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Side N
あ〜ちゃんを困らせたお詫びに、あたしは例の人の話を聞くことになって、あ〜ちゃんが話し出す。
あたしは少し後ろにある柵に座って聞くことにした。

「三年前の高校入学式前の春休みに、家に帰る途中で急に変なチャラ男に絡まれそうになって、そこを助けてくれたのが例の人なんだけど。
別れるときに名前も聞いたの。でも、その子急いでたみたいで、教えてくれたには教えてくれたんだけど…あだ名だけ叫んで行っちゃったの。」

「ぇえ?マジで?」
「そぉ〜なんだよぅ。だからさぁ、名前で探すに探せなくてさ。結局、顔だけが頼りみたいな…。
すっごい苦労したんだよ?」
結構天然な感じ?

「でも、あ〜ちゃんは探したんだ。三年間、ずっと。」
「ん、ぅん。まぁ…。だって、お礼もちゃんとしてないし、名前だってちゃんと聞いてないし〜。」
少し焦りだすあ〜ちゃんを構いたくなって…。

「それに、好きになっちゃったし?」
むぅって怒られると思ったのに、またしばらくあたしを見てたかと思ったら。

「そーだよ?だから、絶対に会ったら、あだ名で呼んでやろう!って決めてたの。
もう、早く呼びたくてしょうがなくなっちゃて。」
すごく力をこめて話すあ〜ちゃん。あだ名しか言って行かなかったの、そうとう困ったんだね。

「で、呼べたの?」
「うん、呼んだぁ。もう、その人が名乗る前に言っちゃって、何で?とか言われて、ちょっと焦ったけど…。」
あぁ、そ〜いえば、あたしの時もあ〜ちゃんに先越されたっけ…?

あ〜ちゃんもブランコを降りて、あたしの隣に座ってくる。
「初めて声掛けたとき、すごく嬉しかったんだぁ。ずぅぅっっと…、呼びたくてしょうがなかったから。」


前を見たままだったあ〜ちゃんが、おずおずとあたしを見上げてきて。
「…のっち、って…。」
すごく優しく響いたソレは、自分の呼び名…。

んん???あたしぃ???

今度はあたしが固まってしまって、反応できない。

「ずっと、あたしが気になって気になって、しょうがなかったのは…。のっちなんだよ?
のっちは、覚えてないかも、しれないけど。」

確かに、思い出せない。というか、今は無理。今はそれよりも、こっちが大事。

気付けば、いつの間にかあ〜ちゃんの目には涙が浮かんでいて。
「ずっとずっとぉ、…のっちの、ことぉ…好きっ、でぇ…。」
一生懸命、涙を堪えながら、手で抑えながら、声を震わせながらも気持ちを伝えてくれるあ〜ちゃん。

そっか…あたし片想いじゃないんだぁ。

ぎゅってあたしの服を摘みながら、言葉を続ける。
「だから、へこまくて…良いん、だよ?」
「うん…ありがと…あ〜ちゃん。」
ようやく言葉を返す事が出来て。

ホントにすごく…すごく嬉しいよ。

何時からか判んないけど、ゆかちゃんは知ってたんだ。例の人があたしだって。
だから、昨日あたしに発破をかけてくれたんだ。前に進みなさいって。

あたしの服を摘んでいるあ〜ちゃんの手に、自分の手を重ねて。
もう一度、優しく優しく愛しい人の名前を呼んで「好き」って言うと、堰を切ったように大粒の涙を零しながら泣き出したあ〜ちゃん。


そのあ〜ちゃんを、この間みたいに抱き寄せて。
でも、この間よりも少しだけ腕に力を込めて…。

三年間の想いと、あたしを見つけてからの約三ヶ月…。こっちの方が辛かったかな?
近くに居るんだもんね。いっぱい溜め込んでたに違いない。

あ〜ちゃんが泣き止むまでポンポンと頭を撫でたり、ふわふわの髪をそっと撫でたりして。
その時間さえ幸せで、不思議な感じ。

泣き声もしなくなって、鼻をすする音がまだするけど。
「あ〜ちゃん、大丈夫?」
「…ぅん。」
コクッと頷くあ〜ちゃん。

あ〜ちゃんの顔を見ようと思って体を離そうとするけど、動く気配の無いあ〜ちゃん。
「あ〜ちゃん?あの、顔見たいんだけど…。」
「ダメ。」
あっさりそう言われ、背中に回されてる腕にぎゅっと力が入り、離れないようにしがみついてくる。

「な、なんで?」
「…だって絶対。今の顔、最悪だもぉん。鼻水とか涙でぐちゃぐちゃだよぅ。」
少し怒り口調で言ってくるあ〜ちゃん。この間もそうだったけど。
「別に気にしないで良いのにぃ…。」

「…可愛くいたぃの。…好きな、人の、前、では…。」
恥ずかしいみたいで、ごにょごにょ言ってくる。

……そのセリフが可愛いんですけど。

「この間の、泣き顔可愛かったよ?」
ピクッと反応するあ〜ちゃん。

「…ばか。」
ぽつりと呟くあ〜ちゃん。

「はい?」

「ばかばかばかばかばかばか…ばぁーか。」
「そ、そんなぁ…。」
めちゃくちゃ連発されたぁ…。


「誰のせいで泣いてると思ってるの…。」
そう言いながら、しがみ付いていた力が緩んで、少し離れるあ〜ちゃんの体温。
でも、まだ顔は上げてくれない。

「ぇ〜と〜。ごめんなさい。」
泣かせたのはあたしだから謝ってみる。

「ホントだよぉ…。でも、あの時…助けてくれて
…ありがと。」

顔を上げたあ〜ちゃんの、泣き顔の笑顔ときたらもう…。
もう一度、抱きしめたくなるくらい可愛いったらありゃしない。

「えへwやっと言えたぁ。」
鼻は手で隠してるけど。ハニカミ笑いの君。
やっぱりあ〜ちゃんの笑顔は最高だと再認識。

「あ!あたしもぉ、探してくれて、…ありがとう。」
変に声が裏返る。
あたしの知らない間に、いっぱい探してくれてたんだよね。

「もう、どっか行かないでよ?」
「い、行かないよ〜。」
絶対に行くもんか。

「もし行くならぁ…、一緒に連れてってね?」

うぎゃーーw。
なんなのあ〜ちゃん。その上目遣いはなに!
なんでこの子こんなに可愛いんですか!!

さっきからあ〜ちゃんのセリフに赤面しっぱなしのあたし。
このまま溺れて息が出来なくなりそうだよ…。

………。
…。

ん。まぁ…。
あ〜ちゃんになら、溺れても良いやぁ。


—つづく—





最終更新:2009年01月25日 18:53