収録のため移動する道で
"はあー"
吐き出した息に色が付いてるのに気づいた…それの白さが季節が変わり始めた事を教えているように思えた。
あれから1ヶ月が経ったのに相変わらず、のっちは毎日喋りかけてくる。
変わったのは…質問が「何でのっちのこと避けてるの?」と「あの日の電話はだれ?」に増えただけ。
最近は、ハの字眉で声を震わせて聞いてくるのっちを抱きしめて「大丈夫だよ」って言ってあげたくなる衝動を押さえ付けるのにもだいぶ慣れてきた。本当に慣れって怖い…
見離しても追いかけてくるのっちが愛しくなると同時に苦しくなる。本当に自分勝手…全部、ゆかのせいなのにね。
そんな事考えていたら、ここは目的地。時計をみてみると集合時間まで余裕があるし、私はカフェへ向かうことにした
丁度、その時ポケットに入れた携帯が震え始めた
多分…あの人からだろう
2つ折りの本体を開くと
ディスプレイに映る名前は予想してた通り。
深呼吸してからすぐに通話ボタンを押す
「もしもし…」
「あーゆかちゃん?」
「はい。」
「どうよ、のっちとは?」
「相変わらずですよ…」
「ふーん、粘るな」
暫くの沈黙…電話の向こうで何か考え込んでいるようだ
「決めた!作戦変更」
「は?」
「今から駅前の××にきて」
「どうゆうことですか?」
「詳しくは来たら言うから。あ…自分の立場忘れないでよ?じゃ!」
私は唇を噛んで止まった足を動かしはじめた。
nーside.
今日はTV収録の日。珍しく楽屋に一番乗りした私は相変わらずあの疑問をループさせていた。
あの電話の相手は誰か?
やっぱり何度考えても…検討も付かない。
別にただの友達って可能性もあるんだけど…何か気になってしまうんよね。いわゆる、女の勘って奴。
あまりに検討が付かないから本人に聞いてみたりもしたけど…当然、答えてくれるはずもなく…
まぁ答えてくれるとは思ってなかったけどさ
はぁー。こんな日々いつまで続くのかな?
ため息と同時に楽屋の扉が開いた。
机に突っ伏して丸くなってた上半身は反射的に起き上がっていた。
開いた扉から現れたのは、愛しい人だった
「ゆかちゃんっ」
驚いて思わず声が裏返ってしまった。恥ずかしいっ…けど反応してくんないんだし関係ないか…そう思って視線を下に戻そうとした時
「クスクス、何で声裏返ってるんよ?おはよっ」
え?
「ちょっと、のっち!!目が飛び出そうだよ(笑)」
そこには、1ヶ月前のゆかちゃんがいた。
「ゆ…かちゃ?」
驚きのあまりにフリーズしてる私の顔の前で手を振るゆかちゃん
今の状況が理解できない。
だって、昨日まで目も合わせてくれなかった人が…今は私の目を見て私の名前を呼んでる…私が大好きなゆかちゃんに戻ってる。
「なん…で?なんでよ?」
わけがわからない、今までのは?昨日までは何だったの?そう思ったら思わず口から出た言葉だった。
「何でよ?」
そう言って顔をあげると、そこには困ったような苦しいような表情をしたゆかちゃん。
「のっち…泣かないで?」
え?何いってるの?
ゆかちゃんの手が水滴をすくってくれる。そこで、やっと自分が泣いてるのに気付いた
「うっ…うう」
触れられた指先の体温で我慢してた気持ちが溢れだす。
また離れて行っちゃう気がして、ゆかちゃんの服の袖を引っ張る…
「のっち…」
そう言った彼女の瞳に吸い寄せられるように、気付いた時はその腕の中にいた
「大丈夫だから、ねっ」
そう言って頭を撫でる左手さえ愛しくて、どれだけゆかちゃんの事好きなのか思い知る。
けど、四番目の指で光るモノは私と揃いのそれではなくて
「大丈夫だよ」
「のっち」
降り注ぐ言葉の中でも、何も言えない。ただゆかちゃんの腕の中で泣き続けているだけ。
最終更新:2009年02月12日 15:19