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昼休みにお弁当を持ってあ~ちゃん達のクラスに行くと、ゆかちゃんが一人ぽつんといた。
「あれ、あ~ちゃんは?」
「…保健室」
「えっ、どっか悪いん?」
「…う~ん」
ゆかちゃんの歯切れが悪い。
「…なんか、あったんじゃないんかね…?のっち、聞いとらん?」
「へっ?」
「…なわけないか。ゆかにも言ってくれんのじゃけ」
なんだそれ。微妙にキツいぞゆかちゃん。
「あ~ちゃんが何も言ってくれんけえ、うちの推測じゃけど…。何か言われとるみたい」
「何を?」
「他のクラスの子であ~ちゃん嫌っとんの、おるじゃろ。ほら体育祭ん時…」
「あー、いたねえ(旧スレの話じゃけどね…)」
あ~ちゃんは明るくて目立つタイプだから、友達もすぐ出来る分、敵も作りやすい。


あたしなんかは、自分の持ってないもの全部持ってるあ~ちゃんは、太陽みたいでただひたすら憧れちゃうけど。
ゆかちゃんはお弁当をつっつきながら、ぽそっと、
「あ~ちゃんは、甘えてくれんよね」
「へっ?!あの甘えっぷりは殺人級じゃあ…」
それともあのデレ甘っぷりはのっちにだけなんかな、って思わずにやけてると、ゆかちゃんは白い目で、
「ああいうのは猫のすりすりみたいなもんじゃろ。相手を喜ばすためのサービスじゃけえ」
…つまりそれは、あたしがわんこ扱いされることに喜びを感じると思われてるってこと?!…まあ、否定は出来んが。
「ゆかが言ってるのは…」
ゆかちゃんは頬杖をついて大人びた表情をした。


「人のための甘えじゃなくて、自分のための甘えってゆうか…。あ~ちゃんは自分のしんどさを分けてくれん。そういう甘え方はしてくれんけえ」
ゆかちゃんは少し寂しそうに笑った。あたしにもその寂しさは伝播して。
そんなこと考えたことなかった。あたしは犬っころみたくあ~ちゃんにまとわりついて。あ~ちゃんがくれるものはいつも気持ちよくて、キラキラしてて。あたしの世界の色が、運命的に変わった。
きっとゆかちゃんにも、あ~ちゃんとの世界があるんだろうな。二人の絆の強さには、前から気付いてたけど。
…ちょっと、落ち込む。
あたしがしょぼんとしてるのに気付いて、
「のっち、後で二人で保健室行こ?」
やっぱゆかちゃんは優しくて、大人だよね。


あたしとゆかちゃんはあ~ちゃんのカバンを届けに、保健室に向かった。
「あ~ちゃん?」
と呼びかけると、あ~ちゃんは布団からひょこっと顔をのぞかせて、
「二人とも、来てくれたんじゃね」
と、にひゃっと笑った。
いつもどおりの、一点の曇りの無い、快晴の笑顔。
お陽さまみたいなあ~ちゃんに、あたしはほっとした。
ゆかちゃんはあ~ちゃんのカバンを出して、
「現国のノート提出だって。ノート、出すよ?」
「あっ、ダメ…!」
あ~ちゃんの制止よりも早く、ノートを取り出したゆかちゃんの動きが止まった。
ノートの表紙には落書きがされてて。書かれてる言葉とあ~ちゃんとを結びつけるのが、なかなか出来なくて。
あたしが状況把握にまごついてると、ゆかちゃんの顔色が変わった。


「あ~ちゃん、何で黙っとったん!?」
ゆかちゃんのいつもフワッとして無機質な声が、低く、震えてた。
「…言うようなことじゃないけえ…」
「何でよ!?」
ゆかちゃんはノートをばんっと投げた。
「何であ~ちゃんは言ってくれんの!?何で無理するん?!何で頼ってくれんの!?うちは…っ」
ゆかちゃんは肩を震わせて声を詰まらせた。
「…うちは、あ~ちゃんのことなら、何でも受け入れるけえ…っ」
ゆかちゃんが、怒った。
ゆかちゃんは賢くて、感情のコントロールが出来て、大人で。
そのゆかちゃんが、声を震わせて、怒った。
「ゆかちゃん…」あ~ちゃんが、困ったような顔をして「ゴメン…」
「…あ~ちゃんが謝ることじゃないじゃろ…」


「ゆかちゃんを頼ってないわけじゃないけえ…」
あ~ちゃんは布団からそろそろと手を出して、ゆかちゃんの手を握った。
「…嫌わんといて」
「…何でうちがあ~ちゃんを嫌いになるんよ」
ゆかちゃんはそう言って、あ~ちゃんの額に額を寄せて、ふふって笑った。
…なんか。
すごい疎外感なんですけど…。
いきなり急展開で二人は顔を寄せ合って、ごろごろしだすんじゃもんっ。
のっちはどうせアホの子でいらん子なんだろうけど。
ベッドの端で地味にいじけてるあたしに、
「そこのさやえんどうみたいな子」あ~ちゃんは笑いながら「いじけとらんで、おいで」
…犬どころか今度は豆扱い…。
まあ、いいんだ。
犬でもさやえんどうでも、お陽さまが必要なのは変わりなくて。
太陽が太陽であれば、それでもう、充分だから。







最終更新:2008年10月10日 14:23