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「…いい加減放してくれん?」
「え…?わわっ!」
言われてゆかちゃんの背中に回してた腕をパッと解く。
あ〜ちゃんが走り去った後ずっと放心状態だったから、ゆかちゃんが腕の中にいたことすっかり忘れてたよ!

ゆかちゃんは大袈裟な溜め息を吐いた後、呆れたような眼差しをこちらに向けてきた。
「まさかのっちがここまでアホだったなんて…ほんっとに残念じゃわ」
「うぅ…」
全く持って返す言葉もございませんです…はい。

「ゆか、のっちとPerfumeやってく自信なくした」

そこまでっ?!
…いや、ゆかちゃんが怒るのも無理はない。


あ〜ちゃん泣きそうな顔してた。
そりゃあ〜ちゃんは涙脆いところあるけぇ、泣き顔なんてしょっちゅう見とるよ?
でもそれは嬉し泣きだったり感激した時に出てくる涙で。
辛くて泣いているあ〜ちゃんを最後に見たのはもう何年も前の話だ。
だけど先程の一瞬覗いた彼女の目は…ひどく哀しい色をしてた。
泣いてはいなかったけど、あの大きな瞳は確実に揺れていた。

改めて自分が傷付けてしまったという事実が、のっちの胸に突き刺さる。


「あ〜ちゃん絶対傷付いとるよ?」
「…うん」
「なんであんなこと言ったん?」
「や、それは、色々と考えがあったんよ…」
「こないだのっちが相談してきた時、『ゆかちゃんはのっちが言うことに合わせてくれるだけでいいから』って言いよったじゃん?だからちょっとは期待しとったんよ?」
「え…」
「あ〜ちゃん普段は強がって意地張ったりお姉さんぶるとこあるけど、きっと本当は誰かに甘えたがっとるんじゃないかな」
「うん…」


確かにそうなのかもしれない。
昔からあ〜ちゃんは周りのみんなを引っ張ってくれとったけど、自分が甘えるの苦手な子じゃったから。
じゃけぇ、のっちはあ〜ちゃんの甘える姿が見たくて、自分に甘えて欲しくて、もっと頼って欲しくて。
だっていつものっちがあ〜ちゃんに甘えてばかりだからさ。
いい加減ヘタレのっちを卒業したかったんよ。


「誰かに甘えるって難しいことだと思う。それにあ〜ちゃんが誰かに甘えてる姿想像したら複雑だしね」
言いながら苦笑するゆかちゃん。
のっちも全く同感れす。

「だけど…その相手がのっちならゆかも別にいいかなって思ってたのに…アホのっち」
「……ごめん」
「ゆかに謝ってどうするんよ」
「そだね…ごめん」
これからどうすれば良いのかな。
…とにかくあ〜ちゃんに謝らんといけんよね。
でもどうやったらあ〜ちゃんは許してくれる?


「のっち」
ふと、ゆかちゃんの手がのっちの肩をぽんぽんと軽く叩く。
ゆかちゃんの顔を見つめると、ゆかちゃんものっちを見つめ返してきた。
じっと目が合う。
なんだか照れくさいや。

「のっちは難しいこと考えるより、真っ直ぐにあ〜ちゃんのこと想っとったらええんよ」
「そ、そうなん、かな?」
「そ。計算とか何も無い直球なのっちが一番のっちらしいし、一番格好いいよ。…って、ゆか今めっちゃ恥ずかしいこと言ったわ〜」
のっちの肩に置いてた両手を離して、みるみる紅く染まっていくほっぺたを隠そうとするゆかちゃん。
もぉ、いちいち可愛いなぁ。
抱き締めたい衝動に駆られたけど、そんなんしたらまたゆかちゃんに「全然反省しとらん!」って怒られそうだから、ここは我慢、我慢。


「ゆかちゃん」
「ん?」
「ありがとね」
「いーえ、どういたしまして。…ふふっ、じゃあこんなとこで油売ってないではよあ〜ちゃんとこ行ってあげんさい」
「うん…、あっ!」

のっちは一度ゆかちゃんに背を向けて歩きかけたけど、なにかを思い出したようにまた振り返る。
そんなのっちの動きを不思議そうに見つめるゆかちゃん。

「?どしたん?」
「ゆかちゃん、大好きらよっ!一番はあ〜ちゃんだけど、でもあ〜ちゃんの次にゆかちゃん大好きじゃからね!!」
「な…っあんたはもうほんまわけわからんわ…しかも微妙に噛んどるし。はよ行きんさい!」

のっちはにへらっと笑うと今度こそ駆け出す。

「…二番なんて意味ないけぇ……あほぅ」
後ろでゆかちゃんがなにか言った気がしたけど、構わず走り続けた。

あ〜ちゃん、待ってて!!






最終更新:2009年02月12日 16:19