4組の教室まで行って、ドアの所で呼び出そうとして、あたしは敵の名前を知らないことに気付いた。
…しょうがない。
あたしはズカズカと教室に入り込んだ。他クラスなんてあたしはめったに行かないから、完全アウェイな雰囲気。
…いた。
あたしは性悪そうな子を見つけ出すと、ばんっと机に手をついた。
「あ~ちゃんに文句あんなら、うちに言ってきんさいや!」
我ながら結構迫力ある感じで決まった、と思ったのに。
まわりは微妙な反応で…。
「なんで、大本さん…?(ダイ●ハウスのCMみたいな反応)」
「…これが、噂のあ~のち?(じゃけえその謎の言葉は何なんよ?)」
…なんか。やっちゃったかなあ、とあたしは今さら冷たい汗をかいてたら。
バタバタバタっとけたたましい足音を立てて、髪を振り乱したあ~ちゃんが駆け込んできた。
「のっち、このバカ!駄犬!!何やっとんよ~!」
あ~ちゃんはあたしの首ねっこをひっつかんで、あたしを教室から引っ張り出した。
「もう!もう!このバカ犬!!」
校舎の外れまであたしをズンズン引きずって、あ~ちゃんはものすごい剣幕であたしを叱りつけた。
「だって、腹立ったけえ…」
「何でのっちが」
「…あ~ちゃんのことじゃけえ、腹立つよ」
あ~ちゃんはぶわっと耳まで真っ赤になって、涙目を隠すようにそっぽを向いた。
あ。なんか。…スイッチ入りそう。
「のっちみたいなへたれの番犬はいらんけえ」
「…あ~ちゃんより、のっちんが強いよ」
「はあ!?何言うとるん!?」
あ~ちゃんの負けず嫌いスイッチが入ったみたいだけど。こっちも覚醒モードだから。
「…この間だって」あたしはあ~ちゃんの肩を押さえる。「そうだったじゃろ…?」
「…っうぎゃあああああっ」
あ~ちゃんは寄声をあげて、耳をふさいでじたばた始めた。
子供みたいだけど。真っ赤になって、額には汗をかいてるあ~ちゃんから、熱をおびた甘い香りがするから。なんか、ヤバい。
「あれはっ、あの時のことは忘れたけえ…っ」
「忘れた、って」
「うちの中では無かっことにしとるけえ!きれいさっぱり消去!」
「…ふうん、じゃあ」
あたしはあ~ちゃんの頭にくしゃ、って手をまわして、
「もっかいせんと」
「…っふぎゃあ」
なんかわめいてるあ~ちゃんの唇をふさぐ。
なかなか飼い慣らされようとしないあ~ちゃんを、なだめるような、あやすようなキス。
何度リセットされても。あたしは何度でもトライする。だって。あたしの世界のスイッチを押すのは、あ~ちゃんだから。
いつか太陽があたしの手の中に陥落するまで。
追いかけっこのようなキスを終えると、あ~ちゃんはむくれた顔で、
「…ゆかちゃんに言いつけるけえ」
…殺される。
あたし達のゲームは。守護天使のカードを持ってる姫が、今のところ采配を握ってる。
最終更新:2008年10月10日 14:25