Side N
さてと。二人が来る前に買出しにでも行ってこよっと。
そう思って外へ出た先に、可愛らしいクマのぬいぐるみを抱きしめた小さな女の子が、半べそでしゃがみ込んでいた。
「こんなトコでどうしたん?」
あたしが、同じようにしゃがんで聞いてみると。
「ぅぅ…。お家、分かりゃんくなったのぉ。」
どうやら迷子になっちゃったみたい。
「そっかぁ…。じゃあ、お姉ちゃんが一緒に探してあげるよ!」
「…ヒック、ぅ…ぅ、…ほんまぁ?」
そう言って、ようやく上げてくれたその顔を見て、固まってしまったあたし。
だって、この泣き顔見覚えが……。
「ね、ねぇ。あたしのっちって言うんだけど、あなたは、お名前なんて言うの?」
「おなまえ?」
「うん、そう…。」
「…あ〜ちゃん。」
………。
…ま、まっさかねぇ〜。偶然だよ、偶然。
「えっと、上のお名前は?」
「??」
少し困った顔をして首を傾げる小さなあ〜ちゃん。
「苗字…わ、からないかな?」
「う、わかりゃん…。」
う〜む。これは、どう考えるべきか…。
このあ〜ちゃんと名乗る、あ〜ちゃんそっくりな子。
他人の空似ってやつ?だってあ〜ちゃんがちっちゃくなるはずないもんね?
大体、本当にあ〜ちゃんだったら、迷子になるはずないし、あたしのことも知ってるはずだ。
うん。そうだそうだ。
一人で勝手に納得してたら、
「のっち、怒っちょる?」
どうやら、あたしが真顔になってたらしく、すごく不安そうに聞いてくるちびあ〜ちゃん。
「ん〜ん?全然怒っとらんよ?大丈夫じゃよ?」
その可愛らしい頭をポンポンと撫でて、安心させる。
そしたら、ぱぁ〜っと笑顔になってくれる。
「のっち、よかったぁ。」
そのまま、ぎゅってあたしに抱きついてきてくれて、頼っても良い相手だと思ってくれたらしい。
うわw。な、なんか、嬉しいんだけど。
あ〜ちゃんに似てるというだけで、嬉しくなっちゃうんですけどw。
しかも、あ〜ちゃんはこんなことしてくれんから、さらに幸せ〜。
一人で、じ〜んとしてたら、携帯に着信が来ていそいそと取り出す。
相手はゆかちゃんで、遅くなるとかの連絡かな?
「はい。」
『あ、のっち。ねぇ、あ〜ちゃんそっち行っとらん?』
あ〜ちゃん?えっと、西脇さんちのあ〜ちゃんだよね?
「うん。まだ来とらんよ?」
『そっか…。待ち合わせしてたんけど、来んけぇ、携帯にかけたんけど、それも出んくて。
あ〜ちゃんちにも電話して聞いてみたけど、家にはおらんて…。じゃけぇ、のっちんちに行ってればって思ったんけど…。』
なんですと?あ〜ちゃんが行方不明?
「マジで?」
『こんなん嘘ついてどうするんよ?』
「うむ、確かに。」
そう思いながら、目の前のちびあ〜ちゃんに目を向ける。
「どうしたん?」
そういえば、気にしてなかったけど、この子広島弁じゃん?
