Side N
「のっち、ニヤケ過ぎ。」
翌日、大学で会った早々。ゆかちゃんに言われた。
「そ、そう?かな。普通なんだけど、な。」
「全然、普通じゃないでしょ。それ。」
「…すみません。」
ホントは自分でも知ってるんだ。昨日からずっとニヤケてるって。
「だってさ〜。なんか嬉しいんだもん。」
「幸せだね〜。私まで嬉しいわ。でも、そんなんじゃ、あ〜ちゃんの歌聞いたらどうなることやら。」
「え?そんなに上手いの?」
「そりゃー、もう。のっちも上手いけど違う上手さがあるかな。
そうだなぁ…、のっちの歌が真っ直ぐだったら、あ〜ちゃんの歌は広がる感じかな。」
ふぇ〜、どうしよう。早く聞きたくなってきた。
「あ、そういえば。ちゃんとあ〜ちゃんに、私が行くって言ってあるんだよね?」
どきっ。すっかり忘れてた。
「ぇや、それがまだだっりして…。」
「な〜にやってるのよ。そこはちゃんと伝えておかなきゃでしょうよぉ。」
「あぅ〜。だってさ?なんとなく言い辛かったんだもん。」
「変に、考えすぎだよ〜、のっちぃ。普通にしてくんないと、私が話し辛いじゃん。」
「うん。解った。ちゃんと伝えておくよ。」
ゆかちゃんは大丈夫みたいだけど、あ〜ちゃんはどんな風に思ってるんだろう?
嫌いで別れたわけじゃないから、きっとまだ好きなんだと思うけど。
ゆかちゃんが気にしちゃうと思って、話してこないのかな〜。
だったらやっぱり、今回のカラオケで距離が戻ると良いな。
帰ったらメールでもと思っていたら、今日も帰りが一緒になった。
「二日続けてなんて、珍しいね?」
「そだね。」
よし、今の内に言っておこう。と気合を入れてみたけど。
「あ、そだ。あの、のっちが、昨日言ってた友達ってぇ・・ゆかちゃん?」
ちょっと遠慮気味に聞いてくるあ〜ちゃん。
先に言われちゃった。
「うん。あたしも今言おうと思ったんだけど。」
「やっぱそっか。いつも一緒にいるもんね。」
そこからなんだか会話が無くて、なんて言って良いのか分からないあたし。
あ〜ちゃんの表情からも、気持ちは読み取れなくて、なんだか落ち着かない。
聞きたいことはあるけど、そこにあたしが踏み込んじゃいけない気がして、言葉に出来ない。
ゆかちゃん誘ったの、余計なことしちゃったかな?何か理由があったかもしれないのに。
「あ、着いた。」
あ〜ちゃんの声に、ふと我に返って少し慌ててバスを降りる。
バスを降りて歩き出したあ〜ちゃんの後ろから、トボトボと付いて行く。
後ろは振り向かずに、あ〜ちゃんがあたしを呼ぶ。
「その感じだと、ゆかちゃんから聞いてる?あたし達のこと。」
「え、あ、うん。同じ高校だって。」
「それだけ?」
後ろを気にするような感じで聞いてくる。
「………。」
なんだか答えられなかった。
「のっち?…まぁ、いいや。ゆかちゃん誘ってくれてありがとね。」
「え。迷惑じゃなかった?あ〜ちゃん平気?」
せっかく言わなかったのに、反射的に質問してしまった。
「ふふっ。やっぱり聞いてた。」
「ぁ、と、…うん。」
うぁ〜。やっぱダメだな〜、あたしって。
「のっちがそんなに気にすることないのに。」
「だよね…。」
それはそうだけど。でもあたしにとって二人は大切な存在だから。
なにか助けになれるなら、助けになりたい。
ちょっと、落ち込み気味のあたしに気付いたのか、立ち止まってあたしの方へ振り返り。
「けど、気にしてくれてありがと。のっちのそういう所、好きだよ?」
「へ?好き?」
少し距離を保ったまま、立ち止まるあたし。
「あぁ、その変な意味じゃないから。ね?」
もちろん、ラブの方じゃないって解ってるけど、嬉しいでしょ。それは。
それと、ハニカミながら言ったキミの顔が、ほんのり赤く見えたのは、気のせいだろうか?
「あ、そうだ!のっち明日一緒に行こ?同じトコ行くんだしさ。」
いつもの調子で聞いてくるあ〜ちゃん。やっぱり気のせいだよね。
「そうだね。」
「じゃあ、そこの公園で待ち合わせね?」
「うん。」
マンションのすぐ側にある公園。そこで待ち合わせ。なんかちょっとデートっぽくない?
「のっちって寝坊こきさん?」
「ん〜、割とそうかも。」
「あ〜、ちょっと心配だわぁ。なんなら電話して起こそうか?」
え?
「良いの?それ超助かるよ〜。」
「のっち、支度どのくらい掛かる?」
「え〜とね。40分くらいかな。」
「はやっ。あたしなんてすごい時間掛かるのにぃ。」
「たぶん、女の子ならそれが普通だと思うよ?」
「女の子・・ってのっちもそうでしょ?」
「まあ、そうだけどw。あたしは選ぶ物が少ないから早いだけだよ。」
「ふ〜ん。じゃあ、ちょっと余裕もって1時間前に電話するね?」
「はい。よろしくお願いします。」
わざと大げさに、深々とお辞儀をしてお願いする。
「ぃやぃや。そんな大したことじゃないしw」
この日の夜はわくわくして、まるで小学生の遠足が楽しみで寝付けないみたいな、そんな感じだった。
おかげで、あ〜ちゃんからの電話がくるまでぐっすり…。
—つづく—
最終更新:2009年01月24日 20:53