なんで……っ。
通りを右も左もなく走った、何かから逃げるように。
あたしは何を期待していたのか。
もっとドラマチックな再会?
そんなのある訳ないのにやっぱりどこかで期待してたんだ。
なんで逃げちゃったんだろ…。
電車の閉じかける扉に滑り込み、そのすぐ近くに立つ。
流れ行く外の景色をぼんやり覗き込むと今になって震えている手足に気付いた。
急に走ったせいだ、と自分に嘘ついて心を落ち着かせようと試みる。
いくつ嘘を重ね、自分の気持ちを偽れば楽になれるのか。
嘘に嘘を重ね記憶と気持ちに蓋をして来た。
その代償としては残酷過ぎるハプニング。
あたしだけ、前に進めず、貴女はもう現在(いま)を生きてるんだね。
今ごろ楽しんでんだろうな…。
久々見たけどのっち可愛くなってたし…。
彼氏くらいいるよね…。
どうあがいてものっちの事が頭から離れない。
こんなに辛いなら出会わなきゃよかった。
心の呟きはため息となって吐き出され虚しく中に消えていった。
あの日、君が戻る最後の日。
必死で走ったけど結局会えなくて……。
あの時会えてたら、再会も少しは違った形になってたのかな。
気付けばまた君を捜して走ってる自分がいて。
そう言う運命なんだろうと思うと笑えてくる。
短いまどろみから意識を取り戻すとすでに朝日が部屋に差し込んでいた。
やばい、遅刻だ…。
今さら慌てても仕方ないと自分に言い訳しながら支度をする。
歳を重ねる毎にこうやって言い訳が上手くなっていくんだね……。
思い出の中の私は言い訳も出来ないままその時を刻むのを止めたと言うのに。
はっきりしない頭のまま、のそりのそりと身支度を整え涼しい我が家を後にした。
大学に着く頃にはうっすら汗ばむほどで、その強い陽射しが夏の訪れを告げていた。
あちぃ……。
ずっと頭を離れない昨夜の出来事。
私は何に捕われているのか。
今の君…?昔の君…?
ふと、視線を泳がせてみる。
一瞬通り過ぎまたそこにピントを合わせると、このループする想いの答えを出せる人物がいた。
ゆかちゃん……?
昨夜の薄暗い中での姿と重ね合わせてみればぼやけていたそのシルエットがはっきり浮かび上がる。
考えるよりも先に足が動き出しシルエットはどんどん大きくなる。
知らずに息を飲む自分がいた。
(続く)
最終更新:2009年02月12日 14:45