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久し振りのオフは、1日ごろごろして過ごそうと決めていた。
最近は1日びっしり詰まった仕事のスケジュール、空いてたら学校へ、なんて毎日を過ごしてたから、のんびりする暇もなくて。
忙しいのも悪くないけど、たまにはゆっくりしたいなぁ…………って思ってたのに。


朝から携帯が鳴らすメロディーに起こされた。ディスプレイを見るとまだ9時。
この曲は、あ〜ちゃんだけに設定された特別なやつ。
この音が鳴ると朝だろうが深夜だろうが体が勝手に反応してしまう。
どんなに眠たくても、ゆっくりしたくても、他でもないあ〜ちゃんとなれば話は別。
さながら忠犬のっちじゃ。


「も、もしもしぃ……?」

「その声は、もしかして寝てたじゃろのっち。」

「いやだってまだ9時……」
「もう9時、よ。」

どうせまた夜更かししてゲームでもしてたから今まで寝てたんじゃろって、憎まれ口がスピーカーからわんわん聞こえる。


「ま、いーからドア開けんさいや」
いい加減寒くて敵わんわ、って呟く声。

って。えぇえ?居るの?
慌てて玄関に走り、チェーンを外してドアを開けると、
寒そうに身を小さくしたあ〜ちゃん。と

「のっち、寝癖すごいよ」
の一言。


急な展開に頭がついていかないあたしを放ったまま、さっさと玄関に入るあ〜ちゃん。
可愛いらしく玄関に座り込み、(効果音をつけるなら、まさに「ちょこん」って感じ)
もこもこのボアのついたムートンブーツをうりゃっとか言いながら脱いでいる。


「なに見とるんじゃ」

「いや。ほっぺ、赤いなぁーって思って。」

冷たい風にさらされた頬は十分熱を奪われてるのに、まるで熱をもったかのように赤くなってて。
思わず両手でほっぺを包む。

「うひゃ、つめた。」

相変わらずやおいほっぺをお持ちですねぇ。
擦るように撫でるとのっちの手にあ〜ちゃんの手が重なってきた。

「のっちの手、暖かい。」

目を閉じてそう呟くあ〜ちゃん。
まるでのっちの体温を出来るだけ強く感じ取ろうとしてるみたいだ。


「こーやるともっと暖かいよ。」
ってギュッと抱き締めてあげると、
あたしの腕の中であ〜ちゃんがさらに縮こまった気がした。


「……玄関で、やることじゃないけぇ」

そう言ってあ〜ちゃんはのっちを除けて、一足先に部屋へと進む。

玄関じゃなきゃやっていいんですかおーい。
訴えてみるも、返事なし。


寝癖のついた髪の毛をくるくる指で弄びながら、ゆっくりマイルームへ進む。
うん、大丈夫。いつもより片付いてる。
最近家に帰っても寝るだけだったからな。
散らかす暇も無かったって訳です。


っていうかあ〜ちゃんどこ?
くるりと見渡すと、布団がやけに盛り上がってるベッドを発見。
目標確認致しました、いよいよ突撃ですか。
いいえのっちにそんな度胸はございません。


近付いてみると、布団からちょこんと顔を覗かせたあ〜ちゃん。うぅ、かわゆし。


「寝に来たん?」
尋ねると、あたしと目を合わせたままんーん、って軽く首を振る。

「違うんよ、本当は友達ん所行こうとしたんじゃけど」
「どーせのっちは休みだからって1日中ごろごろしてるんだろなーって思いながら歩いてたら」
「いつの間にかのっちん家の前に居たんよ。」

いつもの早口でまくしたてるあ〜ちゃんとは違い、一言ずつ間を置いてゆっくり喋る。


「それで、そのまま押しかけた訳ですか」

「ん、あ〜ちゃんもたまにはごろごろしようかなって思ったけぇ」

「友達はいいの?」

「元々約束してなかったけぇ、平気よ」


おいおい、友達の家にも押しかける予定だったのかい。
でも結果的にのっちの元へ来てくれた事は、やっぱり嬉しい。
しかも珍しくゆっくりしたいだなんて言うし。
お家でまったり出来てしかも隣りにあ〜ちゃんだなんて。幸せすぎてどうしよう。



「のっちも入ーれて」

本当はあたしの布団なんだから了解を取る必要も何もないんだけど。
布団を軽く捲ってあ〜ちゃんの隣りに潜り込む。
あたしが潜ってた時の暖かさはすっかり無くなっていて、
隣りで丸まってるあ〜ちゃんの熱がその分余計に伝わってくる気がする。


「あ〜ちゃん、あったかー」

背中を向けたあ〜ちゃんにピタッとくっついてみる。
すると、んしょっなんて言いながら体の向きを変えるあ〜ちゃん。
向かい合わせ。顔の高さが同じだから、真直ぐ見つめ合う形になる。


「のっち、」

「ん?何?」

「玄関じゃないけぇ、ギュってしてもいいんよ」


その甘い囁きに思わずきゅんって胸が鳴る。
ついでに顔もゆるんでしまったようで、あたしの顔を見てあ〜ちゃんがくすくす笑う。

「のっちにやけすぎ」

「だってあ〜ちゃんが可愛いんだもん」

言われた通りにギュって抱き締めてみる。すると甘酸っぱい気持ちが胸いっぱいに広がっていった。それが心地良くて、でもどんなに抱き締めてもまだ足りないから。



「今日はずーっとこうしてたいな。」
思わず呟くと、

「ほんま、しょうがない子じゃねぇ」

優しくてちょっぴり甘い声が聞こえて、赤ちゃんをあやすみたいに頭をぽんぽんって優しく叩く。
ゆっくりと一定のリズムでするそれは、だんだん眠気を誘ってきた。

せっかく来てくれたのに寝ちゃ駄目だのっち!
襲ってくる睡魔と格闘していると、頭の上の動きが止まった。


「…あ〜ちゃん?」

あ〜ちゃんの方を見ると瞼を閉じて静かに寝息を立てていた。その顔を見て思わず笑みがこぼれてしまう。
可愛いあ〜ちゃん。ほんま天使さんみたいじゃ。



そっと前髪を掬い上げ、額に軽く口付けた。
そっとやったつもりだったけど、あ〜ちゃんの身体がぴくんっと反応する。
やばい起きたかな?って思ったけど、しっかり閉じた睫毛と規則正しいリズムの呼吸から見ると、ちょっとやそっとじゃまず起きないだろう。
そんな寝顔を間近で見ていると………うーんやっぱりニヤけてしまうね。
こんなんだからあ〜ちゃんにキモいって言われるんだろうな。自分でも分かってるんだけど、仕方ないよ知らない内に口角が上がるんだもん。


「いい夢を見るんだよー」
もう1回、今度はほっぺにキスをして
あ〜ちゃんの匂いに包まれながら、もう1度眠りについた。


END




最終更新:2009年01月24日 22:05