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  • Side K-


掲示板で見た文字で甦る思い出たち。

今でも後悔してる事があるとしたら、なんであの時…。
ううん、やめとこう昔の事なんか考えても仕方ないし。
思い出は美化されるものだから……。

あの時のあたしはあれでよかったんだよね。
例え今が苦しくても。



−−−×−−−×−−−×−−−



K『人、凄かったねぇ。ちょっと想像以上だったよ。』
お祭りからの帰り道、少し冷たい夜風が体のほてりを冷ましていくようでなんだか寂しかった。

N『楽しめた?』
K『全然楽しめたよ。ありがとうっ。』

なんかまだこの楽しい空気を終わらせたくないなぁ…。
もう少しでまた学校も始まっちゃうし…。

田舎暮しを始めて気付いたら一ヶ月以上たってて。最初はあんなに嫌がってたのに今はこの生活を失うのを嫌がってる。
慣れない生活にイライラしてた事もあったけどなんだかんだで毎日楽しかった。

それもこれも貴女がいたから。
きみと一緒なら全てが楽しくて輝いて見えて、都会のどんな遊びより刺激的だった。
いつの間にか土足であがりこんだきみの存在に奪われてたの。

今思えばそれは淡い恋心。気付かずに毎日を一緒に過ごしていた幼い日々を思っては胸がきしむ。

きっと、限られた時間の中だから楽しめた。
ずっと続くとそれが当たり前になって快も不快もなくなるものだから。

だからあの時のあたしは時間と言う名の魔法にかけられたんだと思う。
じゃなきゃ、あんな事……。


あたしは少しでも今が続くようにと、

K『よし!この勢いで花火やろうっ!!』

お祭りのテンションそのままに強引にのっちと花火をし始めた。

手持ち花火で文字を書いて当てっこしたり、向けちゃいけないって分かっててわざとのっちに向けてみたり。

N『ゆかちゃん、危ないよっ。』
K『ハハハッ、ごめんごめんっ。』

でも楽しい時間はこの花火達のようにあっという間に燃え尽きるもので…。
気付けば線香花火しか残ってなかった。

どちらからともなくそれを手に取り火をつける。

パチッパチッと弾ける火花が描く枝葉を見てると、綺麗なものがなぜ綺麗なのか少しわかった気がした……。

K『キレイだねぇ。』
N『うん…。』

火玉が落ちないように息を潜め、風の影響を受けないよう身を寄せ合い、
少しでも長く燃えるように祈りにも似た想いでそれを見つめた。

ふと気付けば間近にのっちの顔があって、あたしがのっちを見たのと同じタイミングでのっちもあたしを見る。
ニコッと微笑む彼女から目を反らす術をあたしは持ち合わせてなかった。


  • Side N-


今また出会えたらなんて言葉をかけたらいいのかわからないまま、思い出を紐解いてはこの身を焦がす。

あの頃より少し大人になった私ならどんな言葉を奏でられるのか。
少しは君に届くのかな。



−−−×−−−×−−−×−−−



線香花火キレイだなぁ…。

私もゆかちゃんもただただ線香花火に魅入られていた。

気付けばもの凄く近くにゆかちゃんの顔があって同時に視線が重なって……。
ドキドキしてるのを隠すように笑って見せたけど、君は黙って私を見つめていた。

二人とも花火片手にしばらく見つめ合ってたね。
今思い出してもくすぐったくなるあの感じ。
幼さ故のもどかしさに身を焦がしながらただ、無言で君の瞳を見つめていた。


火玉が落ちたのを合図に私はゆっくり顔を近付けていく。
その選択はとても自然な事で、君の引力に引き寄せられるまま唇を重ねた。
ぎこちなく重なる口づけは、
羽根のような軽さで、瞬きよりも一瞬で。

その淡い行為は、今でも昨日の事のように思い出せるよ…。

キスの後、恥ずかしくて何も言えないまま残った線香花火を終わらせた。

N『……終わっちゃったね。』
K『……。』

N『ゆかちゃん?』
返事の無い君を覗き込むと君は膝を抱えたまま泣いていた。

N『えっ?!あ、ご、ごめんっ!』
私がキスしちゃったからだ…。

何も言わず急に君は立ち上がり歩き始めた。
慌てて君の後を着いていく、かける言葉もなくただ無言で。


今でも君の涙の意味を探してはため息で記憶の幕をおろす。
最初から最後まで振り回してばかりで幼かった私を思い出しては君への想いを強めてる。


ゆかちゃんとはあれ以来会ってない。

会いになんて行けるはずもなくて、結局きちんと謝る事も出来てないままゆかちゃんが東京に戻る日も部屋で過ごしてた。

明日からはまた前と同じ日々を過ごすだけ。
私の生活にゆかちゃんがいなかったあの日々に…。

振り払うように目を閉じるとキラキラしたこの二ヶ月間が頭をよぎった。
浮かんで来るのはどれも彼女の笑顔で。

……このままさよならなんてやだっ!!

そう思った私は無我夢中で家を飛び出し走った。
大好きなあの子のもとへ、二度と会えないゆかちゃんの元へ…。

私は走りながら泣いてた。
ただ、ゆかちゃんを想って必死に走ってやっとの思いでたどり着いた彼女が暮らしてた家。

『あら、あやのちゃん。』
N『ハァハァ、あの、ゆかちゃんは?』
『…ごめんね、一本バスの時間早めるって言ってさっき出て行っちゃったのよ。』
N『さっき?……ありがとうございました!』
考えるまでもなく私はまた走り出していた。

まだ間に合う!!

その想いだけが私を突き動かした。

(続く)





最終更新:2009年01月24日 21:29