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今日は大学の合格発表の日。
自分の名前を見付けてホッとしたのもつかの間、偶然目についた名前に心臓が止まりそうになった。

大本彩乃


まさか、ね……。

そう、あれは4年前の夏の出来事……。



−−−×−−−×−−−×−−−



K『あ゙ちぃ〜。』
うだるような暑さの中、やっとの思いでたどり着いたその家はこじんまりとしていた。

樫野有香14歳、この夏親の都合でおばあちゃん家にショートステイ。
……って言うと聞こえはいいけど単なる田舎暮し。
たくっ、仕事で家空ける期間くらいちゃんと留守番出来るっての。
たかだか2ヶ月じゃん!

せっかくの一人暮しのチャンスだったのに……。

おばあちゃん家を目の前にして今更ウダウダ言っても仕方ないんだけどね…。


チリリーン。

チャイムの音まで田舎臭い。


『は〜い?』
ガラガラっと建て付けの悪い音を奏でながら横開きに滑る玄関のドア。

K『えっ?!』
あたしを出迎えてくれるはずのおばあちゃんはどう見てもあたしと同い年くらいの可愛い女の子で言葉をなくす。
『??どちら様ですか?』
K『えっ?あ、あのおばあちゃんは?』
『ん……、おばあちゃん?』

誰この子?!
軽くパニックになって言葉が出て来ない。

『どうかしたの?あやのちゃん。』
奥の方から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
K『あっ、おばあちゃん!』
女の子の後ろに見えるおばあちゃんの姿にホッと胸を撫でおろした。


おばあちゃんの説明によると女の子の名前は大本彩乃ちゃんって言ってあたしと同い年だった。
おばあちゃんは趣味で書道を教えててその唯一の生徒なんだって。

N『はじめましてっ。大本彩乃です。』
K『あ、はじめまして、樫野有香です…。』
ニコニコしてて人懐っこい笑顔に釣られてしまいそうになる。

N『じゃあ今日は帰ります。』
『うん、またね。』
ぺこりとお辞儀する姿は同い年には思えないくらい大人びていた。

彩乃ちゃんかぁ……。

『ゆかちゃん、あやのちゃんの友達になってあげない?』
K『え?』
『あの子人見知りが激しくてね、同年代の友達がいないのよ。いい子なんだけどねぇ。』
K『……今日もう疲れたから寝るね、おやすみ。』

おばあちゃんの問い掛けには答えず自室へと急ぐ。
人見知り?あんなに人懐っこい笑顔で笑うあの子が??

しっくり来ないまま夜はふけていった。


田舎での慣れない生活はあたしをイライラさせた。

なんで携帯圏外なんよ!

携帯は繋がらない、夜は虫の鳴き声がうるさい、遊ぶとこもない、TVだってチャンネル3つ…。
不満を挙げたらきりがない。


唯一の救いは毎日のようにあの子、彩乃ちゃんがやって来ては話し相手になってくれる事だけだった。
まぁ、それでも向こうの友達と話すより全然退屈なんだけど…。

N『ゆかちゃんは将来何に成りたいとかあるの?』
K『ゆかちゃん?』
N『あ、ごめん勝手に呼んで。』
しゅんとされたらダメとは言えないよね。

K『いや、いいよ、別に。』
N『ホントに?!じゃあじゃあ、私の事はのっちって呼んで?』
K『のっち?』
N『うん、あやのっち、やのっち、のっち、ののっちで。』
あぁ…。
別にあやのちゃんで良いんじゃないの?
って思ったけどめんどくさいから合わせとこ。
K『うん、わかった。じゃあのっち、ね。』
N『うんっ、へへっ。』
満面の笑みってこんなんを言うんだろうなぁってくらいの笑顔。

よっぽど嬉しかったのかな?

K『それよりのっちこそないの?』
N『ん?……可愛いお嫁さん。』
ええっ?!今時そんな事言う14歳なんていないしっ!

K『あぁ、成れるといいねぇ…。』

彼女の緩やかな空気はより一層あたしをいらつかせた。
こんな事なら一人でダラダラ過ごす方が楽だったかも……。

(続く)







最終更新:2009年01月24日 21:18