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N-side

トン、トン
私はその子の肩を優しく叩いた。
ビクッ
彼女はゆっくり振り返った。

「あ、あの…すいません」
「はい…」

か、可愛い…
なんちゅう声しとるんだ…
「…あの…なんですか…?」

はっ…!!
声にやられてしまってぼーっとしていた私に彼女は不思議そうに聞いてきた。


「あ、あの、いつも一緒ですよね!」

……バカか私
彼女が私のことを覚えてくれてるのもわからないのに、言いきっちゃったよ…

「あ、そうですね。いつも一緒ですよね」


マジ?
覚えててくれた?
しかも、なんて可愛らしい笑顔…


「すいません、私ここで降りるんで」

「あっ!はいっ」

「じゃあ、また」

そう言って彼女は降りていった。
『あ!はいっ』じゃないよ私…
テンパりすぎて名前も聞けなかった…

どうしよう…
明日会ったら完全に気まずい。
さぁどうする…
大本彩乃。


授業中もずっと明日どうするかを考えていた。でも結局いい案は浮かばなかった。

「のっち、また明日ね」

「うん。バイバイ」

友達と別れ駅に向かう。
ハァ…
私から出たため息はすごく白かった。
駅のホームってほんと寒い。早く電車こないかな…。

—まもなく-番線に…

ようやくきた。
今の時間帯はわりと空いてる。1両に数人しか乗っていない。
私は座席に座った。
あたたかい電車の中は眠気が襲ってくる。
うとうとしていたら私の目の前に人が立った。

なんでこんな空いてるのに座らないんだろう…?
…まっいいや。
また寝ようとした瞬間、

「あのっ…」

私はゆっくりと顔を上げた。

「今朝、話しかけてくれた人ですよね…?」



うそ…夢?
そこにはあの子がいた。

「隣、いいですか?」


私は目を大きく開けてよーくみた。…夢じゃない。


「も、もちろんっ!」

私は嬉しくなって、つい大きな声を出してしまった。
「ふふっ。ありがとう」

彼女はくすくす笑いながら私の隣に座る。
そうだっ!名前!

「あ、あのっ、な名前…」
相変わらず噛み噛みだな私…

「あっ私?樫野有香っていいます。」


…樫野有香。やっと聞けた大好きな人の名前。

「あなたは…?」

「おっ大本彩乃ですっ」

「あやのちゃん…?なんて呼べばいい?」

「えと、友達からはのっちって呼ばれてます。」

「のっち…。なんか可愛いね。」


……やばい。
可愛いとか言わんで…
死ぬ…。

「あの、私はなんて呼んだら…」

「うーん…、みんなからはかしゆかとか、ゆかとか、ゆかちゃんとか、いろいろあるけど好きなように呼んでっ。」


……それが一番困る!!
どうしよう…
考えていると、彼女はまたくすくす笑いはじめた。


「のっち、今、困っとる?」

「えっ…?」

「眉が八の字になっとるよ。」


私はバッと手で眉を隠した。あぁ…今、絶対顔赤い。
「あははっ。のっちっておもしろいね。」

恥ずかしい…
もうアホの子丸出しじゃ。
「う〜ん……じゃあ、ゆかちゃんってあんまり呼ばれないからのっちそう呼んでよ。」

「う、うんっ」


ニコッと微笑む彼女。
思ってたよりも積極的なトコロも、こんなに可愛い声してるトコロも、笑顔がすごく素敵なトコロも、今日初めて知ったんだ。

「あっもう降りなきゃ。」
彼女は鞄を持ち、すっと立った。

「じゃあ、のっちまた明日ね。」

「あっ、うん、また明日。」

彼女は私に手を振りながら電車を降りていった。
私、完全に顔にやけてただろうな…

それにしてもびっくりだ。彼女から話しかけてきてくれるなんて。

でも…すごく嬉しかった。

話せただけでも幸せかも。私のこの想いがあの子に気づかれたら、さっきみたいに話せなくなるのかな。

嬉しさと不安で複雑な一日だった。


○つづく…○





最終更新:2009年02月12日 15:08