アットウィキロゴ
  • Side N-


初めて見た時から私の一目惚れだった。

キラキラした眩しい雰囲気は都会のそれで、田舎から出た事のない私はひどく興奮した。

でもね、それだけじゃなかったんだ。

もともと独りが好きだった。だから友達なんていなくて平気だった。
だから今更新しい出会いにときめいていた訳じゃないんだ。

ただ、君の事が知りたかった。

君は迷惑だったよね、きっと。

じゃなきゃ、あんな顔しないよね。

あれは苦い夏の思い出……。



−−−×−−−×−−−×−−−



N『こんにちは〜。』

ゆかちゃんが来てからもう一週間か…。
あんまり話してくれないけど大丈夫かな?嫌われてないかな。
今日は何して遊ぼうか。

N『ねぇねぇ、今日さぁ、土手行かない?』
K『土手?!』
少しギョッとした顔。

N『そう、ダンボールでズバーッて滑るのっ。』
K『……勘弁してよ、ただでさえ暑いのに外で遊んだら日焼けしちゃうじゃん。』
N『あ、…ごめん。』
K『…でもそれくらいしか遊びってないんでしょ?』
N『え?……まぁ…。』


大きなため息を一つ、君は仕方ないと私の提案を承諾してくれたね。


思えば私が強引に君を振り回してた。
そりゃ嫌な顔もするよね。
でも少しずつだけどやっと縮められた君との距離は私を冷静ではなくしていったんだ。


N『あー楽しかったぁ〜。ねっ。』
K『まぁ…たまにはこんな遊びも悪くないかもね。』
土手の斜面をワーワー言いながら、ただダンボールで滑るだけ。
小学生みたいな遊びでもそれなりに楽しんでくれたみたいでよかった。

汗だくでキラキラしてるゆかちゃんはとても可愛くてドキドキした。

カワイイ……。

K『何が?』
N『え?!あ、いやなんでもないっ!』
やべっ、口に出てた…。

K『でも、ほんと何年ぶりかだよこんな遊び〜。』
N『ごめんね、こんな事くらいしか遊ぶ事なくて。』
K『なんでのっちが謝るのぉ。ま、たまにはいいんじゃない?』
フフフと笑う君の笑顔は今でも忘れないよ。

N『ねぇ…、今度ね、小さいけどお祭りがあるんだ。一緒行かない?』
K『行くっ!』
N『ほんとっ?!じゃあじゃあ花火もしようよっ。』
K『やりたいっ!』

ますますキラキラと光り輝く君はまるで蜃気楼のようで、興奮とともに胸を切なさが締め付けた。

ずっと一緒にいられる訳じゃないから……。

やっと土から出て来て必死で鳴いてるセミみたいに、燃え尽きる瞬間の線香花火みたいに、
今をこの時を焼き付ける事に一生懸命で。

少しでも喜びを君と分かち合えてた日々が、私のこの胸を今もまだ締め付けてるよ。


ほどなくしてお祭りの日はやって来た。

ワクワクして昨日はよく眠れなかったし、昼間は昼間でゆかちゃん家に来て遊んでんだけどね。

何も変わらない今日だけど、でも特別な日。

不思議な感覚が胸をくすぐる。


K『よしっ、じゃあそろそろ行く?』
N『うん。』

いつも通る道もゆかちゃんと歩くだけでウキウキする。

暗い夜道を君と歩く。ホントは手を繋ぎたかったけどそんな勇気は持てなくて…。

いろんな感情が入り交じり、すべての出来事が色鮮やかに見えた。そんな今日と言う日。
道行く人達もどこかフワフワしてて、一際賑やかな空気の漂う場所が目についた。

K『あ、あそこ?』
N『うん、小さいけどね。』

こじんまりとした境内の両脇に並ぶ屋台からはいいニオイが香って来た。。
K『思ったより人多いねぇ。』
N『他に行くとこないしねぇ。』
苦笑い気味に答え周りを見渡してみた。
N『はぐれると大変かもね…。』
でもホントすごい人だなぁ〜。


賑やかな周囲の声に掻き消されて小さな声では君に届かない。
K『何?なんか言った?』
N『はぐれないように気をつけてねっ。』
K『はぐれたら先に家帰るから大丈夫よ。』


今も思い出すと小さく笑ってしまうあの瞬間。
きっといろんな事にドキドキしてたのは私だけだったんだろうな…。

君にとってはただの田舎の小さなお祭りで。

ただの暇潰しの一つでしかなかったんだね。






最終更新:2009年01月24日 21:20