—カッカッ、カッカッ。
いつみても、ウインナーみたいな指。
—カッカッ、ボキッ。
あっ、チョーク折れた。焦ってる焦ってる。
—カッカッ、カッカッ。
髪伸びたんじゃない?おにぎりみたいじゃな。
—カッカッ、カッカッ。
黒板に書くチョークの音がとっても心地よい、そんな午後の授業。
あたしは今年の春卒業する高校三年生。
教壇に立ってるのは高校三年間好きだった人。
まさか自分が先生を好きになっちゃうなんて自分でもビックリ。
だって、生徒にタメ口であだ名で呼ばれてるヘタレな先生なんよ。
良い意味で言えば親しみやすい先生。悪い意味で言えばイジられてる先生。
まー、イジられるのはしょうがないよね。
だって授業中騒いでも怒らないんだもん。
さすがに注意はするけども、今だってほら・・・。
「あの〜・・・ちょっと、みんなぁ〜し、静かにしてほしんれすけど・・・」
あ〜、また噛んだよ・・・。ぜったいみんなにツッコまれるよ・・・。
「のっち〜!!また噛んでるよ!!しっかりww」
ほらね・・・。
だんだん先生の眉がハノ字になっていくのがわかる。
「あぁ〜、からかわないで下さい・・・。てか、何度も言いますけど、一応あたし先生なんで『のっち』じゃなく先生って呼んでくらさい・・・」
・・・噛み噛みすぎ。
「だってのっち、先生って感じがしないけぇ。いいじゃんこのままでwww」
あ〜あ、完全に下に見られとるね・・・。
—キーンコーンカーンコーン・・・
チャイムが鳴ったと同時にみんな慌しく帰りの仕度の準備。
「先生!!」
教室から出ようとする先生を呼び止める。
キョトンとハノ字眉の先生。
でも次の瞬間にはとっても優しい顔で、
「西脇さんだけだよ。『先生』って呼んでくれるの〜」
ってケロケロした声で言ってくれる。
そう、あたしだけ先生のことを『先生』と呼ぶ。
だってちょっとでも他の子と違うって気づいてほしいから。
特別と想われたいから。
でもそんな想いはもう無駄なのかな。
だって先生の左手の薬指にはキラキラに光る指輪があるから・・・。
最終更新:2009年02月12日 14:57