今日は歌番組の収録だった。
新曲初披露。
フリはまだ、身体に馴染んでない状態。
3人で、ぎりぎりまで
確認に確認を繰り返す。
こういうときののっちは
すごく頼りになる。
はずなんだけど・・・
今日はなんだか様子が変だ。
どうもはっきりしない。
これが、ラジオやその他の番組とかなら
きっと気にはならない程度のことだろう。
けど、、、
「ねぇねぇ、ここって右だっけ、左?」
あ〜ちゃんの問いにも
「あぁ、、、、えっとねぇ、、、、左?」
なんとも曖昧な答え。
わからないというよりは
集中しきれてない感じ。
そんなことはおかまいなしに
リハーサルはどんどん進んでいく。
ひと段落して、本番前に少し休憩をはさむ。
のっちは、腕を組んで目を瞑った状態で
椅子に腰掛けてた。
「ねぇ、、、のっち?」
「んー?」
目を閉じたまま、返事をするのっち。
「・・調子、悪いん?」
すると、顔をあげて
「そんなことないよ〜ちょっと眠いだけw」
そういって、いつものようにへらっと笑った。
でも・・・
ココロに何かひっかかりを残したまま
本番に挑んだ。
う〜ん、、、やっぱ
雑念があると、うまいこといかんね。。。
なんとか、オッケーがでたものの
今日のできは、いまいちだった。
のっちは、、、
結局のところ、よくわかんないや。
はぁ・・
ため息まじりで楽屋のドアを開ける。
トイレに寄っていて
戻るのが遅くなった
ゆかの目に飛び込んできたのは
畳のスペースで
横になっているのっちと
その傍に、腰をかけているあ〜ちゃんの姿だった。
あ〜ちゃんの手は
のっちのおでこに伸び
さらさらと、黒い髪を
形のいい頭を撫でている。
くだらない嫉妬に襲われ
コトバがでないあたしに
「あ、かっしー。
のっち、なんか風邪引いてるみたいで
ちょっと熱っぽいんよ。
残りの仕事、とりあえず、
二人でってことになったけぇ」
えっ?
「・・のっち、は?」
「もっさんが今、タクシー呼んでくれたから
それに乗って帰るって」
「・・・そっか、わかった…」
絶対、昨夜
ソファに寝たことが原因だ。
「うぅ・・・ごめん」
呟くのっちに
「気にせんで、ゆっくり休みんさい!」
そうって、やさしく頭を撫で続けてるあ〜ちゃん。
「ありがとう・・・」
のっち、やっぱり
しんどかったんだ・・・
けど
なんでなん?
ゆかには、調子悪くないって言ったじゃん・・
今朝だって、、、
あ〜ちゃんになら
甘えられるんだ・・・
ねぇ
そんなに、ゆかは頼りないかな?
あぁ、ダメだ・・
無力さが襲ってきて
やりきれなさだけが
どんどんココロを埋め尽くしていく。
そのやりきれなさが
涙となって
溢れてきそうになるのを
必死に堪えた。
ココロの中がぐちゃぐちゃになってしまって
残りの仕事は散々だった。
雑誌のインタビューだったけど
まともに受け答えができず
あ〜ちゃんになにもかもフォローしてもらって
なんとか終えた。
帰りの車の中。
ばんやりしていると
「…ゆかちゃんも、調子悪いん?」
あ〜ちゃんの声でふと我にかえる。
「うぅん、、そんなことないけぇ・・
てか、ごめんね。ゆか、ちゃんとできてなかったよね…」
「べつに、そんなことはいいんじゃけど…
なんか、、あった?最近、なんか元気なくない?」
「・・・そんなこと、ないよ」
あ〜ちゃんは敏感だから
ゆかの変化に
気付いているのかもしれない。
けど
抱えている
後悔と絶望、嫉妬、、、
その全てを吐き出せるわけもなく…
ただ、曖昧な返事をする。
「少し、、疲れてるのかな」
「…そっか。のっちも疲れてがたまってんのかもしれんね。
ゆかちゃんも、無理しちゃいけんよ」
「うん、あ〜ちゃんも、ね」
あ〜ちゃん、ごめんね。
心配してれてんのに
ゆかの頭の中は、情けないくらい
のっちでいっぱい、だ。
のっち?
あなたのトクベツになれないのなら
せめて
頼れる仲間で親友でありたいのに
そんな存在にすら
ゆかはなれんのかな?
ウソツキ。
トクベツになりたい。
その想いが消せないから
こんなにもツライんだ。
いったん、うちに帰ったものの
のっちの様子が気になって気になって・・
一人暮らしだから
きっと、いろいろと大変よね。
簡単に食べられそうなもの
水分補給の飲み物
風邪薬・・・
適当に買い物をして
のっちとこに向かう。
急に訪ねたら迷惑かな?
てか、寝てる、、、か?
やっぱ、やめとこうかな…
いやでも、
ゆかのせいで風邪引いたみたいなものだし。
なんて
結局のところ
どんな理由をつけたところで
のっちのことが心配で
のっちの顔をみないと安心できない
自分がいる。
よし、
さっと顔だけ見て
差し入れ渡してすぐに帰ろう。
あれこれ考えてるうちに到着。
—ピンポーン
寝てたら、ごめん。
ココロの中で呟く。
—はーい
えっ?
がちゃりとドアが開く。
最悪・・・
来なきゃよかった。
ドアを開けてくれたのは
のっちではなく
のっちの恋人だった。
最終更新:2009年01月24日 21:10