよ。
困り果てるゆかをよそに、あやちゃんは立ち上がる。
「かっしぃ。」
猫撫で声で囁いて。
ぎゅぅとしがみついてきた、ふわふわで柔らかな体。「もぅ……」
甘い香りがゆかの鼻を抜ける。
あったかいあやちゃんの体には抵抗なんかできない。
それどころか欲求をかきたてられる。
案の定、ゆかは欲求に負けて背に腕を回す。
「帰らんよね。」
って、上目づかいでゆかを見つめてくる。
赤いほっぺはイチゴみたいで、食べちゃいたい。
「帰ら…ん、もぅええよ。」
ゆかはあやちゃんに弱いけぇ、あやちゃんもそれを知っててゆかを振り回す。
でも、ゆかにはそれがカイカン…かも。
だって可愛いお姫様のお気に入りなんて、光栄じゃろ?
「かっし、顔赤いっ。」
けらけらと笑って、あやちゃんは肩に顔を埋めた。
ゆかの頬をあやちゃんの髪がくすぐる。
「あやちゃん。」
ゆか、もうダメ、かも。
イチゴみたいなほっぺが、頭から離れん。
あやちゃんは呼びかけにゆっくり顔を上げた。
ピンク色のぷるぷるな口唇に、イチゴも健在。
顎に手をかけて、そっとそっとくちづける。
「ん…」
微かに漏れたあやちゃんの声。
キスしている時のあやちゃんは、反則的に可愛い。
その表情を一目見たくて。
そっと目を開いた先には綺麗な茶色、あやちゃんの瞳。
「――わ」
見られていたのは、ゆかだった。
あやちゃんは驚いてのけぞるゆかの肩に手をかけて。
そのままゆかたちは、ベッドに沈みこんだ。
「見ようとしたじゃろ。」
あやちゃんは馬乗りになって、勝ち誇った笑みを浮かべてる。
「あやちゃんも見とった。」
「あ~ちゃんは監視、かっしーは盗み見。」
あたしの反論をピシャリとはねかえすと、同時に顔がぐっと近づいた。
「お仕置きする?」
「嫌じゃ。」
「なら―」
あやちゃんは耳元で囁くと、ゆかの反応を面白そうに待った。
「それがいい。」
心臓ばくばくになったゆかが一言。
それに対してあやちゃんは一つ笑った。
とーっても妖しげに。
それから一瞬離れて、咬みつくようなキスをされる。
あやちゃんの甘い香りと、甘いキス。
そんな甘すぎる毒に脳が痺れる。
たまには可愛がってもらうのも、悪くないかも。
あやちゃんは、実はゆかに負けんくらいの策士かも知れん。
――甘い夢をみる?
お姫様の殺し文句。
ゆかはもちろん瞬殺じゃった。
あやちゃんが誘う夢の扉、誰かが来る前にコッソリ入って、鍵かけた。
最終更新:2008年10月10日 13:49