『のっち?どうした?』
「ゆかちゃん。ちょっと…そのまま切らんとって。」
『のっち?』
とりあえず、携帯を外して、あたしはあるコトを確認することにした。
「ねぇ、あ〜ちゃん。ちょっと左手出してくれんかなぁ?」
「ん。」
あたしに言われた通りに、頂戴のポーズで出してくるちびあ〜ちゃん。
「ちょっと、ごめんね〜。」
そう言いながら、親指が上になるようにクイッと90度向きを変える。
「……。ん、ありがとぅ。あ〜ちゃん。」
ふぅ〜。
あたしは一呼吸してから、また携帯を耳にあてる。
「ゆかちゃん。」
『なんなん?何してたんよ?』
「あのぉ〜な?あ〜ちゃん来とるわ…。」
『はい?さっきおらん言っとったじゃん。』
「うん。いや、目の前に居たんけど、気付かんかったっちゅうか、なんちゅうかぁ。」
目の前で、可愛くあたしを見上げてるちびあ〜ちゃんに、視線を向けたまま話すあたし。
『のっちぃ。気付かんてどういう事よ?』
「だってぇ…。このあ〜ちゃん、どう見たって、3、4歳なんだもん。」
『は!?』
いや、まぁ、それは全くもって正しいリアクションだと思われますです。ハイ。
電話じゃ説明できないから、とにかくゆかちゃんは家に来ることになった。
そして、実際にちびあ〜ちゃんを目の前にしたゆかちゃん。
「ホンマにそっくりじゃねぇ…。」
「じゃろ?」
「親戚の子とかじゃないん?」
「この位の子って居たっけ?」
「ん〜、解らん。」
今ちびあ〜ちゃんは、寝ちゃってます。しかも、あたしに抱っこされてます。
ゆかちゃんが来る前に、目がトロンとし始めて「にぇむぃ。」と言いながらピトッとくっ付いて。
なんと言いますか。あまりの可愛さに、抱っこなんぞをしちゃったりなんかして…。
一人で幸せを噛み締めてました。
とりあえず…すみません。
「でも、何でこの子があ〜ちゃんだって判るんよ?」
「え?あぁ、それはね?んっしょ…。」
寝ているちびあ〜ちゃんの左手を探っていたら、もぞっと動いて薄っすら目を開けるちびあ〜ちゃん。
お、起こしちゃった?
やべ。と思いながら、息を止めてちびあ〜ちゃんを覗き込む。
そんなあたしを見て、ふにゃ〜っと笑ってまた眠りに落ちていくちびあ〜ちゃん。
しかも、擦り寄ってきてさっきより、あたしの腕にフィットしてくる感じがなんとも…。
「…のっち。あんたロリだったん?」
「ぅえ?」
なな、何を仰いますか!
「ちびあ〜ちゃんにデレデレし過ぎじゃろぅ。」
ゆかちゃんの冷たい視線が、痛いんですけど。
「だ、だってぇ。ちっちゃくてもあ〜ちゃんだし…。」
「はいはい。だから、何で判るんかって聞いとるじゃろ?」
「あ。だから、その。あ〜ちゃんの左手の人差し指あるじゃろ?」
実際に見せたかったけど、また起こしちゃいけないから、口で説明する。
「その、親指側の方の第一関節辺りにちっちゃいホクロがあるんよ。」
指にあるのって、珍しいでしょ?
「あ〜、言われてみれば、あった気がする。」
「確認したら、ちびあ〜ちゃんにもあったんよ。」
「ふ〜ん。よぅ見とるんね〜。」
急にニヤニヤしだすゆかちゃん。
「な、そ、そりゃ、好きな人じゃけぇ。見とるよ。」
「あ〜ちゃんに言ったら、喜ぶわw」
「え。あ〜ちゃん厳しいけぇ、また、うっさいって言われるよ…。」
思わずため息が漏れる。
「あ〜ちゃん素直じゃないけぇw」
「その分、たまにデレられた時の破壊力が恐ろしすぎる…。」
そんなん、滅多にないですけど。
「ま、惚れた弱みってやつじゃね。諦めんさい。」
「はぁ〜。」
「それよりさぁ。これからどうするん?はっきり言ってPerfumeとしての危機じゃと思うんけど。」
「ん?」
「ちびあ〜ちゃんじゃ、無理じゃろ?記憶も無いみたいだし。」
「あ。そうだった。」
「呑気じゃねぇ、あんた。」
そうは言うけど
「ゆかちゃんも、人のこと言えんじゃろ?」
「え?そう?」
「でも、ゆかちゃんはいつも冷静かぁ。」
確かにPerfumeの危機ではあるが、あたしとしては折角獲得したあ〜ちゃんとの関係の方が危機なんですが…。
「ゆかちゃん!なんとしてもあ〜ちゃんを元に戻そう!」
「ん?やる気でたん?」
「うん!ヤる気でた!うごっw」
その瞬間、ちびあ〜ちゃんが体勢を変えるために動いたらしく、
ちびあ〜ちゃんの頭突きがあたしのアゴにクリーンヒットした。
テーブルに肘を突いてそこに顎を乗せた、呆れ顔のゆかちゃんが一言…。
「あほ。」
たははぁ。だって、あ〜ちゃんこと好きだもん。しょうがないでしょ?
あ〜ちゃん、せめて記憶があってくれたら、原因も分かるかもしれないんだけど。
ないんだもんね?
…待ってて、あ〜ちゃん。ゆかちゃんと一緒になんとかするからね!
—つづく—
最終更新:2009年02月12日 14:42