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  • Side K-


自分でも驚いた。
まさかこんな事口走るなんて。
幸い、のっちが言葉に詰まってる隙になかった事にする。
K『やだ〜、のっち。真に受けてるぅ。』

冗談にすり変えてみたけど本当は…。

K『もう、昔の事だよ……。』
小さく呟くしか出来なかった。
だって本当はあたしも…っ。


でも、今の貴女と昔の貴女。どっちに恋してるのかわからないまま流されたくはなくて。

N『ゆかちゃん…。』
のっちの真剣な声色と眼差しが急に怖くなった。
目を反らせないままあたしは
K『や、やだなぁ。ごめん、冗談よ、冗談。怒らないでよぉ。』
空気を変えようともがいてみた。

でものっちは何も言ってくれない。
それどころか彼女はジッとあたしを見つめている。

あぁ、あの時みたい……。

途端に心臓が激しく動き出す。
意識してしまったが最後。
あの時交わしたキスの余韻が頭を掠める。

ドクンッ!

一際大きく心臓がはね、それを察したかのようにのっちが顔を近付けてきた。

ドクッドクッ。

唇が重なる寸前で、


K『…ダメッ。』
顔を背け立ち上がるあたし。

慌ててのっちも立ち上がって困った顔をした。
多分、あたしは泣きそうな顔してる。
それを見られたくなくて、何も言わず部屋へと避難するとのっちも着いて入って来た。

K『ごめん…。帰るね。』
N『え?!』

戸惑うのっちにお構いなしに玄関のドアへと急ぐ…。


N『ゆかちゃんっ。』

名前を呼ばれ少し動きを止めたあたし。
K『……もう忘れよ?過去の事だもん。』

そう過去の事。
だけど今の想いをはっきり過去だと割り切るにはやけに胸が騒ぐ……。

この淡い想いを消したくはない。
だけど何も気付かなかった事にしてただ無邪気に恋出来るほどあたしはもう幼くないから。

背後に気配を感じた瞬間、ドアノブを掴むあたしの手はのっちの手で動きを止められた。
K『離して…。』
N『……質問に答えてくれたら。』
K『質問?』

重なり合った手と手から伝わる体温にあたしの芯が沸騰するのを感じた。
これも嘘じゃないあたしの感情。
だけど錯覚だったら…?
そう思うと動けなかった。

N『あの時泣くほどショックだった?そんなに嫌だった?』

よりによってその質問…。

K『………うん。ショック…、だった。』
声が奮えてしまうのを抑え、嘘を見破られないよう眉間にシワをよせる。
眼をギュッとつむると涙が一筋頬を伝う。

N『…嘘つき。』
その言葉と同時に強引に振り向かされてしまい、慌てて頭だけ下げて表情を隠す。
N『じゃあ…、なんで今も泣いてるの?』
優しい口調に負けてしまいそうになる。

K『な、泣いてなんか…。は、離してっ!』
ポロポロどうしようもなく涙が溢れ出す。
見られたくなくてあの時みたいに逃げ出そうとしてみても、今日は逃げ道が見つからない。
N『ヤダ。』
ドアに押し付けられ、背中のひんやりとした鉄の感触だけがやけにリアルだった。

N『今日はもう逃がさない。』
真剣で強引な口調に身を委ねてしまえたらどんなに楽だろうか…。


  • Side N-


ドアに押し付けた彼女は怯えてるようにも見えて少し戸惑いを覚えた。
でも今を逃したらもう次はない。
その焦りが私の強引さを駆り立てた。

あの時の君の涙の意味を知るチャンスは今しかない。
ずっと探してた意味。
そして今流してる涙の意味もわからないまま手放す訳にはいかないから。

K『お願い、離して…。』
彼女の拒絶を感じ心が折れてしまいそうになる。
N『やだって言ってるじゃん。今手ぇ離したらまた後悔するもん。』

ピクリと彼女の体が強張った。

K『後悔…?』
N『うん…。』
記憶の紐を解きながら言葉を紡ぎ出す私。
N『あの日…、ゆかちゃんが帰る日。本当は謝ろうと思って会いに行ったんだけど会えなくて。……それをずっと後悔してた。泣かせてしまった事、ちゃんと謝れなかった事。だからもう今は間違えたくないから。』
K『…気にしなくていいよ、もう終わった事だから。』
N『でもっ『のっち。』』
私の言葉を打ち消すゆかちゃん。
K『もう…、自由になっていいんだよ。捕われなくていいよ。……あたしにとってはいい思い出だから。だからそんなに困った顔しないで、ねっ?』
弱々しく微笑み私の顔を撫でてくれた。涙で濡れた瞳に息が詰まる。
K『ごめんね?ずっと苦しめて…。もう、終わりにしていいよ。』
今にも零れそうな涙が私の理性を外していく。

彼女の言葉には答えず、ただ引き寄せられるままあの時と同じに、唇を重ねた。


涙の味が微かに伝わって胸が苦しくなった。
その想いが彼女を強く抱きしめ逃れられないよう自由を奪う。

あの頃とは違う、少し深いキスへと形が変わる。
K『んっ…!っっ。』
腕の中でもがく彼女に愛おしささえ感じますます私の想いは高まる。

必死で逃げ出そうとして握られたゆかちゃんの手が私の肩に振り下ろされた。
それでも私の行為は止まらない。

引きはがそうと両手で私の体を突っぱねる。
やっとの思いで私の口づけから逃れたゆかちゃんは顔を真っ赤にしてた。

K『…ん…で、なん……で…。』
N『ごめん…。』
強引すぎる行為に謝っただけでキスした事を謝る気はなかった。

肩に置かれたゆかちゃんの両手にみるみる力が入っていくのがわかる。
ギュッと握りしめ下を向いてボロボロ泣いている彼女を不謹慎にも可愛いと思った。

K『過去に捕われちゃだめだよ…。のっちはっ!のっちは…、今のあたしじゃなく昔のあたしを引きずってるだけなんだよっ。』
ふと、ゆかちゃんの両手の力が緩んだ。

K『恋に恋してるだけだよ…。』
確かめるようなその口調は私を不安にさせた。

N『ゆかちゃんはそう…なの?』
K『……。』

私もゆかちゃんも何も言わないまま時間だけが過ぎていく。

恋に恋してる……?

無言の間、自分の想いをいくら確かめてみても答えは出なかった。

(続く)






最終更新:2009年02月12日 15:35